コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

視覚的リテラシー以上のもの:アートと曖昧性耐性・共感の向上 (Bentwich & Gilbey, BMC Medical Education, 2017)

f:id:jin428:20201023161947j:plain
みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文紹介していきます!

昨日のメモはこちら▽

www.jinpe.biz

 

さっそくいきます!

 

視覚的リテラシー以上のもの:アートと曖昧性耐性・共感の向上 (Bentwich & Gilbey, BMC Medical Education, 2017)

結論から言うと、ヴィジュアルシンキングストラテジー (VTS) と呼ばれる芸術作品のディスカッションを含む教育的アプローチによって、医学生の曖昧性耐性と共感性が向上した。

 

背景

・VTSとは、芸術作品のディスカッションを含む教育的アプローチであり、学習者が注意深く見て、自分の観察や考えを言語化し、イメージの解釈について他の人と交流することを目的とする

→共通の目標は、視覚的観察力または視覚的リテラシーの向上

・VTSのようなアート作品の授業は、学生の視覚リテラシーや視覚診断能力だけでなく、学生の自己反省能力や患者(および同僚)とのコミュニケーション能力、共感性の向上にも貢献する可能性がある

→視覚芸術の授業(VTSのようなもの)が曖昧性耐性を高め、共感性との相関関係があるかどうかについては、文献ではほとんど言及されていない

 

目的

医学生の曖昧性耐性に対する視覚芸術教育の貢献について、また、このような視覚芸術教育の貢献と共感性への貢献との相関関係についても検討

 

方法

参加者:120名の医学生(毎年60名の学生が在籍する医学生1年生の必修科目である医学人文・医療倫理コース内で2年連続で実施)

手続き:アートイメージに関する講義と対話形式のディスカッションを組み合わせた形で、2時間(90分)の介入

 

結果

1.67%の学生(n=45)が、作品についての議論は、複数の可能性のある意味を受け入れることに貢献し、それによって曖昧さの存在を暗黙のうちに認識することになると考えていた

2.52%の学生(n=35)が、この議論が視覚的観察力の向上に寄与

3.曖昧性耐性への寄与と共感への寄与の間には、統計的に有意な中等度から高等度の相関関係が認められた (r = .53- .74, p < 0.01)

 

考察

・曖昧さと共感性の関係

自分の知識や知覚を超えたものを考え、吸収できるようになることで、同じ状況には複数の意味や解釈があるかもしれないという理解も定着する

→曖昧性耐性(寛容さ)という意味では、想像力はこの寛容さを高めるための手段として理解することができる

・画像に描かれた患者や家族に共感することで、画像に描かれた状況の曖昧さをよりよく理解することができるのであれば、学生は状況に応じた曖昧さの寛容さを持っていると考えられる

→必ずしも学生の性格的特徴に依存する必要はなく、医学生のあいまいさへの耐性を高めるという文脈において、視覚芸術教育のためのこのアプローチが特別な貢献をする可能性があることを強調

 

コメント

心理系の雑誌でないため、少し新鮮な視点での曖昧性耐性の研究だった。複数項目で「曖昧性耐性」や「共感性」を測定するのではなく、「Accept multiple possible meanings」や「Feel the suffering of others」の点数でそれらを代替するのがおもしろい。心理学の実験にするなら、すごく粗くみえるが、医学生という対象の特殊性、介入のVTSの意義など、魅力の詰まったところもたくさん見えた。

大がかりな介入を用意するのではなくて、どこの医学部でも行えるような控えめなものを用意したと書いてあってそんな汎用性みたいなものも実践場面では推していく必要があるのかなと思った。たぶんもうやられていそうだけど、プレポストで質問紙取って、有意差出るかどうかはとても興味があります。探してみよっと。

 

論文

Bentwich, M.E., & Gilbey, P. (2017). More than visual literacy: art and the enhancement of tolerance for ambiguity and empathy. BMC Medical Education, 17, 200. https://doi.org/10.1186/s12909-017-1028-7