コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

芸術の知覚における挑戦の魅力:曖昧さ,曖昧さの解決可能性,洞察の機会が鑑賞にどのように影響するか (Muth et al., Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 2015)

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みなさんこんにちは。教育と心理学について考えているじんぺーです。今日も論文を読んでいきます!

昨日の論文はこちら▽

 

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芸術の知覚における挑戦の魅力:曖昧さ,曖昧さの解決可能性,洞察の機会が鑑賞にどのように影響するか (Muth et al., Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 2015)

結論から言うと、アート作品の中の曖昧さの主観的な認識度が高いほど、参加者はそのアート作品を好んでおり、より興味深く、影響を受けていることが明らかになり、また、美的鑑賞のこれらの次元は、作品を制作する際に主観的に報告された洞察力の強さとも正の関係があった。

 

背景

■流暢性仮説:人は処理しやすい視覚刺激を好むことが繰り返し示されている

→流暢性が常に選好性を高めるという説明は、最近になって初めて挑戦された (Albrecht & Carbon, 2014)

■芸術知覚の領域では、曖昧さの程度が低いのではなく、中程度の方が好まれるかもしれないという最初の示唆 (Jakesch and Leder, 2009)

■(近代)芸術における曖昧さは、これらの重要な美的鑑賞の2つの次元(すなわち、影響と関心)に、「好き」よりも大きな影響を与えると考えるのが妥当である

→本研究では、多次元的な美的鑑賞の概念を用いている(Faerber, Leder, Gerger, & Carbon, 2010参照)

■曖昧な芸術の鑑賞に影響を与える可能性のあるメカニズムについては、以下の2つの主要な論拠がある

1. 曖昧な作品の処理は一種の問題解決であり、鑑賞は曖昧さの軽減の進展(とその結果)に影響される
2. 処理中の洞察は、曖昧さの軽減やその完全な解決への進展に関係なく報われる

→曖昧な素材を処理する際に誘発される洞察による報酬と、曖昧さの解決可能性による報酬という2つの異なるプロセスが潜在的に存在

目的

■曖昧であるために流暢に処理することができない作品の鑑賞について、さらに光を当てる

・洞察力の強さと曖昧さの解決可能性が美的鑑賞に及ぼす影響を比較(ここでいう「洞察」とは、曖昧な美術品を知覚する際の知覚的洞察(例えば、創発的なゲシュタルト)、認知的洞察(例えば、様式的側面や象徴的解釈)、反射的洞察(例えば、自分自身の知覚メカニズムへの洞察)を指すかもしれない)

 

方法

参加者:39名(女性21名、男性18名、年齢層[年]18~41歳、M=25.0、SD=5.9)

刺激:20世紀と21世紀の曖昧な芸術作品17点の写真

尺度: Reis (1996) のInventory for Measuring tolerance of Ambiguity (IMA) (解決できないように見える問題、社会的葛藤、親のイメージ、役割の固定観念に対する曖昧さ耐性の4つの下位尺度)

手続き:実験の第1段階では、(1)好き、(2)興味、(3)感情の強さ、(4)知覚的感情、(5)認知的感情を評価。第2段階では、曖昧さの評価、曖昧さの解決可能性の評価、洞察力の評価とそれらの自由記述レポートを行った。

 

結果

■すべての従属変数について、曖昧さの有意な正の効果(刺激平均を中心とした)が明らかになった

→参加者が刺激の曖昧さを高く評価するほど、好感度、関心度、影響度、知覚的影響度、認知的影響度の点で刺激をより高く評価

・洞察力の強さについても同様

■IMA-PRが高い場合には、好感度と認知的影響において曖昧さがより高く評価された

・曖昧さと対応する従属変数との間に正の関係を示すが、IMA-PRスコアが低い人の方がこの一般的な傾向を崩す傾向がある

■曖昧さの多面性に対応するために多次元的なアプローチを用いることがいかに重要であるかを示した

・最も重要なことは、曖昧さの側面、曖昧さの解決可能性、洞察力の強さを区別する必要がある

■作品の美的評価を説明するためには、作品が提起する「問題」を解決した状態ではなく、曖昧な作品を精緻化し、洞察を得るプロセスが不可欠であることを主張

 

コメント

去年も読んだはずの論文だけど、去年より理解が深まっていて、少しは成長を実感できたような…?「興味」という変数は自分の研究では取っていないけど、これからの研究では取っていいかと思った。「曖昧性」と「美しさ」だけを結びつけるのは結構難しくて、その中に「解決可能性」や「洞察」も考慮しないといけないので、まだまだやれるべきことはあるなあと思った。俳句でいうと「イメージが鮮明に思い浮かぶ」というのが1つの「解決」なような気もしてきた。

 

論文

Muth, C., Hesslinger, V. M., & Carbon, C.-C. (2015). The appeal of
challenge in the perception of art: How ambiguity, solvability of ambiguity, and the opportunity for insight affect appreciation. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 9, 206–216. http://dx.doi.org/10.1037/a0038814