コーヒー1杯の暖かさ

心理学を研究する大学院生が、研究もそこそこちゃんとやりながら、日本の教育に一石を投じます。

驚き、好奇心、困惑:知覚的感情と知識探索(Vogl et al., Emotion, 2020)

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みなさんこんにちは!

微かに混じり合う教育と心理学とアートを考えていますじんぺーです。

今日も論文を読んでいきます。

 

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驚き、好奇心、困惑:知覚的感情と知識探索(Vogl et al., Emotion, 2020)

結論から言うと、達成感感情は正確さ(答えの正しさ)と関連しているのに対し、認識論的感情は高確信エラー(自信のある答えが間違っていること)と関連しており、認知的不一致を生じさせていることがわかった

 

背景

■思いがけないことを知ったときの驚き,疑問が解決しないときの好奇心,矛盾する情報に遭遇したときの混乱などは,典型的なエピステミックな感情の例

・エピステミックな感情は,自己や世界に関する知識を獲得するための主要な原動力 (Brun, Doğuoğlu, & Kuenzle, 2008)

・これらの感情は,認知タスクや認知活動の知識生成の質に関連(Morton, 2010)

・学習,概念変化,認知パフォーマンスに決定的に重要であると考えられている(Pekrun & Stephens, 2012)

・驚きや好奇心など、いくつかのエピステミックな感情に関する研究は古くから行われてきたが(Berlyne, 1954; Ekman, 1999)、これらの感情の研究には顕著な欠陥

・混乱など,驚きや好奇心以外のエピステミックな感情に関する実証的な証拠は少なく,結論は出ていない

・いくつかのエピステミックな感情を同時に検討して、それらの共通の先行要因と結果を探った研究はわずかしかない

■エピステミックエモーション

・epistemic emotions(エピステミックな感情)」という言葉は、もともと哲学者が作った造語で、批判的な反省や探求を動機づける感情状態を意味している

・Stephens (2012) は、この考え方に沿って、「エピステミックな感情」を「知識や知識の生成に関連する感情」と定義

emotions that relate to knowledge and the generation of knowledge

・エピステミックな感情は、認知的不整合を生み出す矛盾した情報によって促される

・認知的不整合は、タスクの情報が事前の期待や信念から外れている場合や、タスクに関連するフィードバックが自分の信念が間違っていることを示している場合に生じる

・高確信度エラー(正解だと確信していたにもかかわらず、不正解となったトリビア問題に対する予期せぬフィードバック)が引き起こす驚き、好奇心、困惑に注目

・悔しさや喜びなどの感情とは異なり、これらの3つの感情は認識論的な感情であり、認識論的な感情にとって特に重要な先行要因(認知的不整合など)と結果(知識の生成など)に関連

・驚きは、高確信度のエラーに対する最初の感情的反応であり、好奇心や混乱を引き起こし、その後の知識の探求を促進すると予想

・高い信頼性のエラーによって好奇心が引き起こされることを予想した

・混乱が生産的であるためには、不調和が最終的に解決されることが重要である(D'Mello & Graesser, 2014; D'Mello et al., 2014)

・不調和を解決するための一つの可能性は,新しい知識の探求である(Berlyne,1954, 1960)

・達成感情は,達成活動とその成功・失敗の結果に関連する(Pekrun, 2006)

 

研究1

■参加者:ドイツの大学に通う122名の参加者(女性67名)

■材料

・使用したトリビア課題は、様々な情報源から収集した20の一文から構成されており、いくつかの領域における一般的な知識を利用

■手続き

・20個のトリビアの文を提示され、その文が正しいか正しくないかを示すように指示された

・判断後、参加者は自分の答えにどれだけ自信があるかを6段階のリッカート尺度(1=非常に不確か、6=非常に確実)で示してもらった

・参加者は、自分の答えの正確さについて、すぐにフィードバックを受けました(「あなたの答えは正しい」対「あなたの答えは間違っている」)

・その時の気分を評価してもらいました。Epistemic Emotions Scales(Pekrun et al.2017)の短い1項目の尺度を用いて,参加者は自分がどれだけ驚いたか,好奇心を持ったか,混乱したかを5段階のリッカート尺度で評価した(1=全くない~5=非常に強い)

・トリビア問題の試行が終了した後,参加者には不正解となった文のリストが提示

・これらの文の正解を探る動機を測定するために,不正解だった文のそれぞれについて,正解を探る動機を5段階のリッカート尺度で回答してもらった(「不正解の説明を受けたいという気持ちはどのくらい強いですか」)

■結果

・正確さは,3つの感情すべてを負に予測しており,エラー(不正解)によって感情が生じることが示唆

・正確さと確信度の交互作用は3つの感情の強い負の予測因子であり、確信度の高い誤りがエピステミックな感情を引き起こすことを示していた

・好奇心と混乱は探索意欲の正の予測因子

・自信はモチベーションに直接効果を与えるとともに、驚きと好奇心、驚きと混乱を媒介とした間接効果を与えた

 

研究2

■結果変数として探索動機は含まれていましたが、実際の探索行動は含まれていなかった

■参加者:ドイツの大学に通う373人の参加者(女性245人)

■手続き

・デザインには研究1から2つの修正

・フィードバックを受け取った後、参加者は、誇りと恥を感じる度合いを追加で評価したこと

・べてのトリビア問題の試行後に参加者の探索意欲を尋ねる代わりに、否定的なフィードバックを受けた後に、毎回、自分の答えが不正解だった理由の説明を実際に要求し、直接読む機会を与えたこと

■結果

・確信度の高いエラーは驚きを正に予測した

・「驚き」は「好奇心」と「混乱」を正に予測した

・「誇り」は「自信喪失」とは無関係であり、これは不正解後の「誇り」のフロア効果によるものと考えられる(M = 1.06; SD = 0.20)

・好奇心は探索を正に予測したが、「混乱」は探索を有意に予測しなかった

 

研究3

■情報を要求する複数の機会からなる、より広範な探索行動の測定を行った

・また,不正解後だけでなく正解後にも探索行動を調べることで,パフォーマンスフィードバック,感情,その後の探索の関係をより完全に把握することができた

■参加者:ドイツの大学に通う125名の参加者(女性90名)

■手続き

・参加者には、正解と不正解の両方の後に、説明を要求して読む機会が与えられた(「今、説明を見たいですか」[No vs. Yes])。要求された場合は、説明が表示された

・説明が表示された後、さらに情報が欲しいかどうかを尋ねられた(「このトピックに関するより多くの情報を受け取りたいですか」[No vs. Yes])

・参加者が情報を要求した回数(質問ごとに0〜3回)を探索と定義

■結果

・研究1と2の結果と同様に、正確さは3つの認識感情すべてを負に予測

・正確さ×確信度の交互作用は3つの感情の負の予測因子であり、確信度の高い誤りがエピステミックな感情を引き出すことが確認

・精度は誇りを正に,恥を負に予測

・精度×確信度の交互作用項は、誇りを正に予測し、恥を負に予測した:自信を持って正解した場合には、誇りがより強く体験され、参加者が自信を持って不正解した場合には、恥がより強く体験されることを示している

 

コメント

エピステミックな感情についてはあまり詳しくないけど、とても分かりやすくまとめられた論文。混乱によって探索が予測されるかどうかは効果弱そうだけど、曖昧性への態度によって調整されていそうな感じ。

 

論文

Vogl, E., Pekrun, R., Murayama, K., & Loderer, K. (2020). Surprised–curious–confused: Epistemic emotions and knowledge exploration. Emotion, 20(4), 625–641. https://doi.org/10.1037/emo0000578