コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

道徳性判断における文化-遺伝的共進化の役割:セロトニントランスポーター遺伝子の遺伝子多型と厳しさ-緩さの相互作用の検討 (Mrazek et al., Culture and Brain, 2013)

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みなさんこんにちは。

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道徳性判断における文化-遺伝的共進化の役割:セロトニントランスポーター遺伝子の遺伝子多型と厳しさ-緩さの相互作用の検討 (Mrazek et al., Culture and Brain, 2013)

結論から言うと、21か国の文化比較は、セロトニントランスポーター(5-HTTPLR)のS型と生態学的脅威との相関を示し、かつ、それらは、文化的厳しさー緩さ(Tightness-Looseness:TL)とも相関を示し、さらに、生態学的脅威への感受性は5-HTTPLRを媒介して、文化的厳しさー緩さを予測することを明らかにした研究。

 

細かく見ます。

 

背景  道徳的に問題のある行動が許されるかどうかの判断は、社会の文化的規範や価値観によって世界的に異なるが、それを説明するための研究はほとんど行われていない。道徳的規範にTLが関係し、それは生態学的脅威と相関があることが示されているが、TLにも遺伝的な根拠があるかどうかはまだ明らかにされていない。

 

目的 生態学的脅威とTL、そしてセロトニントランスポーター遺伝子多型の関係を検討する

 

方法 

材料 1998年から2008年の間に収集された124の査読付き出版物から得られた29カ国、50,135人の5-HTTLPR長多型の遺伝子多型に関する公表データを使用。文化的TLスコアは、2000年から2003年の間に収集された33カ国6,823人の公表データから収集。→これらのデータセットが重なる21か国を分析。

尺度 複合生態学的脅威変数(人口密度、食料不足、紛争、自然災害に対する脆弱性などの指標を用いて標準化)、Morally Debatable Behaviors Scale (MDBS; Harding and Phillips 1986)など

 

結果➀ 文化的TLは国を越えて5-HTTPLRのS型と有意に正に相関(r = .65)(IND-COLを統制しても有意)

結果② 生態学的脅威の尺度とS型の頻度にも有意な正の相関(r = .56)

結果③ 21カ国にわたるTLに対する生態学的脅威の直接的効果(B = 8.51, p = 0.009)は、S対立遺伝子頻度の文化的変動を考慮に入れると有意に減少した (Sobel test Z = 1.97, p = 0.05)

結果④ TLを考慮した場合、道徳的正当性に対するS対立遺伝子頻度の効果は有意に減少した(B(19) = -0.02, p = 0.03 to B(19) = 0.001, p = 0.92; Sobel test Z = -2.54, p = 0.01)

 

コメント 5-HTTPLRと個人主義・集団主義(IND-COL)の関係が既に広く知られているために、これを統制してもTLが関係したところはおもしろかった。TLがこのように研究されていることはこれを読むまでは知らず、曖昧さへの態度(の文化差)と関連しているところでもあると思うので、これからもう少し調べてみたい。生態学的脅威とS型が関連するというのは、曖昧さというものが脅威と考えるとうまく繋げられそうな気がする。

 

論文

Mrazek, A. J., Chiao, J., Blizinsky, K. D., Lun, J., Gelfand, M. J. (2013). he role of culture–gene coevolution in morality judgment: examining the interplay between tightness– looseness and allelic variation of the serotonin transporter gene, Culture and Brain, 1, 100–117. https://doi.org/10.1007/s40167-013-0009-x