コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

文化、弁証法、そして矛盾についての推論(Peng & Nisbett, American Psychologist, 1999)

f:id:jin428:20210330152929j:plain

みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 
www.jinpe.biz

 

文化、弁証法、そして矛盾についての推論(Peng & Nisbett, American Psychologist, 1999)

結論から言うと、一見矛盾する2つの命題が提示された場合、アメリカ人参加者は意見を二分し、中国人参加者はどちらの命題も適度に受け入れるという結果が得られた

 

背景

■理論的には、明らかな矛盾に対する心理的な反応は4つ

1.否定:矛盾に全く対処しないか、矛盾がないように装う

2.割引:2つの情報が互いに矛盾しているように見えるため、両方の情報を不信に思ったり、割り引いたりする

▶両方の情報が行動に重要な影響を与える可能性があるため、これらの姿勢は反規範的である

3.差別化:2つの情報を比較して、一方が正しく、他方が間違っていると判断する

4.弁証法的思考:相反する2つの視点の基本的な要素を保持し、矛盾を許容するリスクを冒してでも、どちらの視点にも何らかの真実が含まれていると考える

■弁証法的思考に関する4つの疑問

(a) 一見矛盾しているように見えることを許容することは、弁証法的思考の本当の形なのか?

(b) 弁証法的思考の基礎となる原理とは何か?

(c) 人が矛盾を推論する方法には、文化的な違いがあるか?

(d) 明らかな矛盾を推論するための様々なアプローチの心理的・社会的な意味は何か?

■文化差

・西洋人は世界の不変性を信じており、命題が組み込まれている事実や理論のより大きなフィールドに目を向けるのではなく、命題を互いに関連づけて理解することで、命題を脱文脈化することが可能(例えば、Cromer, 1993; Logan, 1986)

■中国の弁証法的思考

変化の原理:この原理は、現実はプロセスであるとするものである。中国の民間信仰では、存在は静的なものではなく、動的で変化しやすいもの。

矛盾の原理:現実は正確ではなく、矛盾に満ちているという原則である。

関係性の原理:孤立したものや独立したものはなく、すべてのものはつながっているという考え方。何かを完全に知りたければ、それが他のすべてのものにどのように影響し、また影響されるのか、そのすべての関係を知らなければならない。

▶変化があるからこそ矛盾が生じる、変化や矛盾が生じるからこそ、他の部分との関係を考えずに個々の部分を論じても意味がない

■西洋の弁証法的思考

・同一性の法則:「あるものが真であれば、そのものも真である」というもの

・無矛盾の法則:真であると同時に偽でもある文は存在しないことを宣言するもの。「同じものが同時に真でもあり偽でもあることは不可能である」という法則。

・排除された中間の法則:「AはBかBでないかのどちらかである」「矛盾の2つのメンバーの間には中間項がない」

 

研究1

弁証法的なことわざはアメリカの日常語よりも中国の日常語に多く見られ,アメリカ人よりも中国人に好まれていることを示すことを目的

■参加者:ミシガン大学に在籍する白人のアメリカ人学部生(米国籍)70名と、台湾出身で自分が中国人であることを認識しており、ミシガン大学に在学中の中国人学部生41名

■材料:二つのことわざ集を選んだ▶中国とアメリカの弁証法的なことわざ8個ずつを無作為に選んだ▶中国とアメリカの非弁証法的な諺を5つずつ無作為に選んだ

■手続き

・4つの質問に答えた

(a) このことわざは、あなたにとって正確な言葉でどのくらいなじみがありますか?

(b) あなたはこのことわざをどの程度理解していると思いますか?

(c) あなたはこのことわざをどのくらい好きですか?

(d) あなたはこのことわざをどのくらいの頻度で使いますか?

■結果

・4つの判断の平均値をとって、それぞれのことわざに対する総合的な好みの指標を作成▶2(文化)×2(ことわざの種類)×2(言語)のオムニバス分散分析(ANOVA)

・アメリカ人は、弁証法的なアメリカのことわざよりも非弁証法的なものを非常に好み、中国人は、非弁証法的な中国のことわざよりも弁証法的なものを好むという、F(1, 109) = 12.45, p < 0.001という有意な三元配置の文化×言語×ことわざの種類の相互作用によって、この主要な予測は支持

 

研究2

■参加者:32人の中国人と34人の白人(非ユダヤ人)アメリカ人

■8つの弁証法的なことわざと8つの非弁証法的なことわざを、イディッシュ語のことわざ辞典(Ayalti, 1963)から無作為に選んだ

■結果

・中国人参加者はアメリカ人参加者よりも弁証法的なイディッシュ語のことわざを好んだが,非弁証法的なイディッシュ語のことわざに対する反応には文化的な違いはなかった

 

研究3

両文化圏の参加者に,日常生活における2つの矛盾について,その原因と解決策を含めて自分の考えを書いてもらった。そして、その回答を弁証法的か非弁証法的かでコード化

■参加者:研究2と同じ中国人大学院生32名とアメリカ人大学院生34名

■手続き

・2つの日常生活のシナリオ:1つは母娘の価値観の対立、もう1つは楽しむことと学校に行くことの対立

・弁証法的解決とは、(a)双方の問題を取り上げ、(b)妥協して対立を解決しようとするものと定義

■結果

・(母娘の対立)アメリカ人の回答は、弁証法的でないとコード化されたものが74%と弁証法的なものが26%に比べて多く、z(n = 34) = 2.74, p < 0.01

・対照的に、同じ対立に対して、中国の回答は、非弁証法的(28%)よりも弁証法的(72%)とコード化されたものが多く、z(n=32)=2.47、p<0.05

▶2×2のカイ二乗検定では、文化的差異が非常に有意であることが示されました、[chi]2(N = 64) = 13.61, p < 0.001

 

研究4

■参加者:研究2と3に参加した中国人32名とアメリカ人34名の自然科学系大学院生

■手続き

・論理的議論と弁証法的議論の2種類の議論

・各トピックの2つの議論を読んだ後、"どちらの議論が個人的に説得力(納得感)があるか?"、"どちらの議論が好きか?"を回答

■結果

・中国の参加者は,アメリカの参加者(M = 1.56, SD = 1.05)よりも弁証法的な議論を好む(M = 2.22, SD = 1.07),t(65) = 2.53, p < 0.05.

 

研究5

■参加者:ミシガン大学のアメリカ人学部生102名と北京大学の学部生136名

■手続き

・参加者は,3つの条件のいずれかに無作為に割り当て

・2つの条件では、参加者は、5つの矛盾の片側(AまたはB)だけの情報を読み、それぞれの発見の妥当性に対する判断をベースライン判断とみなすことができた

・3番目の条件では,参加者は両方の情報(AとB)を読み,一見すると矛盾に直面するようにした

・それぞれの記述をどの程度信じているかを,1(強く信じない)から9(強く信じる)までの9段階で回答

■結果

・2 (文化) x 2 (条件) x 2 (もっともらしい)オムニバスANOVAでは、有意な文化 x 条件の交互作用、F(1, 237) = 7.90, p < 0.01が見られ、アメリカ人と中国人の矛盾した情報に関する判断は、矛盾によって異なる影響を受けていることがわかった

・アメリカ人参加者は、矛盾した情報に対して差別化アプローチをとっている

 

コメント

今まで読んできた論文の源流に当たる論文。曖昧さ態度の論文を書いたときに日本人は白黒つけて考える傾向がイタリア人より高かったっていう結果はこれと矛盾するだろうか、と考えていた。

 

論文

Peng, K., & Nisbett, R. E. (1999). Culture, dialectics, and reasoning about contradiction. American Psychologist, 54(9), 741-754.