コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

聴覚と視覚の双安定知覚の分離可能性と共通性(Hirohito et al., Cerebral Cortex, 2012)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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聴覚と視覚の双安定知覚の分離可能性と共通性(Hirohito et al., Cerebral Cortex, 2012)

背景

■私たちは世界を安定したものとして認識していますが、感覚入力は空間的・時間的なオクルーダーによって曖昧になることがよくある

▶脳の中でどのように安定した知覚が形成されるかという重要な問題を提起

▶双安定知覚現象は、物理的な刺激を与え続けることで、異なる安定した知覚の間を自発的に切り替えることができるため、この問題を解明する手がかりとなる

・視覚領域では両眼視差、可逆図形、ビジュアルプレイドなどで研究

・聴覚領域では聴覚ストリーミングや言語変換などで研究

■遺伝子

・知覚の切り替えのタイミングは、ノルアドレナリンを介した自律神経系(Einhäuser et al.2008)や、セロトニン受容体の機能に影響を与える薬物(Carter et al.2005, 2007; Nagamine et al.2008)によって調節されることが主張

・ドーパミン系とセロトニン系は、二値性知覚 bistable perception の基礎的な神経プロセスに関与している可能性

COMTはドーパミンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンの代謝を調節している

HTR2A遺伝子はプロモーター領域にあり、その活性はグルタミン酸系の興奮性シナプス後電位を介して皮質の活性化を増加

・HTR1AおよびHTR2Aのアゴニストであるシロシビンを投与すると、両眼視差の発生率が抑制される

 

方法

■参加者:100名の大学生

■4つの課題

聴覚ストリーミング課題:高音(H)と低音(L)に無音区間を加えた3連の音を225回繰り返した

言葉の変換課題:日本語を母語とする女性が話す「バナナ」または「時計」という言葉の265回繰り返した

視覚的格子課題:2つの矩形波のグレーティングが刺激

反転図形課題:ネッカーキューブとルービン瓶を刺激として用いた

・各試行において、知覚が交互に切り替わる時間(知覚持続時間)を計算し、各個人の知覚スイッチの回数を求めた

■SNPジェノタイピング

・一塩基多型(SNP)とは、DNAの塩基配列の変化のことです。SNPには一般的に2つの対立遺伝子がある

・COMT遺伝子:コドン158にValからMetへのG-to-Aミスセンス変異:Met/Metが18人、Val/Metが42人、Val/Valが32人

・HTR2A遺伝子:プロモーター領域にG/A多型が観察,A/Aが24人、G/Aが46人、G/Gが21人

 

結果

■知覚的スイッチの数について相関分析を行った。条件間の相関係数はすべて正であった

■各個人(N=92)の知覚スイッチ数を観察変数として因子分析

・確認的因子分析を用いて,「聴覚」,「形」,「動き」の3つの因子は,知覚課題レベルでは分離可能であるが,互いに相関していることを特定

■遺伝子(COMT)

・聴覚ストリーミング課題では、Met/Met群(平均±平均標準誤差、77.7±14.0)がVal/Met群(46.7±4.2)およびVal/Val群(44.2±5.1)よりも知覚スイッチ数が多かった

・言葉の変換課題では、Met/Met群(90.2±14.8)がVal/Met群(60.5±5.7)およびVal/Val群(66.2±5.9)よりも知覚の切り替え回数がおおかった

■遺伝子(5TR2A)

・逆転図形課題では、A/Aグループ(62.5±7.1)とG/Gグループ(44.4±4.7)の間にわずかな差があった;F2,88 = 2.36, η2 = 0.004, P < 0.10

▶聴覚ストリーミングや言語変換における知覚スイッチの数はドーパミン系の影響を受け、リバーシブル・フィギュアにおける知覚スイッチの数はセロトニン系の影響を受けている

・etを含むCOMTの酵素分解は、Valを含むCOMTの4分の1の活性である(Lottaら、1995)。したがって、代謝が低く、シナプスのドーパミン濃度が高いと、神経細胞のS/N比が高まり(Weinberger et al. 2001)、その結果、知覚の切り替え回数は、Met/Met群>Val/Met群>Val/Val群の順となったと考えられる。

 

コメント

遺伝子系の論文で因子分析していておもしろいと思った。聴覚と視覚のモダリティの違いがドーパミン系とセロトニン系の多型の違いを反映していたのも興味深い。

 

論文

Hirohito M. Kondo, Norimichi Kitagawa, Miho S. Kitamura, Ai Koizumi, Michio Nomura, Makio Kashino, Separability and Commonality of Auditory and Visual Bistable Perception, Cerebral Cortex, Volume 22, Issue 8, August 2012, Pages 1915–1922, https://doi.org/10.1093/cercor/bhr266