コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

文化、セロトニン受容体多型と注意の所在(Kim et al., Social Cognitive and Affective Neuroscience, 2010)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートについて考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

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文化、セロトニン受容体多型と注意の所在(Kim et al., Social Cognitive and Affective Neuroscience, 2010)

結論から言うと、韓国人はヨーロッパ系アメリカ人よりもフィールドに注意を向けていると報告し、この文化的差異は5-HTR1Aによって緩和された

 

背景

■認知情報の処理

・ある人は、焦点となる問題や対象物に注意を向けやすく、他の人は、場や文脈に注意を払う傾向が強い

・全体論的思考と分析的思考というこれらの認知的差異は、文化によって育まれる

・全体論的思考は東洋の文化的コンテクストでより多く見られ、分析的思考は西洋の文化的コンテクストでより多く見られる

・認知的柔軟性が高まると、文化的な思考様式への固執が減る

▶なぜなら、少なくとも成人の場合、文化的に支配的な思考様式の学習がいったん行われると、認知的に柔軟性のない人は、特定の状況や課題の性質に応じて、認知様式を切り替える可能性が低くなる

・5-HTR1AのGアリルをホモ接合している人の間で、認知スタイルの文化的差異が最も大きくなる可能性

■セロトニン(5-HT)システム

・注意力、認知的柔軟性、長期記憶など、さまざまな認知的効果に関与していることは、多くの研究で明らかにされている

・ATDの研究によると、5-HTが枯渇した状態では、人は無関係な情報を無視して関連する刺激に注意を向ける能力が高まり(Schmittら、2000年、Ahveninenら、2002年)、また、長時間にわたって特定の刺激に認知活動を誘導し、集中する能力が高まることが示されている(Ramaekersら、1995年)

・一方で、5-HTの枯渇は、特定の強化システムの学習が行われた後、強化の変化に自分の行動を適応させる能力など、認知の柔軟性を損なう傾向がある

■5-HTR1A

・5-HT放出の自己抑制因子

・C(-1019)G多型のGアリルは、推定上の抑制タンパク質の結合を妨げる

▶遺伝子発現が亢進し、セロトニン神経伝達が低下し(Lemondeら、2003年、Huangら、2004年)、神経症やうつ病との関連が指摘

 

方法

■参加者:韓国人149名(女性74名、男性75名、地域住民57名、大学生92名、平均年齢=24.91歳)と、ヨーロッパ系アメリカ人140名(女性85名、男性54名、不詳1名、地域住民51名、大学生89名、平均年齢=26.97歳)

■尺度:分析-ホリズム尺度(Choi et al. 2007):因果関係(例:「世界のすべては因果関係で絡み合っている」)、矛盾への態度(例:「極端になることは避けるべきだ」)、変化の認識(例:「現在の状況はいつでも変化する可能性がある」)、注意の所在(例:「細部よりも文脈全体に注意を払うことがより重要である」)の4つの下位要素

■遺伝子多型

・韓国人(7 C/C、52 C/G、90 G/G)

・アメリカ人(34 C/C、65 C/G、41 G/G)

 

結果

■AHSを従属変数とした5HTR1A(C/C, C/G vs G/G)×文化(韓国人 vs ヨーロッパ系アメリカ人)のANOVA

・注意の所在に関するANOVAでは、文化の有意な主効果、F(1, 280) = 33.74, P < 0.001が見られ、韓国人(M = 5.49, s.d. = 0.70)の方が、ヨーロッパ系アメリカ人(M = 4.59, s.d. = 0.97)よりも文脈に注意を払う

・5-HTR1Aの主効果は見られず,F(2, 280) = 1.56, P = 0.21、文化と5-HTR1Aの間には、予測された相互作用があり、F(2, 280) = 5.55, P = 0.004であった

・文化的差異は、G/Gグループでは効果量が非常に大きく(韓国人ではM=5.55、s.d.=0.67、ヨーロッパ系アメリカ人ではM=4.23、s.d.=0.98、P<0.001、d=1.57)、C/Cグループでは効果量が中程度で最も小さかった(韓国人ではM=5.10、s.d.=0.46、ヨーロッパ系アメリカ人ではM=4.76、s.d.=0.99、P=0.33、d=0.44)

 

コメント

Analytic Holism Scaleの得点(特に注意の所在)と5-HTR1Aの多型との関連を調べた研究。ほかの遺伝子多型と似たような挙動を示すが、ATDや動物実験(注意系の)のエビデンスもあるのが強みかと思った。まだ読めていないので、何とも言えないし、ATDの話とかになるとすぐにお手上げになってしまうけど…

 

論文

Kim, H. S., Sherman, D. K., Taylor, S. E., Sasaki, J. Y., Chu, T. Q., Ryu, C., . . . Xu, J. (2010). Culture, serotonin receptor polymorphism and locus of attention. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 5, 212–218. 

https://doi.org/10.1093/scan/nsp040