コーヒー1杯の暖かさ

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共感は音楽における感情表現の知覚と関連するか?マルチモーダル時系列解析(Wollner, Psychology of Aesthetics, Creativity, & the Arts, 2012)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

 

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さっそくいきます。

 

共感は音楽における感情表現の知覚と関連するか?マルチモーダル時系列解析(Wollner, Psychology of Aesthetics, Creativity, & the Arts, 2012)

結論から言うと、共感度の高い観察者は、音楽家の意図をより正確に推定した。

 

背景

■感情的共感と認知的共感

・音楽は表現力豊かな人間の相互作用を研究するのに適した分野であるが(Juslin & Laukka, 2003)、音楽における感情表現の知覚における共感の役割については、これまでほとんど経験的に取り上げられてこなかった

・情動的共感は、比較的自動的な反応メカニズムである

・視点の取り方を含む認知的共感は、特に前頭前野の高い脳の発達を必要とする

・Preston and de Waal (2002)の共感の知覚-行動モデルは、行動の知覚と実行のための共有表現を提案する共通コーディング理論に部分的に基づいている

・神経心理学的には、ミラーニューロンが同定されたことで、行動と知覚の表現の重なりが証明された

■音楽は社会的な活動である

・そこでは作曲家、演奏者、そして聴き手が多面的に相互作用している

・commotion (Scherer and Zentner, 2001):共感は音楽家と同一視して感じることを特徴とし、感情の伝染は行動(すなわち音楽家の感情表現)を知覚することに関係する

・感情移入とは、他の人の身体的行動を自動的に模倣し、それに同調することであると定義

・JuslinとVastfjall(2008)は、音楽に対する情動反応の基本的なメカニズムの1つが情動の共感であることを示唆

・音楽家は、音響的な表現のほかに、自分の意図を視覚的に伝える

・視覚的なパフォーマンス情報は、観客の感情表現の知覚に強く影響

・音楽は時間とともに変化していくものなので,質問紙による回顧的な判断では,知覚された感情の変動を十分に捉えることができない

・実証研究では,演奏中の時系列的な回答を分析できる連続測定法を採用(McAdams, Vines, Vieillard, Smith, & Reynolds, 2004; Camurri, Mazzarino, Ricchetti, Timmers, & Volpe, 2004; Schubert, 2004; Bachorik et al., 2009)

 

方法

■参加者:22人

・全員が、程度の差はあるものの、3年から19年の間に実践的な音楽トレーニングを受けていた(M = 12.00年、SD = 4.59)

■手続き

・カルテットメンバーは、視覚、聴覚、視聴覚のそれぞれの条件でシーケンスを見ながら、演奏の表現力のレベルを連続的に示すように求められた

・表現力が非常に高い場合は右に(最大+50),表現力が非常に低い場合は左に(最小-50)移動できるようになっていた

・観察者は、カルテットメンバーと同様の指示を受け、同じ作業を行った

・QCAEは、過去の共感尺度(Baron-Cohen et al., 2003; Davis, 1983; Eysenck & Eysenck, 1978; Hogan, 1969)に基づいて最近開発された

 

結果

■カルテットの連続表現力判定の大平均プロファイルは、視覚のみの条件、聴覚のみの条件、視聴覚条件の間でほぼ一致した

・視覚と聴覚の相関(一次差)は、rS(54) = 0.34, p < 0.05と有意になったが、視聴覚のプロファイルとの間には有意な相関は見られなかった

■視覚、聴覚、視聴覚の各実験条件における観測者の大平均プロファイルは相関していた

・視覚のみの場合の表現力プロファイルは、聴覚のプロファイルと有意に相関し、rS(54)=0.42、p<0.01、視聴覚のプロファイルは、rS(54)=0.73、p<0.001

・視聴覚プロファイルは聴覚プロファイルと相関があり,rS(54) = 0.59, p < 0.001

■観察者の連続的な表現力プロファイルとカルテット自身の平均プロファイルとの関係を計算

・視覚的なシーケンスではrS(54)=0.42、p<0.01

・視聴覚的なシーケンスではrS(54)=0.37、p<0.01と、有意な相関が得られた

・動的強度(図2参照)は,聴覚的シーケンスに対する観察者の平均応答プロファイルと相関があり,rS(54) = 0.31, p < 0.05

■共感度と正確性

・総合的な共感度と視覚的な差異スコアの相関係数はr(22)=-0.36、p=0.10

・パート2では、視覚的差分スコアは、感情的共感(r[22] = -0.69, p < 0.001)および全体的共感(r[22] = -0.48, p < 0.05)と有意な相関

▶感情的共感および全体的共感のスコアが高いほど、カルテットメンバーの表現意図を視覚的に解読できることがわかった

・聴覚・視覚の差異スコアと情動的共感(r[22] = -0.57, p < 0.01)および総合的共感(r[22] = -0.59, p < 0.01; 図5)との間にも有意な相関関係が見られた

・認知的共感については、有意な相関は見られなかった

 

コメント

音楽演奏を視覚のみ、聴覚のみ、視聴覚どっちも、とマルチモーダルに評価させた面白い研究。時系列分析の中でも相関くらいしか使っていなくて分かりやすかったけど、他の分析はどんなもんかもっと知りたい。

 

論文

Wollner, C. (2012). Is Empathy Related to the Perception of Emotional Expression in Music? A Multimodal Time-Series Analysis. Psychology of Aesthetics, Creativity, & the Arts, 6, 214-223. https://doi.org/10.1037/a0027392