コーヒー1杯の暖かさ

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文化を越えた美的体験:伝統的な東洋・西洋風景画を見るときの神経的相関関係 (Yang et al., Frontiers in Psychology, 2019)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

本日も論文メモしていきます。

昨日の論文メモはこちら▽

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では、さっそく本日の論文いってみます!

 

文化を越えた美的体験:伝統的な東洋・西洋風景画を見るときの神経的相関関係 (Yang et al., Frontiers in Psychology, 2019)

結論から言うと、中国人と西洋人では、それぞれの文化の元で作られた風景画により価値を見出し、それらに対して賦活する脳領域にも差がみられた。

 

背景

美的体験は高次レベルの認知プロセスと低次レベルの視覚分析の両方に依存している。

→トップダウンシステムの最も研究されている変数のいくつかは、個人の期待、予備知識、社会的文脈、および文化的背景である。

→2つの文化集団(東洋・西洋)の鑑賞者は、同じ芸術的な視覚表現に対しても明らかに異なる美的反応を示すという先行研究はあるが、その神経基盤は未検討。

 

目的

異文化間の違いに関する行動学的知見に基づいて、自分の文化と他の文化の美的嗜好に対応する明確な脳活動パターンを解明する。

 

方法

参加者:ミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)のヨーロッパ人16人(女性7人、平均年齢=24.45歳、SD=4.51歳)と中国人15人(女性8人、平均年齢=27.38歳、SD=1.78歳)(ドイツ在住4年以上の者はなし)の計31人

刺激:西洋の油彩風景画21点と中国の伝統的な風景画21点

→原画の他にスクランブル条件(原画を10∗10ピクセル単位に分割し、ランダムにシャッフルしてスクランブル化したもの)と反転条件(図1参照)

→計126枚

手続き:MRIの中で全絵画を4秒ずつ呈示(絵画を見ることに最大限集中できるようにするためにスキャナー内では行動データは取らない)。

→スキャナと同じブロック構造で提示されたオリジナルの絵画を鑑賞し、8つの視点(覚醒、感情価、嗜好、美、リラックス、親しみ、共感、物体関連の没入)で評価

 

結果と考察

1.西洋人に対して、西洋画の方が、感情価、嗜好性、美しさ、リラクゼーション、共感、没入の得点が高かった。

2.中国人に対して、東洋画の方が、リラクゼーションと親しみやすさの得点が高かった。

3.西洋人群に対して、西洋画対東洋画のfMRI比較では、脳領域のネットワークが第一次視覚野、補助運動野(SMA)、PCC、海馬、および房状回に分布

→SMAは運動機能と感覚機能を持ち(Jeannerod, 2001)、美術品を鑑賞する際に一般的に活性化される脳構造の一つとしてカウント。PCCはDMNの重要な構成要素。

4.中国人群に対して、東洋絵画に対して、西洋絵画に比べて、右楔状突起、両側踵骨皮質、左舌回、右後頭頂葉、右上頭頂葉でより大きな神経活動が観察

→舌回の活性化は「美」に対する感受性を表している。

 

→両文化群の第一次視覚野の活性化レベルが高いことは、自分の文化の絵画のボトムアップ的な視覚処理がより強いことを示す。

 

コメント

芸術鑑賞の文化差の神経メカニズムを探ろうとした研究。着想もパラダイムも丁寧であったが、行動データであまりいい結果が出なかったため、このレベルのジャーナルだったのかなと思う。画像をスクランブル化したり、スキャナ内では評価させないというのも工夫がみられてよかった(応用できそう、勉強になった!)。脳領域のさまざまなところが挙げられていたが、どの領域も詳しく(だけどくどすぎず)考察できていた気がする。一方で、実験美学の神経データはどこが出てきてもそれなりに考察できてしまうのかなあと思ったりした。だからこそ、こんな風に群分けして、効果の違いを見ていく必要があるんだろうなあと再認識した。

 

論文

Yang, T., Silveira, S., Formuli, A., et al. (2019). Aesthetic experiences across cultures: Neural correlates when viewing traditional eastern or western landscape paintings. Frontiers in Psychology, 10, 798. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00798