コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

セロトニントランスポーター遺伝子多型領域(5-HTTLPR)は中国の大規模サンプルにおける曖昧さとリスクの下での意思決定に影響を与える (He et al., Neuropharmacology, 2010)

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みなさんこんにちは。

微かに混じり合う教育と心理学とアートについて考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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セロトニントランスポーター遺伝子多型領域(5-HTTLPR)は中国の大規模サンプルにおける曖昧さとリスクの下での意思決定に影響を与える (He et al., Neuropharmacology, 2010)

結論から言うと、知的能力と記憶能力をコントロールした後、5-HTTLPRは、曖昧さの下での意思決定と損失回避の両方に影響を与え、この効果は性別によって調節されることが示された

 

背景

■経済的意思決定には、結果の確率に関する不確実性の程度によって区別される

・曖昧性の下での意思決定(意思決定者は可能な結果の正確な確率分布に関する知識を欠いている)とリスクの下での意思決定(結果の確率が既知のものである)の2つの主要なタイプ

■不確実性の下での意思決定の仕方には個人差が大きく、このような個人差には遺伝的な基盤があるかもしれない

・双子の研究では、リスクを取る行動の分散の約20%が遺伝的影響であると推定されています (Cesarini et al., 2009)

■セロトニンは、経済的意思決定を行う際に機能的に重要であることが示されている脳領域(例えば、前頭前野、Bechara and Damasio, 2005を参照)のニューロンのシナプス活動を調節する

・脳幹に存在するセロトニン神経細胞体は、前頭前野(眼窩、前頭側、背側)、扁桃体、線条体、島皮質など、意思決定に関連する多くの脳領域に軸索を投射する

・5-HTTLPRの多型は、扁桃体、前頭前野前庭皮質、島皮質における活性化と関連

■先行研究5件の結果はまちまち

・5つのうちの3つは、S対立遺伝子の方がL対立遺伝子よりもIGTの総合スコアが悪いことを示した

・他の2つの研究では遺伝子型の有意な主効果は示されなかったが、1つの研究ではlキャリア(s/sキャリアではない)がIGTの初期から後期にかけて有意なパフォーマンスの改善を示した

・S対立遺伝子はBARTにおいてポンプの数が少ない(すなわち、曖昧さの下でのリスクの取り方が少ない)ことが示されている

 

方法

■参加者:北京師範大学(中国・北京)から大学生(漢民族、年齢17歳から27歳、平均年齢20.47歳、SD=1.01)の計572名(女性312名)を募集

・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、569人の被験者(女性310人、54.48%)を遺伝子型決定

■課題

・アイオワ・ギャンブル・タスク(IGT):曖昧さとリスクの下での意思決定を評価するように設計

・損失回避タスク(LAT):被験者は256回の試行を受け、それぞれが50/50の確率で実際のお金を獲得するか失うかのギャンブル

・2つの知能検査[Raven's Advanced Progressive Matrices(RAPM)およびWechsler Adult Intelligence Scale-Revised Chinese Version(WAIS-RC)]と3つの記憶検査[Wechsler Memory Scale-Recognition(WMS-Recognition)、Wechsler Memory Scale-Recall(WMS-Recall)およびWorking Memory Test(WMT)]

 

結果

■569人の被験者のうち、52人がl対立遺伝子ホモ接合体(l/l)、219人がヘテロ接合体(l/s)、298人がs対立遺伝子ホモ接合体(s/s)

■IGT

・被験者はタスクが進むにつれて平均的に有利なカードを選択

・曖昧さの下での意思決定について、5-HTTLPR多型と性別を独立変数として用いた二元配置のANCOVA:

5-HTTLPR多型(s/s、s/l、l/l)が最初の40回の試験でIGTスコアに有意な効果があることが示された(F(2,489)=3.703、p < 0.05)。しかし、性別(F(1, 489)=0.026、p>0.05)または5-HTTLPR相互作用による性別(F(2, 489)=1.518、p>0.05)の効果は認められなかった。

・lキャリアは、s対立遺伝子ホモ接合体よりも有意に高いIGTスコアを有していた

▶この効果は、男性被験者では有意であったが(F(1, 210)=6.960、p < 0.01)、女性被験者では非有意

■リスク下での意思決定

・性別の有意な効果(F(1, 491)= 6.516、p < 0.01)、5-HTTLPR多型の効果なし(F(1, 491)= .817、p > 0.05)、または性別×5-HTTLPR相互作用なし(F(1, 491)= .578、p > 0.05)

■損失回避タスク

・λに有意な5-HTTLPR多型効果を示した(F(1、485)= 5.384、p < 0.05)

・s対立遺伝子ホモ接合体は、lキャリア(図3B)よりも高いλ値を示している

・性別(F(1、485)= 1.534、p > 0.05)または5-HTTLPR相互作用(F(1、485)= 1.488、p > 0.05)による性別の効果はなし

 

コメント

簡潔で無駄のないイントロ、レビューとそれに対する課題がはっきりしていて、読みやすい。5-HTTPLR多型が曖昧な状況下での意思決定には影響を与えるが、リスク下(確率わかっている)では影響を与えないというのは覚えていてもいいかも。俳句、芸術鑑賞は意思決定?

 

論文

He, Q., Xue, G., Chen, C., Lu, Z., Dong, Q., Lei, X., Ding, N., Li, J., Li, H., Chen, C., Li, J., Moyzis, R. K., & Bechara, A. (2010). Serotonin transporter gene-linked polymorphic region (5-HTTLPR) influences decision making under ambiguity and risk in a large Chinese sample. Neuropharmacology, 59(6), 518–526. https://doi.org/10.1016/j.neuropharm.2010.07.008