コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

分析的思考と全体的思考の個人差について(Choi et al., Personality and Social Psychology Bulletin, 2007)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 最近芸術系の論文少なくてすみません…

 

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分析的思考と全体的思考の個人差について(Choi et al., Personality and Social Psychology Bulletin, 2007)

結論から言うと、分析的思考と全体論的思考の傾向を測定するために、分析-全体論尺度(AHS)を作成し、2文化サンプルや認知課題を用いてその妥当性を検証した。

 

背景

■分析的・全体論的思考

・東アジア人は世界のすべての要素が何らかの形でつながっているという全体論的な考え方を持っているのに対し、欧米人は宇宙を独立した物体で構成されていると考える傾向があることは、広く認められている

・帰属、カテゴリー化、記憶、論理的推論を用いて、東アジア人と西洋人を比較

・分析的思考と全体的思考の理論モデルを提示(Nisbett et al., 2001)

■4つの構成要素

注意:東アジア人の全体論的思考では、対象物とその対象物が属する場との関係性に注意が向けられる傾向がある一方、欧米人の分析的なスタイルでは、対象物が属する分野よりも対象物そのものに注意を向ける傾向。東アジア人は欧米人に比べてフィールド依存度が高くなる。同じ論理で、東アジア人は欧米人よりも背景のフィールドにあるオブジェクト間の関係を検出するのが得意 (Ji et al., 2000)

因果関係:東アジア人は複雑な因果関係の存在を前提とし、行為者の内部的な気質を主に考慮する西洋人に比べて、行為者とその周囲の状況との関係や相互作用に焦点を当てる。東アジア人は、最終的な帰属を決定する前に、欧米人よりも多くの情報を考慮し(Choi, Dalal, Kim-Prieto, & Park, 2003)、基本的な帰属の誤りを犯す可能性も欧米人よりも低い。

変化の認識:東アジアの人々は、要素は相互に関連していると考えているため、現象を非固定的にとらえ、要素間の複雑な相互作用のパターンのために常に変化している状態が存在すると期待する傾向。

矛盾:東アジア人は、2つの矛盾したものが存在する場合、妥協した中間点を追求する傾向。

 

研究1

■方法

・分析的・ホリスティック思考の本質的な構成要素として、注意の所在(部分と全体)、因果理論(性質と相互作用)、変化の認識(直線的と周期的)、矛盾に対する態度(形式論理と素朴な弁証法)の4つの領域で計40項目を作成

・参加者:303名の学生

■結果

・固有値とスクリープロットの初期検査では,4因子モデルが示唆

・4因子モデルは(適合度指数(GFI)=0.88),3因子モデル(GFI=0.83)や2因子モデル(GFI=0.76)よりも,データによく適合

 

研究2

■研究2の目的は、AHSの収束的・弁別的妥当性を、他の尺度との関係を調べることによって検証すること

■尺度

・帰属的複雑性尺度(ACS; Fletcher, Danilvics, Fernandez, Peterson, & Reeder, 1986):因果関係の複雑さを測定

・Sternberg-Wagner Self-Assessment Inventory on the Global Style (SWSAI; Sternberg & Wagner, 1991):全体と部分の相対的な強調を測定

・Rahim Organizational Conflict Inventory-II (ROCI-II; Rahim, 1983):対立に対する態度を測定

・Individualism-Collectivism Scale (INDCOL; Triandis, 1996)

・SCS (Singelis, 1994)

▶独立性と相互依存性は、それぞれ分析的推論と全体的推論を促進するという事実を考慮し、AHSとこれらの尺度がある程度の相関を持つことが予想。一方、AHSが文化の認識論的側面の測定を目的としているのに対し、2つの基準尺度は価値観や自己解釈といった文化の存在論的側面を測定することを目的としているため、相関性は弱いと予想

■参加者:ソウル大学の心理学入門生328名

■結果

・AHSと、思考スタイルを測定するとされる3つの尺度、ACS(r = .22, p < .01)、SWSAI(r = .34, p < .01)、ROCI-II(r = .28, p < .01)との間には、有意な正の相関

・価値観や自己解釈の文化的差異を測定する2つの尺度:INDCOL(r = 0.09, ns)およびSCS(r = 0.09, ns)との相関は非有意

 

研究3

■参加者:ソウル大学の韓国人学生104名とミシガン大学のアメリカ人学生87名

■結果

・韓国人学生(α=0.72)の方がアメリカ人学生(α=0.58)よりも有意に高かった(韓国人M=5.16、アメリカ人M=4.82)(F (1, 189) =26.70、p<0.01)

・このようなパターンは、AHSの4つの下位領域それぞれに当てはまった

・アメリカサンプルでも4因子モデルは、2、3因子モデル、と比較して、データによく適合した

 

研究4

■Koo and Choi (2005)は、韓国の東洋医学の学生は、以下で詳しく説明する韓国の他の専攻の学生よりもホリスティックであることを実証

・東洋医学は、東アジアのホリスティックな世界観を最も忠実に表していると一般的に考えられている(Kaptchuk, 2000; Nisbett, 2003)

・東洋医学は、全体への注意と様々な要素間の関係性、陰陽原理の採用、変化への周期的な期待など、ホリスティックな思考の重要な要素を基盤

■参加者:ソウル大学の心理学入門クラスの学生129名と、慶熙大学の東洋医学の学生201名

■結果

・東洋医学の学生(M = 5.23, α = 0.80)は、心理学入門クラスから募集した他の専攻の学生(M = 5.03, α = 0.78)に比べて、AHSで有意に高いスコア

 

研究5

■研究者たちは、韓国人の多くが家族類似性戦略を用いたのに対し、アメリカ人の多くがルールベース戦略を用いたことを発見

■参加者:ソウル大学の心理学入門コースの学生92名(男性57名、女性35名)

■結果

・家族類似性判断の平均数は、ホリスティック参加者(AHSの中央値以上)では5.89で、4.5(期待値)とは統計的に異なっていたが、アナリティック参加者では4.81にとどまり、4.5とは変わらなかった

 

研究6

■因果推論の認知課題

・全体論的な人は、分析的な人よりも多くの情報を検討する

■参加者:ソウル大学の心理学入門クラスの学生119名(男性58名、女性61名)

■結果

・主な従属変数は、各参加者が「無関係」と判断した項目の数:

・AHSは除外項目の数を予測し(β = -.21, t = 2.28, p < 0.05)、ホリスティックであればあるほど、無関係と判断される情報項目が少なくなる

・97項目のうち、ホリスティックな参加者は約39項目(M = 39.18)を除外したのに対し、分析的な参加者は約45項目(M = 44.67)を除外した

・INDCOLには予測力がなかったことである(β = 0.10, t = 1.09, p > 0.25)

 

コメント

(探索的・確証的)因子分析、妥当性の検証、文化比較、認知実験、と盤石にScaleのクオリティが固められている。1つ1つの実験もとても参考になった。独立性が分析的推論を促進するメカニズム(説明)が知りたいので、もう少し古めの論文読まないといけないかも…

 

論文

Choi, I., Koo, M., & An, J. (2007). Individual Differences in Analytic Versus Holistic Thinking. Personality and Social Psychology Bulletin, 33(5), 691–705. https://doi.org/10.1177/0146167206298568