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タイトルの一貫性のなさは、違反のない絵画でのみ重要である(Szubielska et al., Poetics, 2021)

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みなさんこんにちは。

じんぺーです、今日も論文を読んでいきます。

 

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タイトルの一貫性のなさは、違反のない絵画でのみ重要である(Szubielska et al., Poetics, 2021)

結論から言うと、意味違反のある絵画とない絵画の複製を、一貫したタイトル付き、支離滅裂なタイトル付き、タイトルなしの3つの条件のいずれかで鑑賞結果、タイトルの支離滅裂さは、意味違反のある絵画の評価には影響しなかった。

 

背景

■挑戦的なアートがどのように経験されるか

1.要求の高いアートに対する鑑賞者の反応

・処理のしやすさがアートの鑑賞に関係するという流暢性理論の予測に反した(Reber, Schwarz & Winkielman, 2004)

・要求の高いアート作品は、その処理が流暢性から遠く離れていても鑑賞できることを示している(Jakesch & Leder, 2009; Jakesch, Leder & Forster, 2013; Muth & Carbon, 2013; Muth, Hesslinger & Carbon, 2015; 2018)

・挑戦的なアートの魅力の少なくとも一部は、洞察に続く努力的な処理こそが根底にあるのではないかと提案(Jakeschら、2013)

・アートの鑑賞に「Aha体験」は必須ではなく、鑑賞者がそれを期待するだけで十分(Muth & Carbon, 2013; Muth et al., 2015)

・課題が大きすぎると、鑑賞者は混乱して作品から離れてしまうという悪影響があります(Jakesch & Leder, 2009)

2.課題の性質

・MuthとCarbon(2016)は、SeIns(Semantic Instability)という造語で、ビジュアルアートに見られるセマンティック違反のさまざまなバリエーションを表現

・構文的にも意味的にも違反している物体が注目を集めることがわかっている実世界のシーンの文脈で研究 (Biederman, Mezzanotte & Rabinowitz, 1982; Võ & Henderson, 2009; Võ & Wolfe, 2013)

・正しい場所にあるありえない物体は意味的な違反として分類され(例:ラップトップの隣にある固形石鹸)、一方、間違った場所にあるもっともらしい物体は構文的な違反として分類(例:ラップトップ画面上のコンピュータマウス)

・Markey, Jakesch and Leder (2019) は、これらの定義がアートにうまく適用できることを発見

・芸術における意味的・統語的な違反は関心を引き起こし(Pietras & Ganczarek, 2018)、視聴者はこれらの違反がある絵画をより矛盾していて、曖昧で、複雑であると評価する(Ganczarek, Pietras & Rosiek, 2020)

■矛盾

・シーンに非典型的なオブジェクトが含まれていたり、シーン内のオブジェクト間の関係が異常であったりする場合に、画像が意味的違反を示す

・作品とそのタイトルの間の矛盾

・絵画に描かれていない対象物や特徴を表現している場合、タイトルは支離滅裂であると定義

■作品評価におけるタイトルの影響

・タイトルが芸術作品の意味付与や特定の解釈を容易にすることを示す経験的な証拠(Franklin, Becklen & Doyle, 1993; Kapoula, Daunys, Herbes & Yang, 2009; Mastandrea & Umilta, 2016)

・タイトルが受け手が作品に意味を与える際にどの程度助けになるのか、あるいは妨げになるのかを説明

・近現代アートの理解や好感度に対するタイトルの影響については、明確な結果が出ていないことが報告

・一方で、いくつかの研究では、記述的に意味的にマッチしたタイトル(つまり、絵画で見られることを簡潔かつ端的に記述したもの)の影響が大きく、タイトルを知ることで、タイトルのない美術作品の対照条件と比較して、鑑賞者の好感度および/または理解度が向上したとされている

・いくつかの研究では、説明的で捏造されたタイトル(Jucker et al., 2014; Millis, 2001)やオリジナルのタイトル(Szubielska, Imbir & Szymańska, 2019; Szubielska & Sztorc, 2019も参照)を知っていても、比較的無名の現代アーティストが制作したアートの美的鑑賞や主観的理解には影響しなかった

・ランダムなタイトル付けの場合は説明的なタイトル付けの条件よりも理解度が低く、具象的な芸術作品(主にイラスト)が精緻な/メタファー的なタイトルと共に提示された場合には、タイトルなし、ランダムなタイトル、説明的なタイトルの条件と比較して、美的判断が高まることを示した

・Gerger and Leder (2015)によっても得られており、一致するタイトル(および無題の条件)は、特に抽象芸術において、一致しないタイトルの条件よりも高い好感度が得られている

■個人差

・芸術鑑賞に強く、肯定的な影響を与える構成要素として、よく研究されているのが、経験に対する開放性(Openness)

・開放的な人は、より積極的な美的態度を示し、芸術の消費に関心を持ち(Chamorro-Premuzic, Furnham & Reimers, 2007; McManus & Furnham, 2006)、芸術に対してより深い反応を示す(Silvia & Nusbaum, 2011)

・オープンネスは、挑戦的な近代・現代アート作品に対するポジティブな評価と関連(Fayn, MacCann, Tiliopoulos & Silvia, 2015; 2017; Feist & Brady, 2004; Furnham & Walker, 2001)

・反対ではあるが(Kossowska, 2003; Pelowski, Markey, Forster, Gerger & Leder, 2017, Wiersema, Van Der Schalk & van Kleef, 2012 も参照)、現代作品の鑑賞において重要な性格特性として、認知的閉鎖の必要性(NFC)

・現代アートは、様々な介入によって確実性を回避することが多いため(Gude, 2004参照)、曖昧さへの耐性がない人にとって、その受容は特に困難なものとなるはず

・高NFC者と低NFC者の違いは、写実的な絵画を提示したときには明らかではないが、非写実的な作品に評価を適用したときには明らかであり、高NFC者は低NFC者よりもこの種の芸術を理解し、好きではないことを示している(Ostrofsky & Shobe, 2015)

・Chirumboloら(2014)も同様の結果を得ており、閉鎖性の必要性は、具象画と比較して抽象画への暗黙の嗜好と負の相関があることを示している

 

方法

■参加者:18歳から53歳までの成人127名(うち66名は女性)

・3つの実験条件のいずれかに無作為に割り当て

(1)絵画とタイトルが一致している(n = 42, Mage = 24.98 years, SD = 6.01, 23 women)

(2)絵画とタイトルが一致していない(n = 42, Mage = 26.38 years, SD = 7.77, 21 women)

(3)絵画にタイトルを付けない対照条件(n = 43, Mage = 29.47 years, SD = 8.72, 22 women)

■材料

・現代絵画のデジタル複製40点(意味侵害があるもの20点、ないもの20点)

■手続き

・タイトル付きまたはタイトルなしの絵画40枚を10秒間ずつ鑑賞した

・絵画の理解度(終点:「絶対に理解できない」vs「絶対に理解できる」)と好感度(終点:「絶対に好感が持てない」vs「絶対に好感が持てる」)を1〜7のリッカート尺度で逐次評価

■個人特性尺度

・参加者は2つの質問票に一定の順序で記入するよう求められた

・NEO Five Factors Inventory(NEO-FFI。Costa & McCrae, 1992; Polish adaptation by Zawadzki, Strelau, Szczepaniak & Śliwińska, 1998)

・Need for Cognitive Closure Scale(NCCS: NCCS: Webster & Kruglanski 1994; ポーランド語版: Kossowska, Hanusz & Trejtowicz, 2012)

 

結果

・参加者がすでに知っている絵画に対する評価をすべての分析から除外:評価された絵画の総数の0.55%に相当

・NFCのレベルとオープンネスの間の全体(N = 127)のピアソンの相関係数を計算:この相関は負で、統計的に有意 r = -.25, p = 0.005

■好感度と理解度に関する2つのマルチレベル分析

・以下の固定効果を設定:開放性スコア(NEO-FFIのポーランド語版における「経験への開放性」サブスケールのスコア、NFCスコア(Need for Cognitive Closure Scaleの短縮版の総合スコア

・意味論的違反(「違反なし」と「違反あり」にコード化されたカテゴリー変数)、群(3つのレベル「対照」、「首尾一貫したタイトル」、「支離滅裂なタイトル」のカテゴリー変数)

■好感度

・好感度は開放性によって有意に予測された(b = 0.02, SE = 0.01, β = 0.07, p = 0.049)

・意味論的な違反は、好感度を負に予測(b = -0.45, SE = 0.21, β = -0.13, p = 0.03)

・セマンティック違反とNFCスコアの間には、有意な相互作用(b = -0.03, SE = 0.01, β = -0.10, p = 0.04)

■理解度

・理解度は開放度によって有意に予測(b = 0.02, SE = 0.01, β = 0.09, p = 0.03)

・意味上の違反は、理解度を負に予測(b = -1.67, SE = 0.21, β = -0.43, p < 0.001; 違反のある絵画ではM = 3.99, SE = 0.14、違反のない絵画ではM = 5.39, SE = 0.13)

・タイトルの支離滅裂さは、理解度を負に予測した(b = -1.19, SE = 0.19, β = -0.29, p < 0.001)

・意味侵害とタイトルの種類との間に有意な相互作用が見られた(b = 0.76, SE = 0.19, β = 0.15, p < 0.001):意味侵害のない絵画の場合には、支離滅裂なタイトルの効果が最大となることが示唆

 

コメント

タイトルと作品の曖昧性の交互作用を現代アートを対象に行っている実験。タイトルの曖昧性は認知的曖昧性で、作品の方は知覚(視覚)と認知の両方が混じっている感じ。

 

論文

Szubielska, M., Ganczarek, J., Pietras, K., & Stolińska, A. (2021). The impact of ambiguity in the image and title on the liking and understanding of contemporary paintings. Poetics, February. https://doi.org/10.1016/j.poetic.2021.101537