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Covid-19パンデミックへの社会的適応における音楽的美的感情の役割(Sarasso et al., Frontiers in psychology, 2021)

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みなさんこんにちは!

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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Covid-19パンデミックへの社会的適応における音楽的美的感情の役割(Sarasso et al., Frontiers in psychology, 2021)

 

ポイント

■Covid-19発生時(Baker et al., 2020)のように、予測できない状況がもたらす不確実性が高い場合、私たちは、保守的に代替行動を排除したり、以前に獲得した信念、行動、認知を不確かにする情報を避けたりすることで、不快感を軽減しようとする

■認知的不協和理論

・エリオット・アロンソンは、対人的な認知的不協和は「間違いを認めたくない、科学的知見を受け入れたくないという気持ちの根底にある動機付けのメカニズム」ではないかとコメント

・この嫌悪的な心理的衝動は、一連の不協和低減戦略(行為の合理化、行動の変更、責任の否定、矮小化など)を誘発し、態度の変化または態度の強化につながる

・そのような適応的な反応をするために,「不確実性と共存すること,つまり,すぐに自己正当化に飛びつくのではなく,しばらくの間,不協和音と共存すること」が求められた

・予測コーディング理論(Friston, 2010)の中で組み立てられた認知的不協和の最近の説明(Kaaronen, 2018)では、「不協和の軽減」(Festinger, 1957)に対する私たちの動機を「予測エラーの軽減」(Friston, 2010)と関連付けている

■予測符号化は音楽体験の知覚的、美的、感情的な次元においても重要な役割

・音楽を鑑賞・制作・共有することで、個人や社会が不確実性や不穏な感情に耐え、認知的不協和を適応的に軽減し、刻々と変化する環境から学ぶことができるのではないかと示唆する理論

・音楽によって促される美的感情は、コミュニケーションを改善・強化し、不協和音を軽減するための集団的戦略の出現を可能にするかもしれない

・絵を見て喜ぶのは、同時に物事の意味を学び集めているからである

・最近では、美的体験は、美しい知覚への注意を高める認知プロセスであり

・その結果、自己目的の関心を無視することができるとされている(つまり、カント的な無関心の概念)

・この概念は、後にショーペンハウアーによって、美的体験中の「意志のない」精神状態として再定式化され、今でも神経美学の最近の発展に影響を与えている

・このような「美的態度」(Stolnitz, 1978)は、新たに獲得した知識を受け入れ、刻々と変化する環境の中で望ましい状態を更新するためには、潜在的に邪魔になったり脅威になったりする新感覚や感情を受け入れるための基本的なものである

■実証研究

・4歳児を対象とした研究では、参加者は遊んではいけないおもちゃの価値を下げていた

▶興味深いことに、音楽に触れることで、この評価の低下を防ぐことができた

・「ストループ干渉課題」における認知的干渉は、子音の音楽で緩和され、不協和音の音楽で増強される

▶これらの結果は、音楽を鑑賞することで、相反する認知状態や不確実性を許容するために必要な美的報酬が得られる可能性を示唆

■予測符号化と美的鑑賞

・美的鑑賞は、環境の予測表現の更新を介して予測エラーの最小化に成功したことの意識的なフィードバックを表している可能性が示唆

・美的な喜びは、入ってくる感覚刺激に関する予測の改善に対応して生じる

・学習主導の美的報酬は、前頭葉ドーパミン神経ネットワークによって媒介されることが示されている

・運動抑制の一過性の状態は、予期しない事象に対応して感覚表現を更新するための資源を解放する(Wessel and Aron, 2017)

▶予測符号化の枠組みでは、美は、行動生成ではなく表現更新によって予測誤差を一時的に最小化するように脳を誘導するかもしれない

・現象学的なレベルでは、より強烈な感情や感覚を受け入れる余地を作る

・芸術は単なる趣味ではなく、Hillman(1988)が提案するように、"集団的麻酔に挑戦する "かもしれない活動

・著者によると、この芸術的な機能がなければ、私たちはお互いに無感覚になり、環境に対して感情的に無感覚になってしまう

・音楽による感情の社会的共有が、不確実性をもたらす新しい感情信号を許容し、増幅するのに役立ち、それによって行動や信念を適応的に更新することができるのではないかと提案

 

コメント

前半のレビューおもしろいのに、Covidとか社会のこと絡めて逆に浅くなった印象。流行とか盛り込んだほうがいいのはわかるけども…読まないといけない論文が見つかったのはよかった。

 

論文

Sarasso, P., Ronga, I., Neppi-Modona, M., & Sacco, K. (2021). The Role of Musical Aesthetic Emotions in Social Adaptation to the Covid-19 Pandemic. Frontiers in psychology, 12, 611639. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.611639