コーヒー1杯の暖かさ

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漢詩の美の体験とその神経基質(Gao & Guo, Frontiers in Psychology, 2018)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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漢詩の美の体験とその神経基質(Gao & Guo, Frontiers in Psychology, 2018)

結論から言うと、漢詩を鑑賞すると,散文を読む場合と比較して,左下眼窩前頭皮質(OFC),両側島皮質,左房状体,左補足運動野(SMA),左腹膜前回の活性化が高まる

 

背景

■神経美学の分野は、美学の神経的裏付けに関する疑問に答えるために発展(Pearce et al.2016)

・実証研究の大半は視覚と聴覚の領域を調査するために行われており、文学鑑賞などの他の分野の研究はあまり行われていない

■代表的な研究がいくつか報告

・Zemanら(2013)は、詩と散文による脳の活性化を研究

・O'Sullivanら(2015)は、文学的意識の神経基盤を研究

・Bohrnら(2013)は、読書が暗黙の美的評価を伴うかどうかを明らかにしようとし、この分野の先駆的な研究を行った

・被験者は明示的に評価することなく、いくつかのことわざを読むように求められた:その結果、左前頭葉、左内側側頭回、左上側頭回、両側後頭葉、両側腹膜前野の大部分が、読書活動中に活性化

・特定の脳領域と美の感情との間に相関関係があることも確認:右尾状核、前帯状皮質、小脳など

・NCPMでは、詩文の特徴が異なれば、異なる神経ネットワークや認知感情的プロセスが活性化されると仮定

■島皮質は美の感情に関わる重要な脳領域

・美的知覚の「内臓性」を反映(Cupchik et al., 2009; Brown et al., 2011; Flexas et al., 2014)

 

方法

■参加者:28名(平均年齢:19歳、範囲:18〜21歳、女性14名、男性14名)

■刺激

・詩と散文の2種類:それぞれの刺激は25項目で構成

・中国の有名な詩の一種である「斉燕寿」(七字熟語)を選んだ

・厳格な音調パターンと韻律があり、韻律の階層がよく構成(Li and Yang, 2010)

・この特徴のおかげで,すべての詩の単語数,文の長さ,音調パターン,リズム,韻が同じになるようにすることができる

・実験に使われた詩は、中国文学教育から選ばれたもので、すべての参加者にとって同じようになじみのあるもの

■手続き

・刺激は12秒間提示された

・刺激が提示されている間、被験者は静かに刺激を鑑賞することに集中するように求められた

・被験者に美的判断課題を課し、被験者には2秒以内に評価をしてもらった

 

結果

■行動

・漢詩と散文の美的判断評価スコアの平均値は、それぞれ3.58±0.64と1.33±0.70(t = 61.49, p < 0.0001, Cohen's d = 3.35)

■Brain

・漢詩>Rest:両下前頭回、両下側頭回、左下頭頂回、左海馬傍回、左舌状回、両後頭葉、左房状回、両島皮質、左補足運動野、左腹膜前野に有意な活性化

・漢詩>散文:左下OFC、左fusiform、両側insula、左SMA、左precentral gyrusの活性化レベルが有意に高かった

 

考察

■詩は、言語と音楽の間にあるものとして、音楽に見られるような音韻的特徴を持つ

・詩の旋律や韻律も美的鑑賞に影響を与える(Obermeier et al. 2013)

・Bohrnら(2013)は、ことわざの読解時に、左前頭葉、両側の中側頭回、両側の上側頭回、両側の後頭葉、両側の中心前頭回の大部分が活性化されることを報告

・Zemanら(2013)は、詩と散文の両方を読むことで、左下前頭回、左腹膜前部回、左中側頭回、両側中後頭回、左中房状皮質が活性化されることを示した

・今回の研究でも、同じ領域が活性化

■漢詩を読むときには、両側の後頭葉が強く活性化

・脳が詩から視覚的な刺激を受け、美しい視覚対象に強い視覚的注意を誘導できることを示している(Cela-Conde et al. 2004)

・漢詩を鑑賞するプロセスには、少なくとも、視覚的な単語の認識、文章の読解、詩の意味的解釈が含まれる

・Kringelbach (2005) によって導入された価値観処理の仮説は、内側OFCはポジティブな価値観と関連し、外側OFCはネガティブな価値観と関連

・島皮質の左側はポジティブな感情の評価と関連し、右側はネガティブな感情の評価と関連している(Craig, 2005, 2010; Tsukiura and Cabeza, 2011)

・Lederら(2004)は、島皮質が「継続的な情動評価」に関与していることを示唆

 

コメント

神経美学の論文としてはとてもシンプルで、結果も王道な脳領域が明らかにされている感じ。詩のBrain研究以外と読めていなかったなあと反省。ことわざのやつも。

 

論文

Gao, C., & Guo, C. (2018). The experience of beauty of chinese poetry and its neural substrates. Frontiers in Psychology, 9, 1– 9. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01540