コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

Be Here Now: 不確実性の認識が「味わう」ことを高める(Gregory et al., Emotion, 2021)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます!

  

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Be Here Now: 不確実性の認識が「味わう」ことを高める(Gregory et al., Emotion, 2021)

結論からいうと、さまざまなサンプルと方法論を用いた3つの研究から得られた知見は、不確実性があるからこそ、人々は現在のポジティブな状況を味わうことができるということを示した。

 

背景

■Savoring

・味わうことは、ポジティブな感情を意図的に高めることを伴う感情調整の一形態

・個人がポジティブな感情をアップレギュレーションする方法を理解することの重要性を示す研究が増え続けている(Fredrickson, 2013; Pressman et al., 2019)

・この一連のプロセスは一般的に「味わう」と呼ばれている

■情動調節のプロセスモデルによると、味わうことは、

(a)ポジティブな状況を求めること

(b)その快感をさらに高めるために特定の行動をとること

(c)そのポジティブな特徴に意図的に注意を払うこと

(d)評価を変えること

(e)行動反応を変えること

・これらすべてが利用可能なポジティブな刺激を最大限に活用することを目的

・例えば、お菓子を食べるという感覚的な体験に時間をかけて没頭することで、そのような体験から得られるポジティブな感情を高めることができる

■ポジティブな経験を精緻化して長持ちさせることは、精神的にも身体的にも多くのメリット

・幸福感を促進し(Smith & Bryant, 2017)

・自尊心を高め(Wood et al., 2003)

・幸福感を高め(Lambert et al., 2013)

・うつ病を軽減することが示されています(McMakin et al. )

・より多くの人生の意味(eudaimonic wellbeing; Chadwick, 2012)とも関連

・加齢のストレス(Smith & Bryant, 2019)や戦闘への曝露(Sytine et al., 2018)など、深刻なものから日常的なものまで、ストレス要因に対する緩衝作用も含まれる

・ポジティブな感情に対する味わうことの利点は、ストレスの有害な炎症作用を打ち消すなど、複数のメカニズムを通じてより良い健康と関連(Ong, 2010; Stellar et al.、2015)

■不確実性と味わうこと 

・不確実性はどこにでもあるが、一般的には不快なものであり、世界を秩序立った制御可能なものとして見たいという人々の願望を覆す

・社会世界の予測可能性が脅かされると、混沌と不確実性が不安と苦痛を生み出す

・このような悪影響を緩和するために、人は、物質的または社会的資源を追求したり(Piff et al., 2012)、社会的判断の確実性を高めたり(Hogg, 2007)、さらには暴力的な宗教的狂信に関与したり(McGregor et al., 2008)するなど、さまざまな感情調整や対処戦略をとることがある

■将来の報酬が不確実な場合、人は目先の報酬を優先することが示されている

・マシュマロテスト

・不確実な状況にある子どもは,より確実な状況にある子どもに比べて,その瞬間の喜びを優先し,より早くマシュマロを食べることを示した

・知覚された終わりが現在を味わうことをどのように増加させるかに言及

・大学の卒業式を控えていたり、故郷を離れることを考えていたりする参加者は、友人関係の将来が不確かであることを示す手がかりを与えられていない参加者に比べて、友人を大切にしていた

・年齢を重ねて人生の終わりが近づいていることを意識するようになった個人が、注意喚起(例えば、Mather & Carstensen, 2003; Reed et al., 2014)、動機づけ(例えば、Haase & Shiota, in press)、対人関係プロセス(例えば、Verstaen et al., 2020)を通じて、ポジティブな感情をアップレギュレートすることを記録した文献は数多くある

■人は不確実性に直面したとき、安全で楽しい経験に焦点を当てることで不確実性を管理することがわかっている

・頼りにならない大切な人がいる場合には、大切な持ち物の魅力が増す

・柔らかい触覚という具体的で既知のポジティブなものを求めることで、不確実性の認識を低下させることができる

・「味わう」という行為は、安心して楽しめる体験に焦点を当てていることから、不確実性を感じている人は、その後、現在を味わうことで、一貫性や秩序の感覚を取り戻すことができる

 

研究1

■大規模な経験サンプリング法を用いて、不確実性に対する日常的な認識が、現在の瞬間をより深く味わうことにつながるかどうかを検証

■方法

・参加者:大規模な体験サンプリング研究である「58 Seconds」研究プロジェクトに参加した6,680人(平均年齢=29.33歳、標準偏差=9.52歳、女性71.1%)

■手続き

・簡単な調査で幸福度を評価できる無料のモバイルアプリケーション「58 Seconds」をインストールし、本研究に志願

・参加者には、年齢、性別、居住国、希望する調査時間(デフォルトは週7日、午前9時から午後10時まで)、希望する1日の調査依頼数(デフォルトは4、最小は1、最大は12)を尋ねた

・3つの質問セットを設計:今どれくらい不確実?今をどれくらい味わっている?どれくらい幸せ?

・Xkの項で表される共変量として、曜日(土曜日に味わう傾向が強いと考えられる)、時間帯(夕食時に味わう傾向が強いと考えられる)、過去の幸福度(混沌とした時期の後に味わうことは、単純な気分回復メカニズムで説明できると考えられる)

■結果

・不確実性は、その経験の嫌悪的な性質と同様に、その瞬間を味わうことと負の関係にあった(b = -.27, 標準誤差 [SE] = 0.01, 95% 信頼区間 [CI: -.27, -.25], t = 22.13, p , 0.001)

・しかし、人は不確実性に対処するために「味わう」ことを利用するのではないかという考えに基づき、時間差回帰を行ったところ、混沌とした状況を認識することで、次の測定時の「味わう」ことが予測された(b = .12, SE = .01, 95% CI [.09, .14], t = 9.48, p , .001)

・この関係は、曜日、時間帯、以前の幸福度をコントロールしても、引き続き有意であった(b = .16, SE = .04, 95% CI [.09, .14], t = 4.10, p , .001)

・知覚された不確実性と味わうことの間の関連性は,両者が近接して測定されたときに最も強くなると考えられる:統計的には有意ではなかったが、相互作用項は負の値を示し(b = -.004, SE = .003, 95% CI [-.01, .002], t = 1.25, p = .21)、時間の経過とともに不確実性と嗜好の関連性が低下することがわかった

・タイムラグ持続時間の上位10%(7.80時間以上、n = 912)に限定すると、注目すべき関連性はもはや有意ではなかった(b = .01, SE = .03, 95% CI [-.04, .08], t = .57, p = .56)

 

研究2

■不確実性の認知が、確実性や予測可能性の認知と比較して、自己申告による味わいの傾向を高めるかどうかを実験的に検証

■参加者:最終的なサンプルは397人

■手続き

・参加者は、(a)不確実で予測不可能な未来を描いたビデオ、(b)確実で予測可能な未来を描いたビデオ、(c)電車の歴史に関する対照的なビデオ、の3つの条件に無作為に割り当てられた

・実験条件(a)と(b)では、参加者は表向き、人々の人生における出来事がどれだけ予測不可能か、あるいは予測可能かということについて、1週間にわたる科学会議の結論を聞いた(Tullett et al.2015に基づく)

・「私たちの人生に起こる出来事は大部分がランダムである」(不確実性条件)、または「私たちの人生に起こるすべての出来事には根本的な秩序、つまり構造がある」(確実性条件)と参加者に確信させることを目的

・ビデオ鑑賞後、参加者は、現在の感情を0(よりネガティブ)から100(よりポジティブ)までの1項目のスライダーと、3つの「味わい」の測定を行った

■結果

・カオスコントラスト効果は有意であり(b = .07, 95% CI [-.008, .16], z = 1.76, p = .039)、カオス条件が他の2条件と比較して味わいの増加をもたらしたことが示された

・不確実性条件は、よりネガティブな感情と関連しており、不確実性と感情は、3つの味わいの従属変数と正の相関を示した(感情と味わいの信念:r = 0.31, p , 0.001、他のシナリオでの味わい:r = 0.09, p = 0.057)

 

研究3

■参加者:カリフォルニア州北部の都市部の交通量の多い交差点を歩いている201人

■手続き

・集団ではなく、一人で歩いている人にのみチラシを配り、適合性や社会的影響の可能性を排除

・主な従属変数は、「立ち止まってバラの香りをかぐ」かどうかで、「立ち止まってバラの香りをかぐ」という一般的な慣用句が前提(スローダウンして人生を楽しみ、今の瞬間を味わう)

・コーダーは、現在の状態(予測不可能条件:n=102、一定条件:n=99)、一日のうちの時間、参加者の認識された性別(女性46.2%)、参加者の認識された年齢(3つの年齢グループ:35歳以下65.6%、36~55歳21.8%、55歳以上12.4%)、参加者がバラの香りを嗅ぐために立ち止まったかどうか、そして、社会的影響効果を考慮して、香りを嗅ぐために立ち止まった場合、何人の人が同時にバラのテーブルに立っていたかを記録

■結果

・人生は予測不可能である」というメッセージを受け取った参加者は、「人生は一定である」条件の参加者(それぞれ26.4%と11.1%)に比べて、テーブルの上のバラの香りを嗅ぐために立ち止まるという味わい深い行動をとる可能性が、知覚年齢と性別を考慮しても有意に高かった(ロジットb = 1.04, 95% CI [.24, 1.83], z = 2.58, p , 0.001)

 

コメント

とても面白いし、丁寧に計画実行された研究と思った。いろいろ真似したい要素があって、夢が広がります。

 

論文

Gregory, Andrew, Quoidbach, Jordi, Haase, Claudia & Piff, Paul. (2021). Be Here Now: Perceptions of Uncertainty Enhance Savoring. Emotion, Advance on-line publication. Retrieved from http://ovidsp.ovid.com/ovidweb.cgi?T=JS&PAGE=reference&D=paovftw&NEWS=N&AN=00130470-900000000-98716. https://doi.org/10.1037/emo0000961