コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

人工知能はアートを作れるか?(Park, 2017)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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人工知能はアートを作れるか?(Park, 2017)

結論からいうと、人々はロボットの絵と人間の絵をほぼ同じ程度に芸術として判断することがわかった

 

背景

■機械が書いた絵画や詩、歌、さらには映画の脚本など、ロボットが作った芸術作品に出会うことは、今では珍しいことではなくなった

・これらのロボットがつくったものが本物の芸術作品かどうかという問題になると、意見が分かれる

・人工知能は,人間が作ったものと見分けがつかないだけでなく,それに劣らない美的価値があると認識されるアートのような作品を作ることができることがすでにわかっている

・しかし,多くの人が,ロボットは芸術を生み出すことができないと考えている

・一般的な理由としては,機械は人間のような知能,自律性,精神状態,感情,あるいは後者の結果として部分的には社会的関係に参加するのに必要なエージェンシーを持たないというものがある

■ロボットが作った(ある種の)創作物を芸術とみなすならば、第二の興味深い問題が生じる

・私たちはロボットを芸術家とみなしてもいいのだろうか?

・そして、もしそうだとしたら、どのような条件のもとで?

・「英雄的なAI」と「協調的なAI」:前者は独立した創造的な自律型エージェントを指し、後者は人間を含むグループエージェントの一部であるAIを指す

・ロボット倫理に関する文献では、人間とロボットのコラボレーションに集団的なエージェンシーを帰属させる提案がなされており、この提案は美的エージェンシーにも拡張可能である

・人間以外が創造した芸術作品のオーサーシップを、創造的な機械の作者である人間のみに帰属させるものもある

・ロボットにオーサーシップを付与する提案がある一方で、ロボットが作成した作品の著作権を人間の設計者に譲渡する提案もある

■機械には意識がないという点で一致しているが,人々はロボットを擬人化する傾向が強く,さまざまな精神状態をロボットに付与する傾向がある

・多くの著者は、AIを擬人化する傾向を問題視しており、ロボットに豊かな心理状態を付与することに注意を促している

・ロボットが芸術を創造することができると認識されているかどうかを判断するためには、エージェント(人間と比較して自律的なロボット)、プロセス(作品に命を吹き込む行為)、プロダクト(創造された物体)の3つの側面に分けて考える必要がある

■精神状態

・多くの学者が、芸術作品は精神状態を持つエージェントによって作られなければならないと定義している

・Jerrold Levinsonの意図的歴史的なアートの定義が有名

・ビアズリーの美学的な芸術の定義もまた、制作者の意図を強調しているが、それは対象物が芸術作品とみなされるための必要条件としては扱われていない

・芸術の創造についてのロマンティックな概念もあり、それによれば、芸術の創造は創造者の内面世界と創造者の感情の表現である

▶このような芸術の概念はすべて、ロボットが創造的になれるという立場と両立させるのは難しい、ロボットは(おそらく)意図を持たず、表現すべき内的世界もあまりないから

・芸術心理学の研究でも知られているように、制作者の精神状態に関する推論は、私たちが芸術作品を推論する際に重要な役割を果たす

・問題となっている物体の外観よりも、制作者の意図の方がより重要であると考えられているのである

・Juckerら[33]は、芸術家の意図を認識することが、人々が何を芸術として分類するか、また何が良い芸術であるかの評価に影響を与えることを明らかにした

■意図性の素朴概念は,次の5つの要素から構成されている:

(i)ある結果に対する欲求

(ii)その結果につながる行動に関する信念

(iii)その行動を実行する意図

(iv)その行動を実行している間に意図を果たす意識

(v)その行動を実行する技術である

・ロボットの行動やロボットエージェントの道徳的評価において知覚された精神状態が中核的に重要であることを考えると、ロボットの創造物や創造的なエージェンシーに対する美的評価においても同様の役割を果たすことが期待でき

■3つの核となる要素に沿って、我々は(i)エージェントタイプ(人間vs.AI駆動の自律型ロボット)、(ii)プロセスタイプ(意図的作成vs.偶発的作成)、(iii)製品タイプ(抽象画vs.具象画)を操作

 

実験1:抽象画

■参加者:Mturkにより、254人の参加者を得た(女性:53%,年齢はM=44歳,SD=14歳,範囲は23~79歳)

■手続き

・参加者は,人間または自律的なAIロボットが抽象的な絵画を作成するというヴィネット(詳細は付録A1参照)を見せられた

・絵画がどのようにして生まれたかを操作:ある条件では、エージェントは絵を描くことを決め(目的的)、別の条件では、エージェントはスタジオを掃除し、誤って絵の具を倒してキャンバスにこぼしてしまった(偶発的)

・質問項目

1)「その絵は芸術である」(Art)
2)「その絵はアーティストが描いたものだ」(Artist)
3)「行為者は絵を描きたいと思っていた」(Desire)
4)「行為者は、自分が絵画を作っていると信じていた」(Belief)
5)「意図的に絵画を制作した」(Intention)

■結果

・混合デザインANOVA:参加者はロボットの絵よりも人間の絵に芸術性を付与したいと考えていた(F(1,253)=7.598, p=.006, ηp 2=.029)が、その効果の大きさは小さかった(コーヘンのd=.33に相当)

・人はロボットよりも人間を芸術家だと思いたいと考えていた(F(1,253)=99.789, p.<.001, d =1.18)

・絵画が芸術であるかどうか、芸術家が描いたものであるかどうかというコアDVと、欲求、信念、意図という精神状態DVの間の相関は、いずれも有意であった

 

実験2:具象画

■参加者:257人の参加者(女性:46%、年齢M=43歳、SD=13歳、範囲:22~88歳)

■手続き:具象画という点以外は実験1と同じ

■結果

・参加者はロボットよりも人間をアーティストとみなしたいと考えていることがわかった(F(1,103)=107.353, p<.001, ηp2=.298)

・しかしながら、アートとみなしたいかどうかに関しては有意差なし

・実験1と同様に、コアDVである「芸術であるか」「芸術家が描いたものであるか」と、メンタルステートDVである「欲求」「信念」「意図」との相関は、いずれも有意であった

 

コメント

心理学系の論文ではないが、芸術鑑賞における意図性の効果を具体的に検証していて参考になった。ヴィネットによって、偶発的な芸術作成条件を提示するのはおもしろい操作だった。

 

論文

Park, G. H. (2017). Can artificial intelligence make art? Turkish Online Journal of Educational Technology, 2017(December Special Issue ITEC), 83–88. https://doi.org/10.2139/ssrn.3827314