コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

子どもにはつくることはできない:素人観察者でも抽象美術の意図と構造を見分けることができる (Snapper et al., Cognition, 2015)

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みなさんこんにちは。

教育と心理学について考えているじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。昨日の論文はこちら▽

 

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子どもにはできない:素人観察者でも抽象美術の意図と構造を見分けることができる (Snapper et al., Cognition, 2015)

結論から言うと、アーティストの作品を表面的に似ている子どもや動物の作品と並べて呈示し評価した結果、抽象表現主義を知らない人でも、確率を大幅に上回る正解率でアーティストの作品を認識することができ、この識別は、知覚された意図と知覚された構造に基づいて行われていることが示された。

 

背景

■ゴンブリッヒ(1950)は、表象芸術を人間の成果を示すものとして重視し、抽象芸術を技術よりもむしろ芸術家の個性を示すものとして軽視していた(1950, p.380)

・すべての芸術作品と同様に、抽象絵画は芸術家による意図的な選択の連続を表しており、発明を含み、非表象的な意味(例えば、エネルギー、空間、深さ、反復、静けさ、不和など)を表現している

■芸術について特別な知識を持たない人々が、非表象芸術における意図性(それによって技術や表現された意味)を見抜くことができるのだろうか

・意図性の認識は、私たちが美的芸術作品と非美的芸術作品の両方をどのように分類するかにとって重要であることが示されている(Bloom, 1996, 1998)

■意図性は、芸術に対する私たちの反応において非常に重要な役割を果たしているかもしれない

・一部の美学者によると、ある物体が芸術作品として意図されているならば、私たちがそれを良いものだと思うかどうかに関わらず、それは芸術作品である

・意図性は、私たちがどのように分類するかだけでなく、私たちが芸術作品をどのように評価するかの中心となることも示されている(Newman & Bloom, 2012)

 

研究1

参加者:Mturkで募集した19歳から76歳までの103名(M = 34歳、男性49名、女性54名)

材料:Hawley-Dolan and Winner (2011)に掲載されている 30 枚のペア画像

教示:「絵画の30組には、1つは有名な抽象画家の絵、もう1つは子供や動物(ゾウ、チンパンジー、ゴリラ、サル)の絵があります。それぞれのペアについて、有名な画家の絵を選んでください。」

結果:平均正解スコアは19.24(3.753)であった

→正解スコアと偶然のパフォーマンスを比較した1標本のt検定(15とした)では、パフォーマンスが偶然のパフォーマンスを有意に上回っている

・抽象美術への精通度と学歴レベル(年齢、性別とともに)を正答率に回帰させた結果、有意な要因は認められなかった

 

研究2

参加者:Mturkで募集した101名の参加者(19~69歳、M=37歳、男性42名、女性58名)

手続き:60枚の画像を一度に1枚ずつ見る

→「それぞれの絵は、有名な抽象芸術家、または子供や動物(ゾウ、チンパンジー、ゴリラ、サル)によって描かれたものです。それぞれの絵について、アーティストが描いたものだと思うか、子供や動物が描いたものだと思うかを選んでください」

 結果:参加者は絵画が個別に提示された場合でも、マスターの手を見分けることができた (t(99) = 16.891, p < 0.001, d = 1.689)

・d-primeの唯一の有意な予測因子は抽象表現主義への精通度 (t = 2.459, p = 0.016, Beta = 2.39, CI = .348-.037)

 

 

研究3

参加者:参加者173名(男性80名、女性93名、年齢は19歳~62歳)

手続き:参加者は作品がプロ・子どもや動物によってつくられていることは知らなかった

→6つの評価尺度(意図性・構造・負の空間・比喩的な意味・コミュニケーション・インスピレーション)

結果:

■評価尺度を被験者間因子(意図性、構造、負の空間、比喩的意味、コミュニケーション、インスピレーション)とし、作者(アーティスト、子供/動物)を被験者内因子とした反復測定ANOVA

・評価尺度の主効果は、F(5, 167)=16.557、p < 0.001、ηp2 = 0.331、プロデューサーの主効果は、F(1, 167)=52.299、p < 0.001、ηp2 = 0.238

・評価尺度は生産者と相互作用し、F(5, 167) = 8.379、p < .001、ηp2 = 0.238

・意図性と構造の評価尺度において、プロのアーティストのほうが得点が高かった

■「易しい」アーティストの絵画(子供や動物の作品と区別しやすいもの)と「難しい」子供や動物の作品(アーティストの作品と区別しにくいもの)の方が、意図性と構造の両方において対照的なものよりも高い評価を受ける

・人は非表象芸術を見るとき、自分が見ていると思っている以上のものを見ている

 

コメント

プロのアーティストと子ども・動物の絵を評価させる面白い研究。

作者を聞いていないにしても、アーティストの絵画により意図性と構造を見出しているのがおどろき。美的な評価はされていないようで、この辺りが今自分たちが行っている研究の新発見ポイントになりそう。

研究1、2で並べ方の工夫をして結果を再現している辺りも好印象。ただ、ロスコさんとか有名な抽象画も混ざっているような気もした。

 

論文

Snapper, L., Oranc, C., Hawley-Dolan, A., Nissel, J. & Winner, E. (2015) Your kid could not
have done that: even untutored observers can discern intentionality and structure in
abstract expressionist art. Cognition, 137, 154-165.