コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

混乱と興味:美的体験における知識感情の役割 (Silvia, Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 2010)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます!

 

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混乱と興味:美的体験における知識感情の役割 (Silvia, Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 2010)

結論から言うと、

 

背景

■混乱は芸術に対する典型的な反応

・混乱とは何か、混乱がどのように作用するのかを知れば、アートを混乱から解放し、混乱を教育的なツールに変えることができるかもしれない

■混乱と関心は、驚きと畏敬の感情と一緒に、知識感情 knowledge emotions (自分の考えや知識についての人々の信念によって引き起こされ、これらの感情は学習に関連付けられた目標に由来) の種類に収まる

・混乱は興味深い経験であり、何が混乱を引き起こし、何が混乱を引き起こすのかを理解する価値がある

■多くの研究で、人々は物事を新しく複雑なものであると同時に、理解できるものであると評価したときに、面白いと感じることが示されている

 

目的

混乱と関心の評価空間を検討する

 

実験1

■人々は画像を見て、それぞれの画像に対して興味、混乱、評価の評価を与えた

参加者:ノースカロライナ大学グリーンズボロ校の一般心理学コースに在籍する女性48名、男性13名の計61名

手続き:14枚のモノクロ写真をそれぞれ見た後で、7点の意味的差異尺度:興味(興味がある-面白くない、退屈-刺激的)と混乱(混乱する-明確、複雑-明らか)の感情と、新規性(複雑-単純-複雑、よく知らない-よく知らない、ありふれた-普通ではない)と理解力(理解できる-理解できない、理解しやすい-理解しにくい)に回答

結果

■興味の個人内変動は、新規性-複雑性(b=0.448, SE=0.061, p= .0001)および理解度(b=0.402, SE=0.046, p=.0001)の変動と有意に関連

→面白い絵は複雑でわかりやすいと評価された

■混乱の個人内変動は、新規性-複雑性(b=0.293、SE=0.046、p =.0001)および理解度(b=-0.473、SE=0.041、p=.0001)の変動と有意に関連

→混乱する絵は複雑だが理解できないと評価された

 

実験2

■人々は、同じ作者による2つの複雑な詩を読んだ

参加者:50人(女性29人、男性21人)

刺激:Scott MacLeod (1999)の抽象詩集『The Life of Haifisch』から引用

手続き:最初の詩については、誰もが単にその詩を読み、その後混乱と興味の感情を評価した。一方、2番目の詩を読む前に、半分の人は詩を理解するための情報を得ていたのに対し、残りの半分の人は詩を読んだだけであった

結果(within-person):情報を得ていないグループの人々は、それぞれの詩に対して同様の反応を示した:2番目の詩は1番目の詩よりも同じように興味があり(b=0.291, p=.45)、混乱は少ない(b=0.875, p =.018)

対照的に、情報量の多いグループでは、2番目の詩が1番目の詩よりも有意に興味がある(b=1.182、p=.002)、混乱が有意に少なかった(b= 2.682、p=.001)

 

考察メモ

■個人内効果は、評価と感情の間の単なる相関関係以上のものであることを強調

・第1に、個人内モデルは、典型的な相関関係のあるデザインを悩ませる人と人との間の交絡を避けることができる

・第2に、個人内効果は、複数の予測因子と複数の結果を持つモデル内の係数を表しているので、予測因子間の共分散と結果間の共分散に照らし合わせて効果が推定される

■経験的な美学は、哲学的な美学のルーツと一致する、微妙な快楽の感情を強調

 

コメント

短いながらもたくさん引用されており、インパクトを残している研究。言及されているように知識感情という枠組みはあまり研究されておらず、しかし、個々人の経験や取り巻く環境との交互作用がおもしろい感情だと思う(c.f., 畏敬)。

引用を遡ったりしていないが、たぶんマルチレベルを芸術の評価に持ってきた最初の方の研究(そのあたりの考察丁寧だったので)で参考にされてきたのではないかと思う。自分自身もぼんやりとマルチレベルをしていたところだったので、しっかり言語化できるようにしておきたい(本研究のGeneral Discussion参照)。

面白く論文を書けるような参考書を書かれているだけあって、Silvia先生の論文は面白くて読みやすい。ここを目指したい。

論文 

Silvia, P. J. (2010). Confusion and interest: The role of knowledge emotions in aesthetic experience. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 4(2), 75–80. https://doi.org/10.1037/a0017081