コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

新興成人の経済的幸福度と主観的・心理的幸福度との関係:個人差によるモデレーティング効果の検証 (Iannello et al., Journal of Happiness Studies, 2020)

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みなさんこんにちは。教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

昨日の論文はこちら▽

 

 

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新興成人の経済的幸福度と主観的・心理的幸福度との関係:個人差によるモデレーティング効果の検証 (Iannello et al., Journal of Happiness Studies, 2020)

結論から言うと、主観的な経済的幸福度(特にその時間的次元)は、主観的幸福度と心理的幸福度の両方に関連していることが明らかになり、さらに、主観的な経済的幸福度と主観的な幸福度(すなわち、人生の満足度やポジティブな感情とネガティブな感情)との関係は、曖昧さや不確実性に対する耐性に差があるにもかかわらず、すべての新興成人において不変であることを明らかにした一方で、曖昧さや不確実性に対処することが困難な新興成人と、柔軟でオープンな思考を持つ新興成人では、主観的な金銭的幸福度と心理的幸福度の関係が異なっている。

 

背景

■ 新興成人の経済的幸福度に関する研究は、主に若者の経済的幸福度を予測する可能性のある要因を特定することに焦点を当ててきた(Sorgenteら2016;Lanzら2019)

・これまでのところ、新興成人の経済的幸福の結果についてはあまり注目されていない

■ 個人所得は主観的/心理学的幸福感にほとんど影響を与えないと結論づけられている

・対照的に、最近の研究では逆の結果(客観的な経済的幸福度は、主観的/心理学的幸福度と関連があるということである(Frijters et al. 2004)) が出ている

→この関係を完全に理解し説明するためには、その関係を緩和する可能性のある様々な変数を考慮に入れなければならない

目的

本研究では、ウェルビーイングを3つの次元(経済的ウェルビーイング、主観的ウェルビーイング、心理的ウェルビーイング)で解釈し、様々なパターンの不確実性と曖昧さへの耐性を特徴とする新成人の主観的な経済的幸福感が、主観的・心理的幸福感とどの程度関連しているかを検討する

 

方法

参加者:イタリア人(67.3%)とポルトガル人(32.7%)の 442 名の新成人

尺度:

・25項目の多次元主観的財務的幸福度尺度(MSFWBS; Sorgente and Lanz 2019):主観的な財務的幸福度の5つの異なる次元(認知的、行動的、物質的、関係的、時間的)を5つのサブスケールで測定

・9項目の主観的幸福度尺度 from Comprehensive Inventory of Thriving (Su et al. 2014):生活満足度、肯定的な感情、否定的な感情の3尺度

・8項目の心理的幸福度尺度 by Flourishing Scale (Diener et al. 2010)

・12項目の不確実性尺度(Intolerance of Uncertainty Scale; IUS; Carleton et al. 2007):Prospective Anxiety、Inhibitory Anxietyの2下位尺度

・21項目のMultidimensional Attitude towards Ambiguity Scale(MAAS; Lauriola et al. 2016):曖昧さに対する不快感、道徳的絶対性、複雑性・新規性希求の3下位尺度

 

結果

■ 参加者の主観的/心理学的幸福度とより関連性が高いと思われる金融幸福度の要因は、参加者の金銭的将来の認識

・参加者のお金の管理に対する認識や、仲間との金銭的な比較の仕方は、主観的/心理的な幸福感とは関連していないことが示された

■ 曖昧さと不確実性の許容度に関連する個人差が、主観的な経済的幸福と心理的幸福との関係を緩和することがわかった

・その代わり、主観的な経済的幸福度の次元と主観的な幸福度の次元の関係は、4つのグループにまたがってすべて不変

 

コメント

実際の内容以上に紙面が割かれている気がする論文。(レビューがしっかりしているという意味で、ネガティブな意味ではない)曖昧さへの態度がポジティブだと、自分がお金がないという主観的な評価があったとしても、そんなにネガティブにならない(主観的な幸福感が下がらない)のはなんとなく自分を見ていると想像できるところである。(本研究では思ったような結果が出ていないところもあるみたいだけど。)Lauriolaさんらが作った曖昧さへの態度尺度の使い方がとても参考になった論文。イタリアとポルトガルの人の記述統計量と日本人のそれを比べてみてもおもしろいかもしれないと思った。

 

論文

Iannello, P., Sorgente, A., Lanz, M. et al. Financial Well-Being and Its Relationship with Subjective and Psychological Well-Being Among Emerging Adults: Testing the Moderating Effect of Individual Differences. J Happiness Stud (2020). https://doi.org/10.1007/s10902-020-00277-x