コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

5-HTTLPR多型と懲罰下の衝動性:遺伝子と文化の相互作用(Kashima et al., Culture and Brain, 2021)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートについて考えていますじんぺーと申します。

今日も論文を読んでいきます。

 

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今日はボスがかかわっている論文です。 

 

5-HTTLPR多型と懲罰下の衝動性:遺伝子と文化の相互作用(Kashima et al., Culture and Brain, 2021)

結論から言うと、文化的に敏感なs/salleleキャリアは、日本のs/salleleキャリアに比べて、罰-ノゴ条件でのコミッション・エラーが多いが、報酬-ノゴ条件でのエラーは少なかった。

 

背景

■心理的結果に対する遺伝的影響は固定的なものではなく、環境に依存していることが多いという認識が高まってきている

・遺伝子×環境相互作用(G×E):特定の遺伝子バリアントは、特定の環境条件下で行動表現型の差動発現を引き起こしたり、そして心理的結果に対する環境入力の影響は、遺伝子バリアントに応じて異なる発現を示したりする

■5-HTTPLR

・5-HTTLPRは、心理的ウェルビーイングおよび感情調節に対するストレス因子の影響を調節する

・5-HTTLPR s-alleleがリスクと関連しているという仮説は、セロトニン(5-HT)トランスポーターが、特に回避的な動機付けシステムにおいて重要な役割を果たしているという以前の提案と一致

・s-alleleのコピーを2つ持っている人は、l-alleleのコピーを1つまたは2つ持っている人と比較して、対象者の顔から笑顔が消えることに敏感であることを報告している(日本の場合、このような手がかりが個人の相互依存の維持に非常に重要であるが、相互依存がそれほど重要ではない北米ではそうではない)

■DRD4

・2-リピートおよび7-リピート(それぞれ2Rおよび7R)対立遺伝子によってコードされるドーパミン受容体D4遺伝子(DRD4 VNTR)多型の高発現変異体は、低発現の4-リピート(4R)対立遺伝子と比較して、文化的規範へのより強い適合性と関連している

■5-HTTLPRと行動衝動性

・5-HTTLPR遺伝子型は運動衝動性の個人差と関連していると考えられてきたが、その正確なメカニズムは不明

・1つまたは2つのコピーを持つsアレルのキャリアは、1つまたは2つのコピーを持つlアレルのキャリアよりも衝動的であることが明らかになったが、他の研究ではこれらの関連性を見いだすことができなかった

・5-HTTLPR多型は、運動調節タスクに関与する回避刺激に対する感受性の違いの結果として、抑制性の結果に間接的な影響を与える可能性がある

・Sアレルのキャリアは、衝動的な行動に対して罰を受けると、より慎重になり(増井ら2009; Rodrigues-Fornellsら2002)、結果的に反応を抑制するようになると考えられる

・5-HTTLPRの運動衝動性への影響は、回避的フィードバックが与えられる状況に特有

 

方法

■参加者:98名(女性66名、男性32名)参加者全員が東アジア出身で、オーストラリアで育った

■Go-Nogo課題

 

結果

■5-HTTPLR

・98人の参加者のうち、54人がs-allele(s/s遺伝子型)のコピーを2つ持っており、33人がs-alleleとl-allele(s/l遺伝子型)のコピーをそれぞれ1つ持っており、11人がl-allele(l/l遺伝子型)のコピーを2つ持っていた

■2(遺伝子型:s/l対s/s)×2(go)×2(nogo)の混合計画共分散分析(ANCOVA)でコミッションエラー率(CER)を分析

・s/s-アレル群のCER平均値(RP条件とPP条件を合わせた場合)は、Nomuraらの研究(M = 17.00、SD = 12.6、n = 34)よりも本研究(M = 24.2、SD = 13.6、n = 53)の方が有意に高かった(Mdif = 7.2、t85 = 2.48、p = 0.02、d = 0.54)

・報奨nogo条件では、CER平均値(RR条件とPR条件を合わせた場合)は、本研究(M = 23.4、SD = 13.0、n = 53)が日本研究(M = 31.0、SD = 13.5、n = 34)に比べて有意に低い(Mdif = -7.65、t85 = -2.65、p = 0.01、d = 0.57)

・s/l-alleleキャリアのCERスコア:罰-nogo条件では、本研究(M = 26.5, SD = 14.0, n = 32)と日本の研究(M = 25.6, SD = 14.2, n = 26)では、CERスコアに有意な差はない

・報酬-ノゴ条件でも同様に、スコアは同程度(M=22.9、SD=14.0、n=32 vs. M=28.6、SD=156.4、n=26)

 

コメント

Nomura et al. (2015)のパラダイムをオーストラリアで育った(環境の影響を受けている)東アジア人を対象に行った研究。文化の緩さや昇進志向がきれいに結果に現れていて、Sキャリアの文化に敏感なところがより一層明らかにされたように思う。

 

論文

Kashima, E.S., Guggolz, L., Bowden-Dodd, J., Nomura, M. (2021). 5-HTTLPR polymorphism and impulsivity under punishment: a gene × culture interaction. Culture and Brain. https://doi.org/10.1007/s40167-020-00098-y