コーヒー1杯の暖かさ

心理学を専攻する教育大生が、教員を目指さずに、日本の教育に一石を投じます。

ワクワクする教育を作るためには?【教育系書籍レビュー③】『みらいの教育』内田良・苫野一徳著

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【10/28追記】

著者の内田良先生、苫野一徳先生、また対談の聞き手である藤川伸治さんにTwitterで引用RTしていただきました。本当にありがたい。

 

 

藤川さんには「じんべー」と呼ばれてるけどまあいいですね笑

 

 

 

 

こんにちは😊

 

日々、教育と心理学とロックンロールについて考えているじんぺーです!

 

【教育系書籍レビュー】シリーズも第3弾となりました。

 

過去の【教育系書籍レビュー】はこちらから~

 

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今回は10/23に発売されたばかりのこちらの本をご紹介しますよ~

 

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『みらいの教育 学校現場をブラックからワクワクへ変える』内田良・苫野一徳著です。

 

どちらも教育界では有名な先生方ですね~そのお2人が対談するという形を取っています。両者教育学者ではありますが、内田先生が教育社会学、苫野先生が教育哲学を専門とされているということで、学問的な個性も違っていておもしろいです。

 

ページ数的にも文字数的にも読みやすい本なのですが、内容はやはりとっても濃いので、気になったところをピックアップしていくスタイルでいきます。

 

それではいってみましょう~

 

 

本に入る前に...

YouTubeで対談されている様子が動画であがっていたので、シェアしときます~

 

こんな有益なコンテンツが無料で見られるなんて、すごい時代ですよね。

 


内田×苫野『みらいの教育』ロングバーション

「給特法」はここでもやはりホットなテーマ

 

ぼくのブログでも度々言及している「給特法*1」は教育学の最前線で研究しておられるお2人にとっても話し合うべきテーマであったようです。

 

給特法に関して詳しく解説した記事はこちらから。まあこれも内田先生の著書をレビューしただけなんですけどね笑

 

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給特法について気になったポイントを挙げてみます。

 

給特法の改廃に関わる財源の話

給特法では「残業(代)なしが規定」されています。

 

仮に教員が残業代をもらえるとすると、不払い残業代は年間で9000億円を超えるといわれています。

 

そういう状況で、「給特法をなくして、不払いの残業代を払え」と訴えてもなかなかすぐには難しいことはこの金額を見ると分かります。

 

でも、それで「では訴えない」となるのはもっと違いますよね。財源的に厳しいところは確かにあるけど、できそうなことから考えていこうよ、という感じで話されていました。

 

内田先生はこう言っています。

 

皆で声をあげ続け、 9000億円分の仕事の量を減らすべく、毎年少しずつでも、様々なリソースを各所からかき集め、業務量の一層の削減や外部化を推し進めていく。

―p.34

 

この後挙げられていた例もおもしろかったので、ご紹介します。

 

例えば僕は、2007年から実施されている全国学力テストは必要ないと考えていますが、そこには年間約60億円の財源が使われています、そうした小さな削減の積み重ねを続けていくしかありません。

―p.34

 

さらに、その全国学力テストには対策のための授業や宿題が課せられているところもあり、労働力としても負担だと書かれています。

 

業務の外部化

そして、本書では言及がありませんでしたが、ぼくが注目したいのは業務の外部化の方です。

 

ちょっと言ってしまうと、ぼくがやりたいことがこれなんですよね~しかも今までなかったような外部化。

 

外部に委託するとしてもお金かかるじゃないかという疑問にはお答えできません。ぼくもそう思います。

 

分かりやすい例でいったら、部活動をなくして、地域のスポーツ少年団とかで行うというような感じでしょうか。

 

「外部化」ぼくはよりキーワードになっていく気がします。

 

世界と比べてみたら

苫野先生は内田先生の意見に賛同した後で次のような指摘をしています。

 

他にも不要な業務や支出はまだまだあると思います。GDPに占める公教育に対する予算の割合が、日本はOECD加盟国の中で最下位クラスであることはよく知られています。

―p.35

 

 へえ、そうなんですね。知らなかった。

 

いろんな状況が違うので単純に比較もできないのですが、参考までに世界的に日本は教育にお金を使わない国なんですね。

 

その理由を苫野さんは、

 

日本では、慣習的に、教育は家庭ですべきものと考えられているのが1つの理由だといわれます。教育は私益性が高い営みだという認識に基づいているのです。

―p.35

 

 と話されています。

 

「その割に、学校にめちゃくちゃ要求してくるやん」とツッコミたくなりますね。

 

つまり、「教育は過程で行われるものだから、税金からはわざわざお金を出さない」の前半部分は変わり、後半部分だけ残ってしまったのですね。「学校の先生が教育すべき。税金からはお金出さない」が今です。

 

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「現場を知らずに教育を語るな」

また、長くなってきてしまいましたね...次のテーマに行ってみましょう。

 

お2人は教員ではなくて、教育学者であり、同じような悩みを抱えているそうです。

 

それは「現場を知らずに教育を語るな」というような批判にあうことです。

 

ぼくも最近現職の先生、退職された先生と話すことがありましたが、そんな中でも同じようなことを言われてしまいます。

 

そんな言葉への苫野先生の返しが痛快です。

 

教育の「現場」は、「学校現場」だけじゃないのだと。教育はとんでもなく広範な世界です。学校現場だけでなく、行政現場もあれば、子育て現場もある。社会教育の現場もあれば、学問現場もある。そうした様々な「現場」の知見を生かし、協働し合うことが大切なのだ。

―p.37

 

本当にそう思います。

 

また、内田先生も「お前は現場を知らない」つまり「現場こそが正しい」という真理を言ってしまえば、議論が終わってしまうということを危惧しておられます。 

 

いろんな立場の人が話し合い、力を合わせるときが来ている気がします。

 

 

コーヒーどうぞ。 

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鍵を握るのは保護者の行動?

3つ目のテーマは保護者についてです。

 

欧州では仕事は定時で退勤でき、休みも比較的取りやすいため、保護者の学校参画が盛んな学校が多いです。〈中略〉オランダの学校を視察した際にも、保護者がたくさんいて、子どもたちを見守り、中には勉強を教えている人もいました。

―p.40,41

 

保護者との理想的な付き合い方ですよね。

 

ぼくが1年間住んでいたニュージーランドでも、放課後に保護者が学校に来て、先生の掲示物を貼るのを手伝ったり、丸つけを手伝ったりということが行われているそうです。

 

また、苫野先生は、教員の仕事のことをもう少し知ってもらう必要があると考えておられます。

 

担任の先生があまりに忙しくて子どもたちを十分に見られていないということが分かれば、教師の多忙解消への理解も深まってくるのではないかと思います。そもそも、学校の先生がこれだけ忙しいとか、残業代がゼロだとか知っている保護者はまだまだ少ないですよね。むしろ、夏休みや冬休みもある、楽な仕事だと思っている人もいまだに多いです。

―p.42

 

教員も保護者も「子どものため」という思いは同じはずなので、対立することなく、協力していけたら素敵ですよね。

 

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教育をワクワクする方向へ

最後に本書のタイトルにもなっている「ワクワク」という言葉に触れて終わろうと思います。

 

苫野先生は、哲学者らしい言葉で「ワクワク」を捉えています。

 

社会や教育を変えるためには、「不安」ベースと「ワクワク」ベースの大きく2つがあると思っています。前者は「危機感」がエネルギー。後者は「エロス」がエネルギー。「エロス」とは、哲学用語で「楽しさ」「快」「ワクワク」のことです。

―p.47

 

変革の最初の時期は「危機感」も大事ですが、長続きしないため、「ワクワク」を原動力に変革を進めていこうと言われています。

 

つまり「どんな学校なら楽しいか」とか「どんな教育ならワクワクするか」をスタートにして議論してみたら、変革も息長く回っていくのではないかということです。

 

 

ぼくもつい批判的に何かを考えるときは、「これはよくない」というような論調になりそうになりますが、そうではなくてより建設的に「ワクワク」をベースに考えていきたいなあと強く思いました。

 

その方が楽しいですもんね。

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今回もここまで、長いこと読んで頂きありがとうございました。

 

 

異なった分野のスペシャリストの対談。熱いものがありました。

 

 

 

*1:「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の略称で、教員の勤務態様の特殊性をふまえて、公立学校の教員について、時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに、給料月額の4パーセントに相当する教職調整額を支給することを定めた法律。