コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

アートに関する脳:強烈な美的体験がデフォルトモードネットワークを活性化する(Vessel et al., Frontiers in Human Neuroscience, 2012)

f:id:jin428:20210413144006j:plainみなさんこんにちは。

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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さっそくいきます。

 



結論から言うと、前頭葉領域のネットワーク(DMNに属する領域を含む)は、最も感動的な作品(「4」評価)でのみ段階的な増加を示し、それ以外の作品では差のない活動を示した

 

背景

■神経美学

・前内側前頭葉皮質(aMPFC)と尾状部/線条体の位置で、さらにいくつかの領域が検出されたが、他の研究では検出されなかった

・美的推奨度が高い作品と低い作品で活性化される脳領域は、その反応パターンによって2つに分類できることがわかった

1.感覚領域(後頭-側頭)では、BOLDの活性化が観察者の評価に応じて直線的に変化:線条体(STR)と網様体(PRF)の活動も評価に応じて直線的に変化

2.前頭葉と皮質下の領域で構成されるネットワークは、最も感動的な作品(「4」の評価)に対してのみ段階的な増加を示し、それ以外の作品では差のない活動を示した

DMNでは、美的体験のポジティブな感情とネガティブな感情に対する感受性が観察され、美的評価の個人差と相関する個人差の証拠

■哲学

・哲学的研究の主要なテーマは、普遍性と主観性の間の緊張関係

・多くの著者は、美的評価は普遍的な原理に基づいていると主張

・一方では、美的反応を主観的なものとして理解することの重要性が強調

・美的判断は主観的なものであるだけでなく、文化的な規範、教育、経験などの影響を強く受けます。そのため、評価にコンセンサスが得られる特定のアイテムがある一方で、大多数の人工物の判断は大きく異なる可能性

・人々が美的価値について同意する傾向にある刺激を用いると,文化や進化に起因する共通の内的要因が重視され,主観的な美的体験の真に個人的な側面が現れる余地がない

■普遍性・個人差

・私たちは、人々が強い個人的な好みを示す刺激を用いることにした

▶個人の嗜好が現れるようにするために、刺激セットを選択する際の重要な指針は、さまざまなスタイルと時代を網羅

・刺激の多様性が個人差を生む理由の一つは、刺激がさまざまな感情を引き起こすことにある

・「好み」「喜び」から「美しさ」「悲しみ」「畏怖」「崇高さ」まで、価値観や興奮の度合いが異なる評価が含まれる

 

方法

■参加者:16名の観察者(男性11名、右利き13名、27.6±7.7歳)

■刺激:CAMIO(Catalog of Art Museum Images Online)データベース(http://www.oclc.org/camio; Figure 1 and List of Artworks)から109枚の画像

■手続き

・スキャナーに入る前に、PANAS(Positive and Negative Affect Schedule:ワトソンら、1988年)

・手持ちのレスポンスボックスのボタンを押して1〜4の尺度を使い,以下の指示に従って「この絵にどのくらい強く心を動かされますか」という質問に答える

・MRIの外:

・スキャナーの中と同じ絵画セットを同じ順番で見せられた

・それぞれの絵画が引き起こす評価/感情反応の強さを評価するよう求められた:喜び、快楽、悲しみ、混乱、畏怖、恐怖、嫌悪、美、崇高(joy, pleasure, sadness, confusion, awe, fear, disgust, beauty, and the sublime)

 

結果

■観察者が画像に最高の推奨度を与えた試行(「4」)と画像に最低の推奨度を与えた試行(「1」)を全脳グループで対比

・美的推奨度と相関のある後部、前部、皮質下の脳領域が明らかになった

・後方(後頭-側頭)のROIでは,推薦レベルとBOLD応答の間に線形関係が見られた(左下側頭溝 ITS、左海馬傍皮質 PHC、左下側頭溝 ITS、左海馬傍皮質 PHC、右上側頭回 STG

左線条体と網様体の2つの皮質下領域においても、推奨度とBOLD活性の間には直線的な関係

左下前頭回、三角部(IFGt)、左外側眼窩前頭皮質(LOFC)、左上前頭回(SFG)では、美的推奨度とBOLD反応に関連する非線形の「ステップ」のようなパターンが見られた

・感動的な映像は、デフォルトモードのネットワークに働きかけ、新たな神経系を呼び起こす

■4対-321コントラスト

・左半球の内側表面に、前内側前頭皮質(aMPFC:-6 38 4)から4対-1コントラストで見られたSFGの活性化まで、広範囲に渡って活性化が見られた

aMPFCは、DMNの中核領域として知られており、ほとんどの画像(1、2、3と評価されたもの)の提示で、活性化がベースラインよりも低下していた一方、最も美しいと評価された作品(推薦度4)では、aMPFCの安静時ベースラインでのBOLD活性化が見られた

・DMNのもう一つの中核領域である左後帯状皮質(PCC)でも、目立たないが同様の活性化パターンが見られた

左黒質(SN)左海馬(HC)は、1、2、3と評価された試行では活性化に差がなかったが、4と評価された試行では有意に高い活性化

■美的評価のポジティブな側面とネガティブな側面に対する分離可能なBOLD反応

・主成分因子分析の結果,2つのグループレベルの因子が同定され,これらの因子は,評価アンケートにおける観察者の評価の分散の59%を占めた

▶第1因子は、喜びや美しさなどのポジティブな項目に非常に高い負荷をかけ、第2因子は、恐怖、嫌悪、悲しみに非常に高い負荷をかけた

・ポジティブの評価因子に敏感:SN(黒質),左STR(線条体),左SFG(上前頭回)

・ネガティブの評価因子に敏感:STR、左IFGt(三角部)、左aMPFC

■PRFと左ITSのBOLD効果は、評価的反応に対する個人の重みを反映

・観察者によって,残った評価語の異なる部分集合が,個人の推薦を予測するのに有効であった

・例えば,「畏敬の念」を感じた画像を推薦する人がいる一方で,「畏敬の念」と推薦の間には有意な関係が見られず,「恐怖」を感じた画像と推薦の間には関係が見られた人もいた

・これらの評価的加重の個人プロファイルは、PRFと左ITSの2つのROIで観察された4対-1のBOLD効果の大きさと相関

▶畏敬の念を感じた画像を推薦する傾向のある観察者は、網様体賦活系の一部であるPRFにおいて、より大きな推薦効果を示した

・尾状核(背側STR)は主に望ましい報酬を期待しているときに反応し(「欲しい」)、一方、側坐核(腹側STR)は音楽のテーマ、ライン、フレーズの解消に伴う感情的反応のピーク(「好き」)を経験しているときに活動することを示唆(Salimpoor et al., 2011)

・観察者は、非常に異なる画像に対して強い美的反応を示し、特定の画像に感動する理由も非常に異なるが、美的な感動を得る能力は普遍的なものであるようだ

 

コメント

美的体験とDMN(特にaMPFC)の関係を明らかにした論文。DMNと報酬系の関連はあまり述べられていないため、この後の研究を参照した方がよさそう。

 

論文

Vessel, E. A., Starr, G. G., & Rubin, N. (2012). The brain on art: intense aesthetic experience activates the default mode network. Frontiers in Human Neuroscience, 6, 66. doi:10.3389/fnhum.2012.00066.