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散歩に出たドット:人間らしい動きで描かれた線が好まれる(Chamberlain et al., British Journal of Psychology, 2021)

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みなさんこんにちは。

じんぺーです、今日も論文を読んでいきます。

 

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散歩に出たドット:人間らしい動きで描かれた線が好まれる(Chamberlain et al., British Journal of Psychology, 2021)

結論から言うと、より自然と感じられる動作が好まれることも示されたが、それは美大生に限られていた結果もあった。

 

背景

■美的体験の身体化

・感覚運動による処理が視覚芸術の鑑賞に寄与するというもの

・Jackson Pollockの抽象表現主義作品の美的魅力は、彼の絵画が作成されたときのスプレーやドリップの動作に関連している

・「なでる」といった特定の動作をプライミングすると、同じ動作で作成された画像に対する好感度が高まる

▶静的な視覚芸術の美的鑑賞が行動知覚の美学と関連しているのであれば、ある描画動作は他の動作よりも美的に好ましいはず

・Humphries, Rick, Weintraub, and Chatterjee (2021)は最近、パーキンソン病患者では対照群に比べて抽象芸術における動きの知覚が低下することを示している

■人間らしい速度プロファイルを持つ動きは、単に実行しやすいだけでなく、知覚しやすいとされている

・アニメーション性(Troje & Westhoff, 2006)や意図性(Pelphrey, Morris, & Mccarthy, 2004)を示すものでもある

■自然な動作は、その静的な結果から識別することができる

・ロボットエージェントが描いた静的な絵と、微妙な運動の手がかりだけが異なる人間の絵を識別できることが示されている(De Preester & Tsakiris, 2014)

・人間らしい自然な動きの方がより流暢に処理されるため、好まれるべきであるとされている(Reber, Schwarz, & Winkielman, 2004; Topolinski, 2010)

▶自然な動きが視覚芸術の美的体験に影響を与えるかどうか,またどのように影響を与えるかを実証した研究はこれまでなかった

 

実験1

■3つのモデル

・MJモデル(Flash & Hogan, 1985):運動の選択をコスト最小化のプロセスと定義し,ジャークの2乗(加速度の1階微分)を最小化する

・SLモデル(Plamondon, 1995):ゴールに向かって動くプリミティブから複雑な手の動きを計算し、それぞれが非対称な「ベル型」の速度プロファイルで特徴づけられる

▶どちらのモデルも,絵を描いたり文字を書いたりするときの運動学をうまく捉えている

・均一モデル:不自然な描画動作を生成するために,動作の軌跡において速度が変化しないことを特徴とする

■参加者:ロンドン大学ゴールドスミス校の学生(n = 40; 19F; Mage = 24.21, SDage = 9.02)

■刺激:抽象的で様式化された平面的な曲面の3秒間のビデオクリップ(言語処理を避けるために,文字の形に似ていないように意図的にデザイン)

■手続き

・最初のブロックでは,参加者に3秒間の描画動作の動画をそれぞれ見てもらった

・各映像の後、参加者は、映像中の描画動作の動きをどの程度快いと感じるかをリッカート尺度で評価した(1=全く快くない、7=非常に快い)

・2つ目のブロックでは、参加者は1つ目のブロックと同じビデオを見ましたが、今度はビデオの中の描画動作の自然さをリッカート尺度で評価

・3つ目のブロックでは,参加者は,それぞれの描画動画の最後の静止フレームを3秒間提示された(n = 120)。提示後,被験者の半数は,絵が認識可能な文字や物体に似ているかどうかを評価するために,静止画像の意味性をリッカート尺度で評価した(1=全く意味がない,7=非常に意味がある)

■結果

・自然で人間らしい動作モデル(SLとMJ)の方が,均一なモデルに比べて快感と自然さの評価が高い

・快感・自然さの評価〜動作モデル+(1|被験者)+(1|動画)の混合効果モデル:

・被験者間のランダムな傾きとランダムな切片の間に高い相関があったため,被験者因子からランダムな傾きを削除(Bates et al.2015)

・快感評価には運動モデルの効果が有意にあり,SLとMJの両方が均一モデルよりも快感を感じた

・自然さの評価についても,完全モデルの方が固定効果のないヌルモデルよりも適合度が高い

・自然さと心地よさの評価に対する各ビデオのランダムな切片の値の間で相関:SLで同等のr(178)=0.53、p<0.001、相関の95%CI[0.41、0.63]。 32, 0.69]、MJ、r (178) = .46 p < .001, 相関の95% CI [0.24, 0.64]、均一、r (178) = .58, p < .001, 相関の95% CI [0.39, 0.73]の条件では、相関の大きさは同等

 

実験2

■実験2のデザインは、実験1と同じですが、被験者間デザイン:参加者の半数は自然さの判断のみを行い,残りの半数は描画ビデオの快さの判断のみ

■参加者:ロンドン大学ゴールドスミス校の学生の中から自発的に募集した(n = 40; 34F; Mage = 23.25, SDage = 3.94)

■結果

・心地よさの評価には,運動モデルの影響が有意に見られた.MJモデルはユニフォームモデルよりも快感を感じたが,SLモデルはそうではなかった

・自然さの評価に対する動きのモデルの効果は有意ではなかった

・相関の大きさは、シグマ・ローグナルで同等のr(178)=0.53、p<0.001、相関の95%CI[0.41、0.63]。 32, 0.69]、最小自転、r (178) = .46 p < .001, 相関の95% CI [0.24, 0.64]、均一、r (178) = .58, p < .001, 相関の95% CI [0.39, 0.73]の条件で、相関の大きさは同等であった

 

実験3

■実験3では,動きの自然さの暗黙的な尺度として時間知覚を用いた

・実験条件間の動きの自然さの違いを最大化しつつ,速度プロファイル以外のすべての視覚的特徴について条件間で描画動画を一致させるために,MJを一様なモデルではなく,逆最小ジャーク(IMJ)モデル(Dayan et al.2007)と比較

・自然で人間らしいMJの動きは,直線的な軌道ではスピードが上がり,曲線的な軌道ではスピードが下がる

・不自然なIMJの動きは,曲がった軌道に沿ってスピードを上げ,まっすぐな軌道に沿ってスピードを下げることで,ジャークを最大化

■デザイン:動きのモデル(MJ vs. IMJ)と、動きと映像の持続時間(1秒から2秒の間で等間隔に6段階)を用いて、2×6の被験者内要因計画を採用

■参加者:ロンドン大学ゴールドスミス校の学生の中から自発的に集められた(n = 32, 15F, Mage = 36.69, SDage = 12.58)

■刺激:6種類の持続時間(1,000、1,200、1,400、1,600、1,800、2,000ms)、20種類のユニークな形状の描画動作軌跡、2種類の動作モデル条件(MJ vs. IMJ)で240本の動画

■手続き

・時間的二分法課題

・主観的な基準持続時間に基づいて,これらの持続時間が相対的に「短く」見えるか「長く」見えるかによって,一連の持続時間を「二分」する

・描画動作の映像(継続時間1,000〜2,000ms)が表示され,参加者はボタンを押して,その映像がそれまでに見た他のすべての映像に比べて短かったか(「S」),長かったか(「L」)を選択

・時間的二等分課題を終えた後、被験者は240個の刺激すべてについて快感の評価を行った

■結果

・IMJ条件では真の平均持続時間(1,500ms)を下回り(M = 1,394.40, SD = 131.06),MJ条件では真の平均持続時間をわずかに上回った(M = 1,533.02, SD = 120.56)

・2つの条件における参加者のPSEには,t(29)=4.86,p<0.001,差の95%CI[80.26,196.97],d=0.89という有意な差

▶不自然な描画動作の持続時間は過大評価された。

・快感評価の分析では、実験条件の主効果、F (1, 30) = 21.65, p < 0.001, ηp2 = 0.42、持続時間の有意でない効果、F (1.63, 48.87) = 1.27, p = 0.29, ηp2 = 0.04、条件と持続時間の有意でない交互作用、F (3.71, 111.27) = 2.16, p = 0.08, ηp2 = 0.07

 

実験4

■自然な描画動作への嗜好が、線画そのものの美しさ、つまり線の太さで描画動作の自然さがわかるかどうかを調べた

・ペンで絵を描くとき、速くてまっすぐな動きの方が、遅くて曲がった動きよりも線が細くなる

■デザイン:被験者間因子(描画の専門性,2段階)と被験者内因子(動作モデル,MJとIMJの2段階)の混合デザイン

■参加者:ロンドン大学ゴールドスミス校の学生(n = 61, 35F; 29人の美大生(視覚芸術分野で3年以上の大学院教育を受けた者)

■刺激:MJおよびIMJの速度プロファイルを印象づけるために,静的な描画動作の結果の特性を操作し,速度の変化を線の太さの変化で表現した

■結果

・快:専門知識と動作モデルの間には有意な相互作用

・アーティストは,MJモデルで生成された映像をIMJ映像よりも高く評価したが,アーティストではないグループでは,両モデル間に差はなかった

・自然さ:動きのモデルの固定効果は有意であった

・自然さと静的な描画動作結果の美的評価に強い関連性があることが明らかになった。r(78)=0.62、p<0.001、相関係数の95%CI[0.46、0.74](図8)。この相関の大きさは、専門家では r (78) = .54, p < .001, 相関係数の95% CI [0.36, 0.68]、非専門家では r (78) = .62, p < .001, 相関係数の95% CI [0.46, 0.74]と同様

 

コメント

Chamberlainさんらの新しい研究。「自然さ」というものをさまざまな角度から切り取っていて、興味深い。自然さと流暢性の違いって何だろうって考えてた。

 

論文

Chamberlain, R., Berio, D., Mayer, V., Chana, K., Leymarie, F. F., & Orgs, G. (2021). A dot that went for a walk: People prefer lines drawn with human‐like kinematics. British Journal of Psychology, 1–26. https://doi.org/10.1111/bjop.12527