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東対西:東アジア文化における宗教の心理学 (Clobert, Current Opinion in Psychology, 2021)

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みなさんこんにちは。

微かに混じり合う教育と心理学とアートについて発信していますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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Current Opinion in Psychology というレビュー雑誌で宗教特集が組まれていて、おもしろい論文ばかりだったというおすすめを先輩に受けたので、少しずつ読んでいきたいと思います。レビューなので、ポイントまとめていく程度です!

 

東対西:東アジア文化における宗教の心理学 (Clobert, Current Opinion in Psychology, 2021)

ポイント

■過去数十年の間に、宗教が個人の認知、態度、行動に与える影響について研究者の関心が高まってきている

・私たちが知っていることのほとんどは、西欧のキリスト教文化の中で練り上げられた理論や研究に由来

・ある学者は、宗教は文化に関係なく同様に個人に影響を与えるべきだと理論化しているが、他の学者は、宗教の違いは異文化の違いを反映していると主張

・宗教性の構成要素と測定、健康、人格、認知と感情、道徳と価値観、グループ間の態度と行動の6つのテーマ

 

■宗教性の構成要素と測定

・東アジアの宗教的景観は、西洋のキリスト教とは著しく異なっている

・人々が宗教について話したがらず、無信仰者であることを宣言している中国でも、多くの人々が宗教的な活動を信じ、それに従事している

・一つの宗教を選択するように求められた場合、台湾人はしばしば困難を経験し、複数の宗派を選択したがる

・東アジアの文脈での研究では、西洋の測定ツールや資料を用いていることが多い

・宗教性の多次元尺度を異文化間で検証する試みが行われた (Saroglou, et al. 2020)

▶宗教性の4つの主要な次元(すなわち、社会的、認知的、道徳的、感情的)は、欧米の文脈と東アジアの文脈(すなわち、台湾)では明確に識別可能であるが、東アジアではこれらの次元はあまり相互に関連していない

▶台湾では、世俗的なヨーロッパと同様に、宗教の認知的・感情的側面が好まれているが、宗教的なカトリックの国(ポーランド、イタリアなど)や米国では、道徳的側面も同様に重要

・東アジアの宗教が個人的なコントロールや道徳的な秩序の源としてあまり利用されていないという考えを反映

 

■健康と幸福,性格および個人差

・西欧のキリスト教の文脈で文書化された健康における宗教性の保護的役割が、異文化間で有効であることを示唆

・東アジアの文化や宗教集団における最近の研究では、宗教性と協調性との関連は文化的には妥当であるが、良心性との正の関係はあまり顕著ではない

・仏教、道教、中国の民間信仰の伝統を持つ東アジアの社会では、経験への開放性が個人の宗教性とわずかに正の関係

・東アジアの信者(韓国など)では宗教性が科学への信頼と正の関連を示しているのに対し、欧米(オーストリアやデンマークなど)のキリスト教徒では逆の関連がある

・西欧のキリスト教の文脈における宗教性は、権威主義や認知的完結欲求などの閉鎖的な態度の個人差と正の関係にあるが、西欧と東アジアの文脈における東洋の宗教性は正の関係にはない

 

■認知と感情

・東アジアの宗教性(対キリスト教)と宗教的概念は、矛盾に対する寛容度が高いことと関連

・仏教徒(対キリスト教信者)の宗教性は、他者の精神状態を推測する優れた能力と利己的バイアスの減少と関連している

・さまざまな感情の頻度と望ましさを調査し、キリスト教徒は仏教徒よりも頻繁に愛を経験し、経験したいと思っていることを明らかにしたが、仏教徒はキリスト教徒に比べてあらゆる感情のピークやディップが少ない

・西欧のキリスト教徒は高起伏のある肯定的な状態、つまり興奮をより重視しているのに対し、東アジアの仏教徒は低起伏のある肯定的な状態、つまり穏やかな状態を好む傾向

 

■道徳と価値観

・宗教性が制限的な性道徳(例:カジュアルセックス、同性愛、中絶の不支持)と協調的な道徳(例:嘘、不正行為、危害の不支持)と国を超えて関連しているのに対し、東アジア諸国ではこの関連性は弱いか、あるいは無である

・宗教性は世界中で出生率と正の相関があるが[43]、東アジア(日本など)では仏教徒であることが出生率の低下と関連

・宗教や国を超えて、宗教性はさらに、誠実さ、忠誠心、環境や持続可能な行動への関心、および職場での自己実現を反映した内在的な仕事の価値観と関連

 

■グループ間の態度と行動

・宗教的概念や宗教性は、援助や寛大さなどの社会的態度や行動を促進することが確立されている

・東アジア人(中国人など)における宗教性や精神性は、思いやりのある愛、助け合い、寛大さなどの社会的特性、態度、行動と実際に関連

・キリスト教系の欧米人や仏教・道教系の東アジア人を含む様々な集団において、向社会的な概念や向社会的な態度・行動へのアクセス性が向上する一方、日本人やモンゴル人の間では、宗教的なプライミングが向社会性に及ぼす影響を見い出せなかった

・西洋の文脈における宗教もまた偏見と関連している一方、最近の研究では、東アジアの宗教性は様々な宗教的・民族的集団に対する偏見(例えば、IAT)の低さと関連していることが示されている

 

コメント

西洋と東洋の宗教観を比較したレビュー論文。最初に読むにはうってつけの整理された読みやすい論文だった。西洋では宗教性が権威主義や認知的完結欲求と関連しているのに対して、東洋ではそれがないのが一番おもしろかった。キリスト教と仏教の違い顕著に表しているなあと。

 

論文

Clobert, M. (2021). East versus West: psychology of religion in East Asian cultures,
Current Opinion in Psychology, 40, 61-66. https://doi.org/10.1016/j.copsyc.2020.08.021.