コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

東洋と西洋の伝統的な視覚芸術に対する美的嗜好:アイデンティティ問題 (Bao et al., Frontiers in Psychology, 2016)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文メモ更新していきます!7日目ですかね!

前回の論文はこちら▽

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さっそくいってみましょう!

今日は芸術系。

 

東洋と西洋の伝統的な視覚芸術に対する美的嗜好:アイデンティティ問題 (Bao et al., Flontiers in Psychology, 2016)

結論から言うと、中国人と西洋人に中国画と西洋画の両方を評価させた研究で、中国人は中国画をより好み、西洋人は西洋画をより好んだが、異なる集団の間では、人物画よりも風景画がより好まれたという結果となり、美的嗜好の文化的背景と同時に普遍性も示唆された、という研究。

 

背景 

西洋画家は目に見えるものを正確に描写しようとしたのに対し、中国画家は人間と環境、さらには宇宙との関係のためのダイナミックな構造を強調していたように、東洋と西洋の文化環境における抽象化の異なる軌跡は、独自の概念フレームを生み出してきた。そういった西洋と東洋の絵画の差異に関する研究は積み上げられつつあるが、それぞれの文化圏の人にどのように評価されるかを検討することは有用である。

 

目的

典型的な中国の伝統的な絵画と西洋の絵画で表現されている表現は、異なる文化集団の人々によって異なる評価を受けているかどうかを検討する。

 

方法

参加者:46名の大学生(中国人23名、欧米からの留学生23名)

刺激:中国の伝統的な絵画60点と西洋の古典派の絵画60点(中国絵画、西洋絵画ともに、「風景」と「情景の中の人物」という二つのカテゴリーに分類)

手続き:各絵を見た後、被験者はキーボードの8つのボタンのうち1つを押すことで、その美しさを8点満点で判断

 

結果

➀中国人グループでは、西洋絵画に比べて中国絵画の方が有意に高いスコアが観察され(5.18 vs. 4.72、p < 0.05)、西洋人では逆のパターンが観察され、西洋絵画の方が中国絵画に比べて有意に高いスコアを示した(4.78 vs. 4.36、p < 0.05)

→中国画と西洋画の参加者が、文化的に刷り込まれた背景に対応する絵画を好むことを示唆

②中国画、西洋画ともに、「シーンの中の人物画」よりも「風景」の方が得点が高い(西洋の風景画と人物画の得点の差は、中国画よりも有意に大きい)

→人類学的な普遍性を反映した美の感覚には優先的な原理が存在することを示唆

 

コメント

日本人でやったら、日本人は日本の絵画よりも西洋絵画の方を高く評価しそうだなと思った。たぶん、近代化、西洋化した国だからかな。ただ、中国画のただ写実的ではなく、周りの環境と溶け合ったり、宇宙と繋がっているような表現だったりは日本の絵画も通ずるところがありそうで、そのあたりどのように出るか気になるところでもある。芸術鑑賞の文化比較はあまりたくさんあるわけではないけど、この研究のように差異性と普遍性を同時に主張できたらいいよなあと思う。

 

論文

Bao Y., Yang T., Lin X., Fang Y., Wang Y., Pöppel E., & Lei Q. (2016). Aesthetic Preferences for Eastern and Western Traditional Visual Art: Identity Matters. Frontiers in Psychology, 7, 1596.  https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyg.2016.01596