コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

チューリング・テストと芸術的創造性(Boden, 2010)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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さっそくいきます。

 

チューリング・テストと芸術的創造性(Boden, 2010)

ポイント

■「芸術的」なプログラムがTTを通過するためには、以下のようなアートワークを生み出すことが必要

(1)人間が作ったものと見分けがつかない、または
(2) 人間が作ったものと同じくらいの美的価値があるとみなされる

・TTに関連するコンピュータアート作品とは、人間が直接介入することなく、全体的または大部分がコンピュータのプロセスによって生成されたもの(Boden and Edmonds, 2009)

・つまり、単にコンピュータを使ったアートはカウントされない

・Photoshopを使ってコラージュを作ったり、色の組み合わせを変えたりしている人は、コンピュータで生成されたアートを可能にしているのではなく、コンピュータで支援されたアートを行っていることになる

■TTは、グラフィックアートや音楽を生成するプログラムの一部で、すでに強く(つまり、予測不可能な相互作用を介して、あるいは非相互作用的に)受け継がれている

・例えば、『タイムズ』紙で「ミレニアム・ドームで最高のもの」と評されたリチャード・ブラウンの魅惑的な「スターフィッシュ」

・これは、天井から下に向かって投影されるコンピュータ映像で、ガラスのテーブルの中に巨大な多色のヒトデが「閉じ込められて」いるように見えるが、観客の動きや音に反応して、生き生きと動く

・コーエンの線画作品「AARON」(2002年)のデザインは、世界中の主要なアートギャラリーで展示され、高い評価を得ている

・有名な人間の芸術家の「ダイヤモンド・ジュビリー」を祝うイベントで、ロスコと並んで展示されたことがTTを通過したことにならないとしたら、何が通過したことになるのか

■作曲家のCope(2001, 2006)は、Xのスタイルで音楽を生成するEmmy(Experiments in Musical Intelligenceより)というプログラムを書いた

・Xは、モンテヴェルディからスコット・ジョプリンまで、多くの有名な作曲家のひとり

・"バッハとジャズ、タイ音楽と西洋音楽など、異なるスタイルの「組み合わせ」も可能

・このプログラムは、コープが作曲家の特徴として選んだ音楽的な断片の膨大なデータベースと、一般的な作曲法や音楽学的なルールに基づいている

・音楽的な知識のあるリスナーは、エミーの音楽を人間が作曲した「同等のもの」と区別できないことがある

 

■コンピュータ・アートの中には、新しい構造がそれ以前の構造とは根本的に異なる、変革的な創造性を伴うものがあると言えるだろう(Boden, 2004)

・これには、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた進化的プログラミングが含まれる

・GAは、プログラム自身のルールをランダムに変異させることができ、例えば、色付きの画像を生成することができる

■今まで褒めていた映像や音楽がコンピュータで作られたものだと知って、それまでの評価を撤回することがある

・芸術とは、人間の経験を人から人へ伝えることに他ならないのだから、コンピュータの「芸術」は本当の意味での芸術ではないというのだ

・したがって、コンピュータの「アート」は本当の意味でのアートではない

・彼らは、それが持っているように見える「美」は、純粋に表面的なものであり、実際には幻想であると主張

 

・一般的には、コンピュータの創造性というものが原理的に存在しないため、コンピュータ・アートというものは存在しないと言われている

・このような見解を示す論拠は様々であるが、一般的には、意味(意図性)、意識、身体や神経タンパク質の役割、人間の道徳的共同体の構成員など、非常に議論の多い哲学的な概念が関係している(Boden, 2004)

・同じく問題のある概念である「生命」が議論の対象になることもあります(Boden, 2006)

・コンピュータ・アートのTTは、すでに「行動的」に合格している

・このことが、コンピュータに関して真の芸術/創造性を語ることを正当化するかどうかは、大いに議論の余地のある哲学的な議論にかかっている

 

コメント

AIの創造性に関するチューリングテストの割と早めの論考。これを読んで哲学的な項目を検討する意義が少し出てきた気がする。

 

論文

Boden, M. A. (2010). The Turing test and artistic creativity. Kybernetes, 39(3), 409–413. https://doi.org/10.1108/03684921011036132