コーヒー1杯の暖かさ

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人間の意思決定における不確実性の程度に対応する神経システム (Hsu et al., Science, 2005)

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みなさんこんにちは。

微かに混じり合う教育と心理学とアートの中にいるじんぺーです。今日も論文を読んでいきます!昨日の論文はこちら▽

 

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人間の意思決定における不確実性の程度に対応する神経システム (Hsu et al., Science, 2005)

結論からいうと、脳機能イメージングを用いて、選択の曖昧さのレベルが扁桃体と前頭前野の活性化と正の相関を示し、線条体の活性化と負の相関を示すことを示した

 

背景

■2つのタイプの不確実な事象

・ルーレット・ホイールでのギャンブルのようないくつかの選択では、確率は相対的な頻度、出来事の履歴、または受け入れられている理論から自信を持って判断できる

・テロ攻撃の可能性のように、重要な情報が明らかに欠落している場合には、確率はわずかな証拠や矛盾する証拠に基づく

・曖昧さに対する経験的な嫌悪感が、リスクと曖昧さの間の神経的区別の探索を動機づけている

→ここでは、リスク下での意思決定の神経基盤の研究を、曖昧性を含むように拡張する

■報酬と不確実性に関する神経科学のこれまでの知見に基づく

・報酬予測に関与している線条体(10)

・アイオワギャンブル課題などの不確実性を伴う行動課題で病変患者の成績が悪い眼窩前頭前野皮質(OFC)(11)

・曖昧な顔の合図に反応する扁桃体(12-14)

に焦点

 

方法

■3つの実験条件

・カードデッキ条件:純粋なリスク(確率が確実に分かっている)と純粋な曖昧さを比較するベースライン

・知識条件:リスクから曖昧さまでのスペクトルに沿って、事象や事実に関する選択を行う

・Informed Opponent(情報を得た相手)条件:対象者は、デックからカードのサンプルを見た別の人に賭ける

・3つの条件はすべて、他の条件(リスク)に比べて、被験者が情報を欠落している状態(曖昧さ)を1つ持っている

■手続き

・被験者は、それぞれの条件において、一定の金額とカードデッキやイベントへのベットの間で48の選択を行った

■追加実験

脳の局所病変を持つ12名の神経学的被験者を、我々のfMRI研究で明らかになったOFCの中で最も有意な活性化焦点を病変に含む群(n=5)と、我々のfMRI研究で明らかになった病変のいずれとも重ならない比較群(側頭葉損傷患者)(n=7)に分けた

 

結果

・曖昧な状態では、リスク状態と比較して活性化が高かった領域は、大脳皮質と扁桃体、背側前頭前皮質(DMPFC)であった

→これらの領域は、感情と認知入力の統合(OFC)、感情情報への反応(扁桃体)、扁桃体活動の変調(DMPFC)に関与

・曖昧さに対するリスク状態で活性化される領域には、背側線条体(馬尾核)がある

→報酬予測に背側線条体が関与している他の研究と合わせて、曖昧さが意思決定の報酬期待値を低下させるという仮説を支持

・扁桃体とOFCが試験開始時に急速に反応するのに対し、背側線条体の活動は扁桃体とOFCの活動よりもゆっくりと、ピークは有意に遅い

→刺激に対してより迅速に反応し、不確実性を評価する扁桃体とOFCにおける「警戒」/評価システムと、さらに下流の線条体における報酬予測システムの違いによる

・OFCに病変を持つグループは、不確実性の程度(曖昧さとリスク)を区別していなかった

→扁桃体とOFCは、両方とも高速で多モーダルな感覚入力を受けることが知られており、両方とも双方向に接続されており、刺激の価値を評価する際に一緒に機能することが知られている

 

コメント

Scienceに載っている論文、いつもとフォーマットが違っていて読みにくかった。

曖昧性(情報が少なく、確率もない)とリスク(起こる確率はわかる)の状況における意思決定の違いに焦点を当てたMRI研究。曖昧な時は偏桃体、OFC、リスクの時は報酬関連の線条体というけっこう納得のいく研究。脳に損傷がある被験者の方の協力で追加実験をしているのもインパクト大。

 

論文

Hsu, M., Bhatt, M., Adolphs, R., Tranel, D., & Camerer, C.F. (2005). Neural systems responding to degrees of uncertainty in human decision-making. Science, 310, 1680–1683. https://doi.org/10.1126/science.1115327