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心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

感情の曖昧さを解消する顔色の役割(Thorstenson et al., Emotion, 2021)

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みなさんこんにちは。

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

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感情の曖昧さを解消する顔色の役割(Thorstenson et al., Emotion, 2021)

結論からいうと、顔の色は、怒り・嫌悪(実験1)、驚き・恐怖(実験2a、2b)、涙・悲しみ・幸福(実験3)の感情ペアの知覚された感情に影響を与えることがわかった

 

背景

■顔面-筋肉表現が感情の知覚を確実に呼び起こすことができることを実証するために多くの研究が行われてきた

・しかし、最近の研究では、基本的な感情カテゴリーと思われるものの中には、顔や筋肉の表現上の特徴が類似しているものがあり、これが混乱を招き、結果として知覚者による感情のデコーディングがうまくいかないことが明らかになった

・具体的には、特定の感情ペア(怒り-嫌悪、驚き-恐怖)に対する表情の知覚は、これらの感情ペアの間に共通の表現特徴があることが分かったため、観察者によってしばしば混同

・よくわかっていない情動の表現として、涙(lacrimation)がある

・泣くことはポジティブな刺激にもネガティブな刺激にも反応して起こるため、涙は感情の紛れた表現機能

■新たな研究ラインでは、感情表現中に顔の色が変化すること(Benitez-Quiroz, Srinivasan, & Martinez, 2018; Drummond & Quah, 2001)が、末梢の心生理の変化と一致する方法で実証

・人々はこのような生理的変化に合わせて顔色の感情の関連付けを行っている

・顔色の情報を用いて感情の知覚を促進

・顔の色調が感情表現の曖昧さの解消に寄与している可能性

・顔の色調(具体的には知覚色-反対色の赤-緑の次元に沿った顔の色の変化)が、しばしば混同される2つの感情表現(怒り対嫌悪)の曖昧さを容易にすることが実際に実証された(Thorstensonら、2019年)

■今回の研究では、CIELABの色空間を用いて顔の色の変化を概念化し、実装

・CIELABは、視覚システムと一致した知覚的に均一な3つの直交する次元を用いて色を表現

・CIELAB Lは明るさの知覚を表し(今回の研究では操作しない)、CIELAB aは色の反対側である赤緑の次元に沿った知覚を表し、CIELAB bは色の反対側である黄青の次元に沿った知覚を表す

 

実験1

■顔色が怒りと嫌悪の曖昧な表情に対する感情強度の知覚評価や二分法による感情分類に影響を与えるかどうかを検証

■参加者:米国の大学の学生93名(女性54名、Mage 20.35、SDage 1.31)

■刺激:曖昧な感情表現顔(怒りvs.嫌悪)のセットは、以前の研究(Thorstenson et al.2019)で使用されたもの

・6つの顔のそれぞれについて、顔の皮膚領域(すなわち、背景、目、髪、歯を除く)の色を操作するフェイスマスクを作成

・MATLABを用いて、各顔の色をCIELAB a(赤み)の/-15単位の範囲で7等分して操作

■手続き

・各顔画像について,怒りと嫌悪に分けてスライダを調整し,「その顔にはどの程度の感情が表れているか」を評価するよう求められた

・さらに、「1つだけ選ぶとしたら、この顔はどの感情を表していますか」という質問を、怒りと嫌悪のどちらかを強制的に選択する形で行った

■結果

・感情の評価と色が知覚された感情の強さに及ぼす影響を評価するために、2(感情;怒り対嫌悪)× 7(色;1-7)反復測定分散分析(ANOVA):

・感情の主効果は、F(1, 83) 67.584, p 0.001, p 2 0.449で、怒りの評価(M 3.520, SE 0.093)は、嫌悪の評価(M 2.783, SE 0.099)よりも概して高い

・色の主効果も見られ、F(6, 498) 36.655, p .001, p 2 .306

・有意な感情色の交互作用(F(6, 498) 40.455, p .001, p 2 .328)によって修飾

・顔の赤みが減る(緑になる)と、顔はより嫌悪感を持って知覚されるが、このパターンは色のレベルが最も低い(緑になる)場合にのみ最も顕著

 

実験2a

■顔の色(具体的にはCIELAB aの変化)が,驚きと恐怖が混在した曖昧な表情(どちらともとれる顔)に対する情動強度や情動分類に影響を与えるかどうかを検証

■参加者:116人の学生1(女性86人、平均年齢20.24歳、平均年齢1.19歳)

■結果

・2(感情;驚き vs. 恐怖)7(色;1-7)反復測定ANOVA:感情の主効果は、F(1, 112) 46.111, p .001, p 2 .292で、驚きの評価(M 2.705, SE 0.071)は、恐怖の評価(M 3.059, SE 0.077)よりも一般的に低い

・色の主効果も見られ、F(6, 672) 22.407, p .001, ηp 2 .167

・有意な感情色の交互作用(F(6, 672) 11.557, p .001, p 2 .094)によって修飾

・顔の赤みが増すにつれて、色値の中間点付近までは顔が怖くないと感じられた。中間点より上では逆のパターンが現れ、顔の赤みが増すほど恐怖感が強くなることがわかった

 

実験2b

■実験2aから被験者は恐怖を低覚醒状態(顔面の赤みが減少した場合)と高覚醒状態(顔面の赤みが増加した場合)のいずれかとして概念化しているのではないかという仮説を立てた

■参加者:95名の学生(66名の女性、平均年齢21.57歳、平均年齢4.35歳)

■結果

・7水準(色;1-7)の反復測定ANOVA:色の主効果は,F(6, 564) 43.735, p .001, p 2 .318,有意な線形傾向は,F(1, 94) 70.361, p .001, p 2 .428であり,顔の赤みが増すにつれて,顔がより興奮していると認識されることがわかった

 

実験3

■顔の色(具体的にはCIELABのaとbの両方の変化)が,涙を流している悲喜こもごもの表情に対する,知覚された感情強度の評価や二分法による感情分類に影響を与えるかどうかを検証

・過去の研究で,幸せは顔の赤み(a)と黄色み(b)の両方に関連し,悲しみは顔の緑み(a)と青み(b ; Thorstenson et al., 2018)の両方に関連することが示されている

■参加者:学生88名(女性62名、Mage 20.25、SDage 1.33)

■結果

・2(感情;悲しみ対幸福)7(色;1-7)反復測定ANOVA:感情の主効果は、F(1, 52) 51.471, p 0.001, p 2 0.497で、悲しみの評価(M 3.953, SE 0.139)は、幸せの評価(M 2.708, SE 0.138)よりも一般的に高い

・色の主効果は、F(6, 312) 1.680, p .125, p 2 .031と、有意ではなかった

・悲しみの評価では、色の主効果、F(6, 510) 2.869, p .009, p 2 .033が見られ、有意な線形傾向、F(1, 85) 11.173, p .001, p 2 .116が見られた:具体的には、顔の色の値が小さくなる(緑や青になる)ほど、顔は悲しいと感じられた

・福感についても、色の主効果はF(6, 318) 5.035, p .001, p 2 .087で、有意な線形傾向はF(1, 53) 17.293, p .001, p 2 .246だった:顔の色の値が大きくなるほど(つまり、赤みや黄色みが増すほど)、顔は幸せそうに知覚されることがわかった

 

コメント

顔色が感情表現(表情)の曖昧性を緩和するという直観に即した研究。個人的には、悲しさ対幸せに興味があったけど、めちゃくちゃ天井効果であまり、いい結果ではなさそう。。

 

論文

Thorstenson, C. A., McPhetres, J., Pazda, A. D., & Young, S. G. (2021). The role of facial coloration in emotion disambiguation. Emotion. Advance online publication. https://doi.org/10.1037/emo0000900