コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

ポジティブな畏敬と脅威的な畏敬が規範違反に対する態度に与える影響(Sawada & Nomura, Frontiers in Psychology, 2020)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

  

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1度読んだことある同期の論文だけど、確認したいことがあり、読み直し。

 

ポジティブな畏敬と脅威的な畏敬が規範違反に対する態度に与える影響(Sawada & Nomura, Frontiers in Psychology, 2020)

結論から言うと、 肯定的な畏敬は他者の規範違反に対する寛容性を高めるのに対し、驚異的な畏敬はそうではない

 

背景

■社会規範は、自然災害や紛争などの生態的・歴史的脅威との相互作用の中で、社会や対人関係を維持するために重要な役割を果たしている

・このような脅威にさらされてきた国や地域は、文化がタイト(規範が強く、逸脱者に対して不寛容)

・文化の窮屈さが幸福度の低下と関連すること(Harrington et al., 2015)や、規範違反に対する嫌悪感が時に攻撃性に転じること(Bondü and Richter, 2016)を考えると、規範違反に対する態度を自由化することの重要性が仮定された

■ポジティブな畏敬の念

・ポジティブな畏敬は、広大な世界の中で自分は些細な存在であるという感覚、すなわち「小さな自分」を誘発し、攻撃性を減少させ、一般の人々に対する寛大さと向社会的行動を促進する

・畏敬を感じやすい参加者は、経験に対する開放性の人格特性のスコアが高いことを報告

・このことは、ポジティブな畏敬が規範違反に対して受容的な効果を持つことを示唆

・おそらく文脈に応じて、人々の注意を既存の自己や参照物から解放し、すべてのものとつながっているという感覚を高める

■脅威的な畏敬の念

・自然災害(津波や竜巻など)やアドルフ・ヒトラーなどの悪名高い独裁者によって誘発されることが多い恐怖の香りがする畏敬である「脅威的畏敬」

・畏敬は、その価値観によって一般的な効果と特異的な効果を持つ

・脅迫的な畏敬は、肯定的な畏敬とは異なり、すべてのものとのつながりの感覚を高めるものではないため、畏敬の種類によって、他者の規範違反に対する寛容さへの影響が異なる可能性がある

・先行研究で示唆されているように、脅迫された畏敬は、規範違反に対する厳格な態度を強化する可能性がある

■肯定的な畏敬は、偉大な指導者、科学的知識、宗教によって誘発されることが多いため、tightness-loosenessモデルの社会政治的要因(政府、教育、宗教、精神性など)と関連している可能性

 

方法

■参加者:日本語を母語とする学生50名(女性22名、平均年齢=21.32歳、SD=2.04)

■手続き

・参加者全員が、ナレーターが自動車工場を説明する2分間のニュートラルな映像を見た

・中立的な映像を見た後,感情状態,知覚された自己の大きさ,自分のコミュニティとのつながりの感覚,社会的規範違反に対する態度,経験に対する開放性,良心性などの尺度の測定を完了した(プレテスト)

・脅威を伴う自然のクリップのモンタージュで構成された2分間の脅威的な畏敬のビデオの2つのビデオのいずれかを無作為に割り当てた

・畏敬のビデオを見た後、感情状態、知覚された自己の大きさ、自分のコミュニティとのつながりの感覚、社会的規範違反に対する態度、経験に対する開放性、良心性などの尺度を同じように記入(ポストテスト)

 

結果

■感情

・肯定的な畏敬の念を持つ条件の参加者は、ポストテスト(肯定的な畏敬の念を持つクリップを見た後)において、「畏敬」と「畏怖」の両方の感情を強く持つことが確認された(「ike」:M = 4.92, SD = 1.86; 「ifu」:M = 4.25, SD = 1.77)

・脅迫された畏敬」条件の参加者は,ポストテスト(脅迫された畏敬のクリップを見た後)で,「ifu」と「ike」の両方の強い感情を経験した(「ifu」:M = 5.54, SD = 1.25; 「ike」:M = 3.75, SD = 2.17)

■自己の大きさや社会的繋がりなど

・肯定的な畏敬の念を持つ参加者は、事前テスト(M = 3.96, SD = 1.23)に比べて、事後テスト(M = 3.42, SD = 1.61)では、より小さな自己サイズを知覚することが確認された(F(1,23) = 6.76, p = 0.016, η2p = 0.23)

・脅迫された畏敬の条件を持つ参加者は、ポストテストではプレテスト(M = 4.00, SD = 1.29)よりも小さな自己サイズを知覚した(M = 3.21, SD = 1.47)(F(1,23) = 7.24, p = 0.013, η2p = 0.24)

・「経験への開放性」と「良心性」の評価は、いずれの条件においても、テスト前とテスト後で差がなかった(Fs < 0.66, η2ps < 0.03)

・コミュニティへの参加に対する評価は、どちらの畏敬の念の条件においても、事前テストと事後テストの間に差はなく、Fs < 0.52, η2ps < 0.02

■規範違反に対する態度

・ポジティブな畏敬:テスト前(M = 4.95, SD = 0.33)よりもテスト後(M = 4.83, SD = 0.38)の方が、強い違反行為に対する寛容な態度を報告(F(1,23) = 6.92, p = 0.015, η2p = 0.23)

・適切な違反と弱い違反のシナリオに対する評価は、プレテストとポストテストの間で差がなかった(Fs < 0.50)

・脅迫的な畏敬:強い違反行為を描いたシナリオに対する不適切さの評価に関するANOVAを行ったところ、有意な効果は見られず、F(1,23) = 0.02, η2p = 0.00

 

コメント

同期の卒論?だけど、丁寧に計画されていてさすがだなあと思います。どうやって引用しようかと思って、読み直しました。

 

論文

Sawada, K., & Nomura, M. (2020). Influence of Positive and Threatened Awe on the Attitude Toward Norm Violations. Frontiers in Psychology, 11(February), 1–7. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.00148