コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

中国・米国間のキャリア決定の曖昧さ耐性の変動と高校・大学間の変動(Xu et al., Journal of Vocational Behavior, 2016)

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みなさんこんにちは。

微かに混じり合う教育と心理学とアートと。

じんぺーです!今日も論文を読んでいきます。

 

 

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中国・米国間のキャリア決定の曖昧さ耐性の変動と高校・大学間の変動(Xu et al., Journal of Vocational Behavior, 2016

結論から言うと、CDAT(キャリア決定の曖昧さ耐性)の3因子構造(すなわち、嗜好性、寛容性、嫌悪感)の中で、米国の大学生は中国の大学生に比べて嗜好性のレベルが高く、中国の高校生と比較して、中国の大学生は嫌悪感のレベルが高かった。

 

背景

■キャリアの意思決定プロセスは曖昧さに満ちており、この曖昧さを処理する能力がキャリアの意思決定の結果の面で重要であるという新たな命題が出てきている

・キャリア意思決定領域に特有の曖昧さ耐性がキャリア意思決定に関して重要な構成要素であることを提案し、実証している

・しかし、この構成要素の類似性とバリエーションについては、文化や発達段階を超えて確立されていない

・曖昧さの許容度がキャリアの意思決定の自己効力感と正のリンクを持ち、キャリアの優柔不断を否定的に予測することを実証した

■初期の Career Decision Ambiguity Tolerance Scale (CDAT) は、Budner (1962) の三部モデル (すなわち、新規性、複雑性、矛盾に対する許容度) に基づいて開発

・追加の因子 (すなわち、予測不可能性に対する許容度) は Germeijs と De Boeck (2003) と Dequech (2000) の研究から導き出された

■探索的・確認的分析を行った結果、米国の大学生は主に、選好、寛容、嫌悪の3要素構造に基づいて、キャリア決定の曖昧さに対する寛容さを知覚している

・選好性はキャリア決定の曖昧さに対する肯定的な評価と、変化や新しいことへの興奮を強調

・寛容は曖昧さに対処する自信と曖昧さを許容する能力を強調

・嫌悪は、キャリアの意思決定において曖昧さに対する否定的な回避を強調

■国際的な背景、特に集団主義的な文脈において、この構成要素の測定と役割については不明なままである(Triandis, 1989)

・Zhou et al. (2012)は、中国人学生が西洋的な価値観(個人の自己実現など)に加えて、中国の伝統的な価値観(親への恩返しや家族の幸福を維持するための方法としてのキャリアなど)を支持していることを発見

・Hofstede (2001)は、中国は曖昧さ回避の次元で米国よりも低いスコア(30)を支持していることを発見

・人々は予測不可能な未来に対してオープンであるべきであり、寛容であるべきであるという影響力のある道教の教えと一致していた(Bai, 2005)

 

目的

中国と米国、および高校生と大学生の間で、キャリア決定の曖昧性耐性の測定の不変性を検討する

 

方法

参加者:中国人サンプルは 695 人の高校生と大学生で構成されている:高校生(n = 339)大学生(n = 356)

米国のサンプルは、Xu and Tracey(2015b)の研究で使用された南西部の州立大学から募集された328人の学部生

尺度:

・キャリア決定の曖昧さ耐性尺度(CDAT):選好(6項目)、寛容(6項目)、嫌悪(6項目)の3つのサブスケール

・キャリア探索調査(CES): 6 項目の環境探索 (EE) サブスケールと 5 項目の自己探索 (SE) サブスケール

・ 情緒的・人格的キャリア困難尺度(EPCD):悲観的な見解、不安、および自己概念およびアイデンティティから成っている3つのoverarching domainを含む

 

結果

・米国のデータから導き出された3因子構造は、中国の高校生や大学生のCDAT構造をよく表しているとは言えなかった

・米国の大学生は中国の大学生と比較して、キャリアの意思決定において新しい情報に興奮を覚える傾向があることが示唆された

・高校生と比較して、大学生はキャリアの意思決定における曖昧さを、より威圧的で不安を誘発すると感じる傾向があることが示唆された

・選好は自己探求と中等度に関連し(標準化係数=0.24と0.29)、悲観的な見方や自己概念・アイデンティティと弱く関連していることがわかりました(標準化係数=-.12~-.19)

・嫌悪感は悲観的な見方、不安、自己概念およびアイデンティティ(標準化係数=0.30~0.42)と中等度に関連していたが、キャリア探索とは関連していなかった

・寛容性の最初と最後の3つの項目が寛容性の2つの異なる側面を表しているのではないかと、項目を精査して推測した:最初の3つの項目は予測不可能な未来への開放性と受容性を強調し、最後の3つの項目は複雑さと矛盾を扱うことへの自信を強調しているように見えた

 

コメント

キャリア選択という狭い領域の話ではあるが、アメリカサンプルの方が中国サンプルよりも曖昧さへの選好があったのは大事なデータ。Hofstedeさんの時は中国の方が合間債への回避度が低くて、それはそれで興味深いなあと思った。やはり、嫌悪と選好はきれいに対照的になるわけではないということが改めて分かった。

 

論文

Xu, H., Hou, Z.-J., Tracey, T. J., & Zhang, X. (2016). Variations of Career Decision Ambiguity Tolerance between china and the United States and between high school and college. Journal of Vocational Behavior, 93, 120–128. doi:10.1016/j.jvb.2016.01.007