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英語俳句の朗読:「切れの効果」の眼球運動研究 (Geyer et al., Journal of Eye Movement Research, 2020)

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みなさんこんばんは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。今日も論文を読んでいきます。

昨日の論文はこちら▽

 

 

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英語俳句の朗読:「切れの効果」の眼球運動研究 (Geyer et al., Journal of Eye Movement Research, 2020)

結論から言うと、「カットあり」と「カットなし」の俳句では、カットの位置(1行目の後と2行目の後)、カットマーカーの有無、2つのイメージ間の意味的な概念的距離(文脈作用俳句と並置俳句)によって、詩全体の固定観念の分布が変化することが明らかになった

 

背景

■私たちの先行研究では、読解中の眼球運動の分析から、このような俳句の中で(多かれ少なかれ)時制の関係に置かれた2つのイメージが、グローバルな意味構築のプロセスの中でどのように整列しているのか、興味深い示唆や仮説が得られた

・しかし、読解のために提示されたELHの様々な種類や構造的特性が完全にバランスが取れていなかったことや、2つのイメージの俳句の読解を比較するための対照条件が研究デザインに含まれていなかったことから、確固たる結論は限定的だった

■規範的なELHは、実証的研究のための2つの要求を満たす

・内容(意味)が大きく異なるが、それらは構成的によく拘束され、構造が非常に類似している;したがって、それらは刺激の特徴の体系的な変化と反復測定を可能にすることによって、(神経)認知詩学の実験的研究のための理想的な実験材料を構成

・高頻度の語彙と「平易な文体」(Brooks, 2011)の使用を特徴とする日常的で飾り気のない言語を使用して、最小限の言語的手段で豊かな精神機能のセットに従事しており、したがって、意味構築のプロセスを研究するための強力な文学的形態を提供

■構造的には、一行目の終わり(一行目が断片 fragment を構成し、二行目と三行目が句 phaseを構成する:L.1カット俳句)か、二行目の終わり(つまり、一行目と二行目が句を構成し、三行目が句を構成する:L.2カット俳句)のどちらかにカットを入れることができる

■概念的には、断片と句のイメージの間の並置の強さ(意味的な距離)は、俳句の種類によって異なる

文脈作用俳句では、「一方のイメージは......俳句の瞬間が経験される設定を確立し、もう一方のイメージは、詩人の想像力に気付いた活動を示唆している」: 読者にとっては、2つのイメージの間のギャップを埋めることは、より簡単

・対照的に、並置俳句では、「文脈や行動によって明らかに関連していない二つのイメージが対になっている」(Kacian, 2006) :二つの部分の間に明確で認識可能な区切りやギャップがある

■切れは、最初は驚くような経験と矛盾の感情をもたらし、それが内省と再評価のプロセスを活性化させて、ギャップを埋め、俳句の意味を閉じていく

・並置されたイメージがどのように組み合わされているかを実感することを「俳句の瞬間 "haiku moment"」と呼び、「aha」のような体験、美的な評価、報酬の感情を伴うことがある

・俳句は、このような美的軌跡を呼び起こすことで、読者に詩の意味を(再)構築し、俳句の瞬間を体験することへの参加を促す

■先行研究の限界

・明示的なカットマーカーの有無はコントロールされていない変数であったため、明示的なマーカーがない俳句でもカット効果が生じるのかどうか、また、我々の効果パターンがどの程度、内容ベースではなく、より形式的な読み物の特性に起因しているのか

・読解用に提示されたサンプルの詩は、完全にバランスが取れているわけではなかった(例えば、L.2カットの文脈作用俳句は比較的少数しか含まれていなかったが、これは文献では全体的に珍しい)

・カットされた2イメージの俳句の読みを比較するための対照条件が欠けていた

 

方法

参加者:ミュンヘンの学生(様々な学問分野の学生)24名が参加→21名,全員英語を母国語としている

デザイン:2(詩の種類:文脈作用対並置)×2(切り口の配置:L.1vs.L.2切り口の俳句)×2(切り口のマーク:有無)=8の実験条件

材料:64句の俳句(半分は文脈作用俳句,もう半分は並置俳句)+12の1イメージ俳句(読解中に8句、記憶テスト中に4句)

手続き:

 

・実験は3つの異なる段階から構成

(i)練習

(ii)読解:注視点の後、3行ELHが現れる。読み終わったことを表すキー押しか12秒後に評価項目7項目(理解、驚き、aha、感情価(sad-joy)、不快感、美的魅力、好感)が現れ、4件法で評価。

(iii)記憶テスト:すでに読んだ俳句(72句)と見たことのない新しい俳句(36句の「箔」、参加者には既読俳句と箔の比率は知らされていない)が提示され、読んだ俳句を特定し(イエス/ノーの認識反応)、その判断に対する自信を示す。この段階でも、眼球追跡を継続。

 

結果

1.1単語あたりの総固定的な滞留時間はカット前の行(1行目)で最も長く、カット効果(断片行と遠隔句行の間の単語あたりの滞留時間の差)は258ミリ秒(断片行1と句行3:1008ミリ秒 vs. 750ミリ秒)である。

2.一方、L.2カット俳句では、カット後の行(3行目)の滞留時間が最も長く、カット効果は249msec(3行目対1行目:1015msec対766msec)となってている。

3.文脈作用俳句(断片対句行:972対783ミリ秒、カット効果189ミリ秒)に比べて、並置俳句(断片対句行:1050ミリ秒対733ミリ秒、カット効果317ミリ秒)ではカット効果が強い

4.「理解」と「洞察」の2つの尺度(いずれもBF10 > 7.8)について、カット位置と俳句の種類が主な影響を与えていることが明らかになった

5.「達成された理解」と「突発的な洞察」は、1イメージ俳句の方が高いことが明らかになった(理解、3.39 vs. 2.94、BF10 = 4.7+e5; 洞察力: 2.28 vs. 2.07, BF10 = 1.89)同様のパターンは、「好き」(2.73 vs. 2.51、BF10 = 3.01)および「感情的覚醒」(2.37 vs. 2.20、BF10 = 1.98)についても認められた。

 

コメント

こんなに俳句を分析して、その特徴を生かそうとした研究ははじめて。

自分のこれまでの研究では構造にあまり注目していなかったので、俳句じゃなくてもよければいいといえばそうだったけど、この研究は「切れ」をピックアップしていて面白かった。2*2*2の3要因は解釈大変で、その分論文も長くなっているようだけど、要点整理しながら、ゼミのメンバーにも伝えていけたらと思う。

 

論文

Geyer, T., Günther, F., Müller, H. J., Kacian, J., Liesefeld, H. R., & Pierides, S. (2020). Reading English-language haiku: An eye-movement study of the ‘cut effect’. Journal of Eye Movement Research, 13(2). https://doi.org/10.16910/jemr.13.2.2