コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

アルチンボルドのことは好きですか?審美眼が知覚の曖昧さを解決するための脳活動を調節する(Boccia et al., Behavioural Brain Research, 2015)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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アルチンボルドのことは好きですか?審美眼が知覚の曖昧さを解決するための脳活動を調節する(Boccia et al., Behavioural Brain Research, 2015)

結論から言うと、曖昧な肖像画の美的体験には、その美的体験の価値に応じて、紡錘状回の異なる神経メカニズムが寄与していることが明らかになった

 

背景

■哲学

・ショーペンハウアーの理論では、「美的態度」という概念が登場し始めている

・審美的態度が存在するのであれば、審美的経験には、自動的な視覚知覚処理から、より明確に感覚的経験に向けられた審美的な心の状態への意図的な移行が必要であると考えられなければならない

・実際、美的体験は,ユニークで,感情的に彩られた,自己超越的な主従関係における対象物の処理を可能にする

■審美的体験の神経基盤は,トップダウンの注意の方向付けとボトムアップの知覚促進との間の相互作用の関数として研究

・作品に対する実用的な志向と美的な志向が異なる神経ネットワークによって支えられている

・異なる知覚的特徴に関連して美的な志向を支える脳領域が異なる

・実用的な志向と比較して、美的な志向は左外側前頭前野を活性化し、視空間の探索を促進する絵画は左上頭頂小葉を活性化

▶審美的体験は,作品に対する個人の素質(=トップダウンプロセス)と知覚の促進(=ボトムアッププロセス)の相互作用の結果として捉えられている

■Cela-Conde et al. は,美的体験は主に2つの異なる時間間隔で起こる認知的イベントから構成されていると提案

(a)最初に行われる審美性の一般的評価(視覚刺激が美しいかどうかの認識)

(b)遅れて行われる審美体験の詳細な側面の評価(それが面白いかどうか、独創的かどうか)

・厳密な意味での美的鑑賞は主に後頭葉と前頭葉を含む領域のネットワークに関連し、広義の意味での美的鑑賞は主にデフォルト・モード・ネットワークの活性化に対応

■曖昧さを研究することで,ある属性に対する微視的な意識を担うさまざまな脳の部位とその相互作用を浮き彫りにすることができるという仮説

・知覚的な曖昧さ,すなわち,複数の解釈が可能な知覚刺激の質は,芸術家が観察者に美的体験を喚起するために用いるトリックの1つであり,一般的に優れた芸術作品の特徴となっている

・曖昧さは,ある知覚から別の知覚への知覚振動[21]を引き起こし[22],[23],その結果,時間的にも空間的にも分散した微視的な意識が生じることはよく知られている

・非芸術的な曖昧な刺激を知覚的に反転させる際に,一過性の脳活動の変化が繰り返し実証されている

・Jakeschら[24]は、曖昧さが芸術作品の美的鑑賞に不可欠な要素であることを明らかにした

・マグリットの曖昧な絵画を用いた研究では,曖昧な絵画は処理が難しいとされていても,曖昧でない絵画よりも好まれることがわかった、抽象的な絵画を見る際には、曖昧さが適度にある方が、経験した喜びや興味のレベルが高くなることを発見している

 

方法

■参加者:20名(平均年齢25.45歳、S.D.4.513、女性9名)

■デザイン:2(美的価値,種類)×2(曖昧,not 曖昧)×(アート,not アート)

・曖昧な芸術作品(AA)

・曖昧さのない芸術作品(AnA)

・非芸術的、非曖昧な刺激(nAnA)

・非芸術的、曖昧な刺激(nAA)

■手続き

・10枚の画像からなる8つのブロックで構成される4回のfMRIスキャンを受けた

 

結果と考察

■写真(各課題)とスクランブルをかけた条件との比較では、後頭葉から前頭葉にかけての広範囲な領域が活性化

・このネットワークには、後頭側頭葉の内側にある紡錘状回、下後頭回などの顔処理領域や、前頭葉および頭頂葉の下位領域が含まれていた

■分類課題と比較して、美的判断では、眼窩前頭皮質、島皮質、補足運動野、左の上前頭回、下前頭回、右の中帯状回、さらに両側の前中帯状回が活性化

・さらに,両半球の下・中後頭回,紡錘状回,舌状回,下側頭回を含む顔処理領域のネットワーク

曖昧な刺激を処理すると、曖昧でない刺激を処理する場合と比べて、顔の処理を行う領域や頭頂部、前頭葉の領域の活性化が高くなる

・右下前頭回と両側の上・下頭頂小葉は、あいまいな刺激で、非あいまいな刺激よりも活性化

■ポジティブな美的体験は、ネガティブな美的体験(好きな絵と嫌いな絵)と比較して、眼窩前頭皮質、島皮質、補足運動野、前帯状皮質などの前頭領域や、顔面処理の後頭側部領域(紡錘状回)、海馬傍皮質などで活性化

■ネガティブな美的体験をもたらす曖昧な芸術作品は、顔面処理領域の活性化をより顕著にするが、ポジティブな美的体験をもたらす曖昧な芸術作品は、これらの領域の活性化を減少させる

■芸術作品にはさまざまなタイプの曖昧さがある

・たとえ安定した絵があったとしても、名画に与えられる複数の物語的解釈によって表される

 

コメント

久しぶりに芸術のMRI研究を読んだのでとても面白かった。3要因になると途中で理解をやめてしまいそうになる。Ambiguity vs. Not Ambiguityで右下前頭回と両側の上・下頭頂小葉がより活性化したことは覚えておきたい。これからもAmbiguity generalな脳領域と感情Ambiguity、意味Ambiguity specific なところどちらも書けるように読んでいきたい。

 

論文

Boccia, M., Nemmi, F., Tizzani, E., Guariglia, C., Ferlazzo, F., Galati, G., & Giannini, A. M. (2015). Do you like Arcimboldo’s? Esthetic appreciation modulates brain activity in solving perceptual ambiguity. Behavioural Brain Research, 278, 147–154. https://doi.org/10.1016/j.bbr.2014.09.041