コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

キリスト教の宗教コンセプトの活性化が曖昧さへの不寛容と判断の確実性を上昇 (Sagioglou & Forstmann, Journal of Experimental Social Psychology, 2013)

こんにちは。教育と心理学について考えているじんぺーです。

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キリスト教の宗教コンセプトの活性化が曖昧さへの不寛容と判断の確実性を上昇 (Sagioglou & Forstmann, Journal of Experimental Social Psychology, 2013)

結論から言うと、キリスト教概念を意味的に活性化することで、自己申告による曖昧性不寛容が増加すること、曖昧でない視覚刺激を好むこと等を示した。

 

背景

■宗教のプライミングは、寛大さ(Shariff & Norenzayan, 2007)、援助行動(Pichon & Saroglou, 2009)、利他主義(Saroglou, Pichon, Trompette, Verschueren, & Dernelle, 2005)、正直さ(Randolph-Seng & Nielsen, 2007)を促進することが示されている

■特定の条件下では、宗教は、対象者が不法移民である場合、助けようとする意欲の低下(Pichon & Saroglou, 2009)、アフリカ系アメリカ人に対する偏見の増大(Johnson, Rowatt, & LaBouff, 2010)、報復の増大(Saroglou, Corneille and Van Cappellen, 2009)といった形で、社会性に有害な影響を与える

■宗教に関する実験的研究の多くは、高次の認知(例:ステレオタイプな思考)や行動(例:投票)への影響に焦点を当てているが、基本的な認知プロセスへの影響はあまり調べられていない

 

目的

宗教と曖昧さの不寛容との関係に焦点を当てて、宗教のプライミングの経験的・仮説的帰結について考察する

 

研究1:宗教のプライミングと曖昧さの不耐性

方法:Mturkから募集した英語話者64人(女性38人、年齢=33.83歳、SD=13.36歳)

手続き:宗教プライミング条件では、5つのセットに宗教関連語(信仰、教会、天国、祈り、神)が含まれており、宗教の概念を意味的に活性化させることを目的とし、残りの5セット、および対照条件の10セットは、中立であり、特定の概念を呼び起こすことはなかった

→MacDonald (1970)の20項目の曖昧さ許容度改訂尺度(AT-20)に回答

結果:宗教プライミング条件の参加者(M = 4.55、SD = 0.65)は、中立プライミング条件の参加者(M = 4.15、SD = 0.70)と比較して、有意に高いレベルの曖昧さ不寛容を報告した (t(62) = 2.326、p = 0.023、d = 0.58)

 

研究2:宗教のプライミングと美的判断

仮説:宗教のプライミングによって喚起された曖昧さ不寛容は、同様に曖昧な作品に対する嫌悪感を高めるが、曖昧でない作品に対する判断には影響を与えない

参加者:MTurkから参加者49名(女性37名、年齢=29.29、SD=7.83)

デザイン:2(プライミング条件:宗教対中立)×2(絵の種類:曖昧対非曖昧)混合因子デザインに割り当てられ、前者は参加者間で操作され、後者は参加者内

手続き:プライミングの手順は研究1と同じ。次に、女性の顔の白黒鉛筆画を2枚提示した。

結果:ANOVAで予測された交互作用、F(1,47) = 3.90、p = 0.054、ηp2 = 0.08が明らかになった

→宗教をプライミングした参加者は(M = 3.88、SD = 1.66)、コントロール条件の参加者(M = 4.83、SD = 1.34)に比べて、曖昧な絵を好む傾向が有意に低かった (t(47) = - 2.17、p = 0.035、d = - 0.62) のに対し、曖昧でない絵の評価は実験条件間で差がなかった(p > 0.72)ことが明らかになった

・宗教的コンテンツの認知的アクセス性が、その後の審美的判断を確かに誘導する

 

研究3a:宗教のプライミングと判断の確実性

参加者:46人のドイツ語話者の学生(31人の女性;年齢=24.11、SD=2.26)

手続き:プライミングの手順は、研究1、2と同様。その後、感情的に曖昧な表情の画像を提示した(6つの普遍的な感情のうちの1つを表現した2枚の写真、つまり、2つの感情を50:50の割合で写真、を補間したもの)

→表示されている感情を、2つの感情の中から強制的に選択

→次に、自分の判断の正しさについて、、どの程度確信を持っているかを示した

結果:宗教のプライミング条件の参加者は(M = 5.13、SD = 0.51)、中立的なプライミング条件の参加者(M = 4.75; SD = 0.67)よりも、自分の判断について有意に確信を持っていた(t(43) = 2.139、p = 0.038、d = 0.64)

→判断の確実性の増大は、人々が世界を構造化し、恐怖の経験を減らし、それによって個人と集団の幸福に貢献する可能性もある

 

研究3b:宗教のプライミングと判断の確実性

背景:これまでの研究で報告されている効果は、単に社会的な構成要素、特に集団の所属に関連した構成要素の活性化によって引き起こされたものではないことを除外する必要がある

参加者:MTurkから募集した59人の英語話者(34人の女性;MAge=28.83、SD=9.14)

手続き:手順は研究3aと同様であるが、対照群はスポーツに関する5つの文章を解いた

結果:宗教のプライミング条件(M = 5.46、SD = 0.70)の参加者は、スポーツのプライミング条件(M = 5.06、SD = 0.80)の参加者に比べて、自分の判断について有意に確信を感じていた(t(57) = 2.08、p = 0.042、d = 0.54)

 

研究4:フィールド調査

参加者:ドイツ語話者81名(女性34名、MAge = 34.09、SD = 13.39)

手続き:大聖堂広場と市民の建物のみの広場のいずれかで声をかけられ、この2つの場所を状況的文脈のプライミング条件とした(宗教的なものと中立的なもの)

→11項目の曖昧さ不寛容の質問票を用いた

→大聖堂のサンプルが市民広場のサンプルよりも宗教的でないことを保証するために、2つの項目からなる宗教性の指標をとった

結果:宗教性の項目を分析したところ、どちらの場所でも宗教性に差は見られなかった

・大聖堂でアプローチした参加者は(M = 4.29、SD = 0.79)、市民広場でアプローチした参加者(M = 3.89、SD = 0.77)に比べて、実際に大聖堂でアプローチした参加者が有意に多くの曖昧さ不寛容を報告したことが明らかになった(t(79) = 2.310、p = 0.023、d = 0.51)。

 

コメント

めちゃくちゃクオリティ高くて、おもしろい論文。

1つひとつ丁寧に来るべき反論にこたえているのが、印象的(特に3bの研究)。キリスト教のプライムは2項対立的な認知を活性化させるということだけど、仏教や日本の新興宗教はそういう教義にはなっていなさそうで、日本で同じようなことをしても違う結果になりそう。曖昧さへの不寛容の適応的な側面(判断の確実性の増大)が知れたという意味でもとても意義のある研究だった。

 

論文

Sagioglou, C., & Forstmann, M. (2013). Activating Christian religious concepts increases intolerance of ambiguity and judgment certainty. Journal of Experimental Social Psychology, 49, 933-939.