コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

瞳孔径と主観的な美的嗜好を用いて現実の肖像画で測定した情動半球の違い (Blackburn & Schirillo, Experimental Brain Research, 2012)

f:id:jin428:20210608180012j:plain


みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

www.jinpe.biz

 

瞳孔径と主観的な美的嗜好を用いて現実の肖像画で測定した情動半球の違い (Blackburn & Schirillo, Experimental Brain Research, 2012)

結論からいうと、左側の肖像画に強い選好性があることがわかり、左半球の顔は高い評価と大きな瞳孔の拡張を引き起こし、瞳孔の大きさと美的評価の間には正の線形関係が認められ、心地よさの評価が高いほど瞳孔の大きさが大きくなることがわかった。

 

背景

■人間の感情の社会的・コミュニケーション的側面は、主に顔の表情から得られると考えられている

・最近の研究では、特定の表情筋が異なる感情に反応することを示す、より詳細な神経メカニズムの説明

■感情表現における顔の非対称性に関する理論

・チャールズ・ダーウィン(1872年)は、人が嘲笑するときに犬歯が片側だけ露出する傾向があることを観察し、顔の非対称性を発見した最初の人物

・下顔面の片側の表情筋は、対側の大脳半球からの神経回路によって支配されている

・人間は顔の左右で質的に異なる感情を同時に表現することができるかもしれない

・左右の顔の感情表現が乖離している可能性から、半顔の表情は解剖学的に異なるだけでなく、それを見る人に与える影響も異なることが示されている

・価動性にかかわらず感情の知覚と表現において全体的に右半球が支配的であるとする「右半球仮説」は多くの支持を得ている

■かなりの数の肖像画が顔の輪郭の位置を歪めており、肖像画の中で左頬を見せることが芸術的に明らかに好まれていることがわかってる (McManus 2005)

・西ヨーロッパの1,474人の肖像画を調査したところ、大多数の肖像画家(約64%)が左頬を露出しているのに対し、右頬を露出しているのは約33%

この左向きの偏りは、男性の肖像画よりも女性の肖像画に多く見られた

・Powell and Schirillo (2009, 2011)の2つの可能な解釈:

1.男性は女性ほど感情を表す左側を見せたくないのではないか

2.女性は男性よりも感情を表す左頬を見せることで、感情を表現しようとするアーティストの意図があるのではないか

■意識的な美的嗜好と無意識の瞳孔サイズ

・PowellとSchirillo(2011)は,この限界を克服するために,オリジナル画像と鏡面反転画像の美的判断と,以前から感情の喚起を示す信頼性の高い無意識的な生理学的指標として用いられている瞳孔径の測定値を同時に取得した(Bradley et al.2008)

・HessとPolt(1960)は,感情の高ぶりが瞳孔の大きさに影響することを初めて報告

・しかし、これらの結果は、画像によって輝度が異なるために、瞳孔の大きさが大きく変化し、混同されていた

・両研究とも、絵を見ているときの瞳孔の変化は、皮膚コンダクタンスの変化と共働し、価数にかかわらず感情的な内容を知覚することから、交感神経の活性化(情動の喚起)によるものであると結論づけた

 

方法

■参加者

・ボランティア参加者(男性10名、女性10名、年齢35~65歳)がポートレート撮影を行った

・37人の観察者(女性23人、男性14人、年齢18-22歳)

■手続き

・瞳孔はさまざまな色に異なる反応を示すため,40枚の画像すべてをグレースケールに変換して,分散を最小化した

・瞳孔の大きさは目の中で一定であると考えられているので、片目だけを測定する必要があった(Lowenfeld 1999; Powell and Schirillo 2011)

・各画像は15秒間提示され,その間に,その画像をどの程度美的に「快」と感じるかを考えるように指示された(9件法)

・瞳孔の大きさは,新しい画像を提示した後に急速に減少することが知られており,瞳孔が安定してベースラインレベル以上に回復するのに十分な時間が必要であった(Aboyoun and Dabbs 1998)

・観察者には画像提示後,瞳孔が安定するまで6秒間の時間が与えられ,その後,新たに安定したレベルで瞳孔サイズの測定値を記録するためにさらに9秒間の時間が割り当てられた

 

結果

■快

・評価を性別ごとに平均し、ペア・サンプルのt検定(1,479)=-0.916、p=0.360を行ったところ、観察者の評価に性別(提起者)の主効果は見られなかった

・2(顔の側面:オリジナルと鏡面反転、つまり真の顔と認識された顔)×2(ポスターの性別:男性と女性)の反復測定ANOVA:顔の向きに対する主効果(F (1, 369) = 2.858, p = 0.092)はわずかであったが、相手の性別に対する主効果(F (1, 369) = 0.014, p = 0.907)はなかった、交互作用もなし

■瞳孔径

・80枚の画像それぞれに記録された瞳孔径の生の測定値から,男性および女性のポートレートの平均瞳孔径を算出

・ANOVA:顔の向きによる主効果(F (1, 369) = 9.192, p = 0.003)は非常に有意であったが、性別による主効果(F (1, 369) = 1.014, p = 0.314)は見られなかった

■快と瞳孔径の関係

・全80枚の画像において、評価と瞳孔径の間に正の相関が見られた(R 2 = 0.242, r = 0.492)

・80回の試行順序で平均瞳孔径をプロットすると、2次の多項式を用いた標準的なU字型の関数が得られた

・時間の経過とともに、瞳孔径が最初は小さくなり、次に大きくなるという変動を示すもの

・経時的な疲労の影響は、瞳孔サイズの変動と瞬きの回数を試行回数でプロットすることで確認:瞳孔サイズの標準偏差(mm2)で測定すると、瞳孔サイズのばらつきは時間の経過とともにかなり大きくなった(y = -0.0005x 2 + 0.0041x + 0.822; R 2 = 0.621, r = 0.788)

・まばたきの回数は、タスク時間全体の約11%で、試行回数の増加とともにわずかに増加

▶これらのパラメータの増加は、わずかな疲労を示している

 

コメント

瞳孔径と美しさ(本研究では快)の関係を論じた論文を読むのは初めて。快と瞳孔径は正の相関というだけでも使えそう。左側の方が好まれるのはなんでだろうなあと考えるのはたしかにおもしろい。

 

論文

Blackburn, K., & Schirillo, J. (2012). Emotive hemispheric differences measured in real-life portraits using pupil diameter and subjective aesthetic preferences. Experimental Brain Research, 219(4), 447–455. https://doi.org/10.1007/s00221-012-3091-y