みなさんこんにちは。教育と心理学について考えているじんぺーです。
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無声朗読における韻律的期待:漢詩の韻律スキームと意味的一致から得られるERPの証拠 (Chen et al., Cognition, 2016)
結論から言うと、トップダウン的な韻律スキームの期待が、文字と音のマッピング(P200)と語彙的意味処理(N400)に関連するERPの比較的初期の構成要素に影響を与えるかどうかを調べた研究で、韻律スキームの一致はP200を調節するが、意味的一致はP200を調節しないことがERPデータから明らかになった。
背景
■言語処理において、読者や聞き手が複数のレベルで処理に影響を与える予測を生成することで、期待が重要であることを示唆する研究が増えてきている。
・入力が期待値と一致する特徴を持つ場合、処理が促進
■読解における韻律期待が音声言語の処理に比べてそれほど重要ではない
目的
■プロソディック期待が読解に用いられるかどうか、また用いられる場合はどのような場合なのかを調べる
・音韻期待値が音韻表現を利用可能にするプロセスとどのように関係しているかに興味
■仮説
1.韻律スキームによって誘導された音節期待が、語彙アクセスの結果として利用可能になる語彙後の音韻表現を用いて評価される
2.韻律期待値が、単語認識プロセスの初期段階(つまり、語彙的前段階)で利用可能な音韻情報と組み合わせて使用される
→単語が完全に認識される前に、韻韻表現が構築され、使用される
方法
参加者:学生19名(女性10名、M=24.1歳)
刺激:古典詩の4つのバージョン(対象語が韻律スキームと一致するかどうか(Rhyme+またはRhyme-)、意味的に一致するかどうか(Semantic+またはSemantic-)
手続き:各試行では、コンピュータ画面の中央に固定十字架が1000msの間現れ、すぐに文の最初のセグメントに置き換えられた。各セグメントは、2つのセグメントの間に400msの刺激間隔(ISI)をあけて600msの間提示された
→詩が自然な形で表現されているか、意味的に受け入れられるかどうかを「Z」キーまたは「M」キーで評価した
結果
■行動:Semanticsの有意な主効果 (F (1, 18) = 3.98、p < 0.05、ηp2 = 0.18)
・参加者は意味的に不一致な行に対して、一致する行よりも多くのエラーを犯している
■行動:韻律スキームと意味論の間に有意な相互作用(F (1, 18) = 23.69、p < 0.001、ηp2 = 0.57)
■ERP(P200|150~250 ms):韻律の主効果(正中線)(F (1, 18) = 22.32, p < 0.001, ηp2 = 0.55)、韻律の主効果(側頭)(F (1, 18) = 23.02, p < 0.001, ηp2 = 0.56)
→P200成分にはRhyme congruityの効果が明確に認められ、Rhyme scheme expectancyに違反した文字ほどP200成分が大きくなる
→期待が文字の音節構造の割り当てを容易にし、その結果、音韻の特徴の不確実性を減少させるというメカニズムであると考えられる
■ERP(N400|300~500ms):意味的一致の有意な主効果(中間線部位)(F(1、18)=12.7、p=0.002、ηp2=0.41)、側方線部位(F(1、18)=14.09、p=0.001、ηp2=0.44)
→意味的に不一致な詩行の文字は、意味的に一致する文字よりもネガティブな反応を誘発
■300-500msの時間範囲では、韻律一致性と意味一致性の間の相互作用は、中間電極(F(1、18)=4.67、p<0.05、ηp2=0.21)、および側方電極(F(1、18)=4.98、p<0.05、ηp2=0.22)の両方で有意
→最終文字が韻律スキームと一致している場合は、最終文字が韻律スキームと一致していない場合と比較して、より大きな意味的一致効果
コメント
韻律の期待と意味の一致度をいっぺんに検討したERP研究。手の込んだ予備調査と実験セットで、緻密なデザインを完成させた印象。こういう期待と「プレ○○(ここではプレ意味処理的なもの)」というのは相性がよくて、さらにERPでしっかり結果が出ていていい研究だなあと思った。
論文
Chen, Q., Zhang, J., Xu, X., Scheepers, C., Yang, Y., & Tanenhaus, M. K. (2016). Prosodic expectations in silent reading: ERP evidence from rhyme scheme and semantic congruence in classic Chinese poems. Cognition, 154, 11–21. http://dx.doi.org/10.1016/j.cognition.2016.05.007