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パーキンソン病と芸術鑑賞の変化:パーキンソン病患者と健常対照者の絵画の美的・形式的評価の比較 (Lauring et al., 2019, Brain and Cognition)

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こんにちは、じんぺーです!本日も論文を紹介していきます。

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早速いってみましょう!

 

パーキンソン病と芸術鑑賞の変化:パーキンソン病患者と健常対照者の絵画の美的・形式的評価の比較 (Lauring et al., 2019, Brain and Cognition)

結論から言うと、これまで逸話的に言われてきたパーキンソン病(PD)と芸術鑑賞(や創造性)との関係を初めて検討した研究だが、作品の好感度や美しさの評価にPDに関連した違いは見られなかった。

 

もう少し細かく見ます。

 

背景  PDは神経伝達物質ドーパミン(DA)を産生、放出、または再取り込みする脳細胞の能力に進行的に影響を与え、運動制御の喪失、認知機能の障害、言語処理、感情調節、感覚および視覚機能の低下を含む多くの症状を伴う。同時に、芸術的な出力、視覚的な創造性、あるいは視覚芸術(音楽、ダンス、小説、詩/著述などと同様に)への情熱の突然のバーストが報告されている。

 

目的 PDが芸術や美的体験の評価に与える潜在的な影響を評価する。

 

方法

参加者 21名のPD患者(女性17名、Mage = 64.61 years, SD = 7.58)とHC(Healty Control)23名

手続き 15点の絵画について形式的芸術属性(AAA)の評価→別の絵画60作品について好感度・美しさの評価→人口統計学的情報、過去のアート関連の経験を記述

 

結果① PD群、HC群で形式的・知覚的AAA、内容的・表現的AAAの得点に差は見られなかった

結果② 唯一の有意差は感情表現力(PD患者はHC患者よりも情緒的表現力が高い)

結果③ 好感度・美しさ評価にも群間差なし(両群において抽象画の評価より低い)

 

考察① ほとんどの一般的なPD研究から得られた証拠は、感情認識の低下を示唆している一方で、特に視覚的な芸術家を対象とした研究を見ると、感情性の増加を裏付ける証拠もある。

考察② 感情表現性の程度もまた、HYステージで測定されるPDの重症度に応じて、中程度ではあったが増加する傾向がある。

 

結論 これまで逸話的に言われてきたパーキンソン病(PD)と芸術鑑賞(や創造性)との関係を初めて検討した研究だが、作品の好感度や美しさの評価にPDに関連した違いは見られなかった

 

コメント PDと芸術の創造性(創作に焦点)が関係があるからといって、それが鑑賞の方にも同じ影響があるとは限らないと言いたい研究。認知症や他の精神疾患など、脳領域やホルモンとの関係について、医学的に研究が進んでいるところを心理学で研究する強みがある(今回あまり読み込めなかったけど、神経科学的に考察できる点)。

本研究では、メインのトピックではなかったぽいけど、重症度の違いや症状の進行による結果の違いもまだまだ研究の余地があるんだろうなあと思った。

 

論文

Lauring, J. O., Pelowski, M., Specker, E., Ishizu, T., Haugbøl, S., Hollunder, B., Leder, H., Stender, J., & Kupers, R. (2019). Parkinson’s disease and changes in the appreciation of art: A comparison of aesthetic and formal evaluations of paintings between PD patients and healthy controls, Brain and Cognition, 136, 103597.
https://doi.org/10.1016/j.bandc.2019.103597.