コーヒー1杯の暖かさ

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心地よい感情と不快な感情の関係に及ぼす文化的影響:アジアの弁証法哲学か、個人主義・集団主義か? (Schimmack et al., Cognition and Emotion, 2002)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

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心地よい感情と不快な感情の関係に及ぼす文化的影響:アジアの弁証法哲学か、個人主義・集団主義か? (Schimmack et al., Cognition and Emotion, 2002)

結論から言うと、アジア、非アジアの集団主義文化圏、西洋文化圏において、快感情の頻度推定値(FPE)と不快感情の頻度推定値(FUE)の相関関係を調べた結果、予測通り、アジア文化圏では他の文化圏に比べてFPEとFUEの相関が低くなった

 

背景

■主観的幸福感の研究における一つの疑問は、楽しい感情と不快な感情の頻度の関係

・心地よい感情を頻繁に経験することは、不快な感情を頻繁に経験することと反比例しているか?

・あるいは、快い感情の頻出と不快な感情の頻出は、それぞれ独立した幸福の指標なのか?

■文化の影響

・文化も快・不快の感情の関係に影響を与えていることを示唆されている

・西洋文化では、快・不快の感情は「対立的なカテゴリーとして認識されている」

・アジアの弁証法的な哲学は、相反するものを矛盾と考えないため、弁証法的な哲学を持つ人々は、楽しい感情と不快な感情に対して、相反する評価をしなければならないとは感じない

・アジア人サンプルでは、欧米人サンプルに比べて、快・不快感情の報告間の相関は負の値が少なかったが、その効果は頻度判断よりも瞬間的な感情の強さの評価で強かった(Bagozzi et al., 1999)

・女性の感情報告は、感情に関する一般的な理論に強く影響されていると提案

▶このような一般的な理論は文化の影響を受けているので、女性の感情報告は文化の影響をより強く受けているはず

■マルチレベル分析

・1つの文化の中の個人が第一階層の分析であり、異なる文化が第二階層の分析

・まず全人口における快・不快の感情の関係を推定

・次に、その関係が文化的サンプル間で有意に異なるかどうかを判断

・文化間のばらつきが文化サンプルの特定の特性と関連しているかどうかを調べる

■3つの仮説

・この関係は文化によって異なる

・アジアの弁証法的な哲学の影響を受けた文化のみがFPE-FUE相関に影響を与え、非アジアの集団主義的な文化は個人主義的な文化に近い

・文化的効果は性別によって調整される

 

方法

■参加者:40カ国の大学生を対象とした異文化調査

・最終的には、38カ国の5886人(男性2233人,女性3653人)

■国

・アジアの宗教(仏教、ヒンズー教、儒教)が盛んな10カ国を、アジア弁証法思想(ADP)の影響を受けている国

・Triandisによる個人主義・集団主義の次元での文化評価

■感情の頻度

・過去1ヶ月間に4つの快感情(喜び、満足、愛情、誇り)と4つの不快感情(悲しみ、恐れ、怒り、罪悪感)を経験した頻度を報告

▶快い感情と不快な感情の評価を平均して、それぞれ快い感情と不快な感情の頻度を表す尺度を作成

 

結果

■基本モデル

・喜びと不快感の関係は、bIntercept = -.18, SE = 0.02, t = 7.44, p < 0.01と、わずかに負の値

・ランダム効果が有意であり、国によって関係が大きく異なることを示している(X2(df = 37) = 130, p < 0.01)

■標準化された個人主義-集団主義(I-C)スコアをレベル2変数として加えた

・FPEのFUEに対する効果の切片は、bIntercept = -.18, SE = 0.02, t = 8.48, p < 0.01と有意

・個人主義-集団主義は、文化間の変動を有意に説明し、bI-C = -.03, SE = 0.01, t = 3.64, p < 0.01

▶individualism-collectivism の回帰重みが負の方向にあることは、個人主義文化では FUE と FPE の負の相関が強いことを示している

・ランダム効果は引き続き有意で、個人主義-二元主義-集団主義が文化的差異の一部のみを説明したことを示している

■弁証法的思考(ADP)

・FPEのFUEに対する効果の切片は、bIntercept = -.23, SE = .02, t = 10.26, p < .01と有意

・ADPは、bADP = .19, SE = .04, t = 4.57, p < .01

・ADPの正の回帰重みは、FPE-FUEの負の相関がADP文化圏では他の文化圏よりも弱いという仮説を裏付けるもの

■どっちもいれる

・FPE の FUE に対する効果の切片は、bIntercept = -.22, SE = 0.02, t = 9.61, p < 0.01

・I-Cの効果は、ADPの影響をコントロールした後、bI-C = -.02, SE = 0.01, t = 1.91, p = 0.06と、もはや有意ではなかった一方,ADPはI-Cをコントロールした後も有意な予測因子であり,bADP = 0.16, SE = 0.04, t = 3.71, p < 0.01であった

■性別含める

・FUE に対する FPE の主効果の切片は、bFPE 切片 = 7.16, SE = 0.03, t = 4.81, p < 0.01

・この関係に対するADPの効果はもはや有意ではなく、bFPE ADP = 0.10, SE = 0.06, t = 1.60, p = 0.09

・性別がFUEに及ぼす主効果は、女性の方が男性よりも不快な感情の頻度が高いことを示していた(bGENDER FIXED = .09, SE = .02, t = 5.67, p < .01)

・この関係は、ADPと非ADPの間で一貫しており、bGENDER ADP = 7.03, SE = 0.04, t = 0.97, p = 0.34

 

コメント

昨日に引き続き弁証法的思考と快・不快の感情の共存のお話。集団・個人主義よりもむしろ弁証法的思考によって予測されるよという結果。畏敬とかノスタルジアとかは確かにポジ・ネガどちらも包含しうるけど、ここで議論されているようなことを結びつけるのは難しいかなあ。

 

論文

Schimmack, U., Oishi, S., & Diener, E. (2002). Cultural influences on the relation between pleasant emotions and unpleasant emotions: Asian dialectic philosophies or individualism-collectivism?, Cognition and Emotion, 16(6), 705-719. DOI: 10.1080/02699930143000590