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The Curious Case of Threat-Awe: 理論的・実証的な再概念化(Chaudhury et al., Emotion, 2021)

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みなさんこんにちは!

じんぺーです。今日も論文を読んでいきます。

 

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The Curious Case of Threat-Awe: 理論的・実証的な再概念化(Chaudhury et al., Emotion, 2021)

結論から言うと、感情価の実証的な測定により、脅威-畏怖は畏怖と恐怖が一体となって感じられることが示された

 

背景

■threat-awe

・先行研究では、threat-aweを畏怖のネガティブな側面とみなしている(Danvers & Shiota, 2017; Gordon et al., 2017; Piff et al., 2015)

・threat-aweは畏怖と同様に向社会的であり(Piff et al., 2015)

・畏怖と同様に情報を処理し(Danvers & Shiota, 2017)

・畏怖と比較して幸福感を低下させる(Gordon et al., 2017)

・threat-awe(対畏怖)は、状況的コントロールが高いが、個人的コントロール、確実性、広大さ、快感の知覚が低いことが示された

・交感神経(闘争-逃走)反応を伴うより脅威的なものとして知覚

■threat-aweは畏怖の否定的な変種ではなく、畏怖と恐怖の混合感情であるという新しい説明を提案

・二値(ポジティブとネガティブ)の感情の経験は,一値(ポジティブまたはネガティブ)の感情と比較して,測定可能な混合感情の経験を構成する(Larsen et al., 2001)

・進化の観点からすると,異なる情動体験は異なる適応行動につながる(Lazarus, 1991)

・脅威と畏怖も、畏怖が持つ認知能力の増強という機能とは異なる適応機能を持つ可能性がある(Shiota et al., 2007)

■混合感情

混合感情とは、正反対の価値観を持つ2つの感情が同時に起こる経験と定義される(Larsen et al., 2001)

・混合感情は、以下のような1つ以上の尺度で評価できる

a)認知的評価のマッピング(Smith & Ellsworth, 1987; van Tilburg et al., 2019)

b)感情共起インデックス上などの感情の経験的測定(Ersner-Hershfield et al., 2008; Larsen et al., 2004)または二次元マトリックスであるEvaluative Space Grid(ESG)

■一つの感情のバリエーションが、一つのエリシターイベントによって誘発されることがある

・例えば、本物のプライドと傲慢なプライドは、「1つのプライド体験の報告」から生まれたり、親子関係においても、愛着愛と養育愛が明確に誘発されることがあったり

・一方で、一つの出来事が、ポジティブな感情とネガティブな感情を同時に引き起こすことはない

・同じ価値観の感情が共存することはあっても、反対の価値観の感情を高い強度で一緒に経験することはできないという経験的な証拠がある

■共通点

・恐怖体験は、畏怖と脅威の両方の感情と重要な共通点があります。畏怖は、恐怖体験と同じように、人を「一箇所に固まってしまう」(Griskevicius et al., 2010, p. 195)状態にする

・畏怖は自己概念に対して広大さの知覚を誘導し(Piff et al., 2015)、恐怖刺激も自分との関係で大きく知覚される

・Gordonら(2017)の知見に沿って、threat-awe(対畏怖)は、低い個人的コントロールと低い確実性と関連し、快感が少なく、知覚的に広がりや広大さが少ないと予測

・threat-aweの経験における畏怖の側面によって、恐怖よりも有意に快感が増し、より広大になる(畏怖の中心的側面)と予測

■仮説

1a) threat-aweはaweよりは less vast, and less pleasantである一方、より高い状況コントロールを持つ

1b) 恐怖より、高い状況コントロールを持ち、より広大で、快いものになる

2) ESG尺度のような価値観が混在する尺度では、threat-aweは恐怖よりも肯定的に評価され、畏怖よりも否定的に評価される

3a) threat-aweは、畏怖よりもリスクテイクの低下と関連するが、恐怖よりは関連しない

3b) リスク・テーキングに対する感情の効果は、個人的コントロールの評価によって媒介される

 

研究1

■threat-aweの評価プロファイルを「awe」「誇り」「幸福」の感情と比較することで、既存の知見を再現・拡張

■参加者:MTurkを通じて300人がオンラインで参加

■デザイン

・参加者は、4つの感情条件(threat-awe、awe、誇り、幸福)のいずれかに無作為に割り当てられた

・意図した感情を誘発するためのエッセイ作成課題を与えられた:「あなたが _____ と感じた具体的な時間や出来事の記憶を1つ思い出してください」

・感情体験中の認知的評価評価を評価する項目を提示:確実性,個人/他者/状況制御,個人/他者の責任,快感,努力,注意,広大さ

・書いた出来事の時の主観的な感情を、明確な単極性の感情の20項目の尺度で報告

■結果

・hreat-awe条件の参加者はawet(137)=18.51, p , 0.001, d = 3.14、誇りt(140)=17.29, p , 0.001, d = 2.91、幸福t(138)=18.83, p , 0.001, d = 3.18と比較して恐怖を感じた

・感情条件を独立変数とし,MEスコアを従属変数とする単変量ANOVA:感情条件の有意な効果は、F(3, 285) = 94.67, p , 0.001, hp 2 = 0.50

・「threat-awe」条件の参加者は、「awe」(M = 2.33, SD = 1.97)、「誇り」(M = 2.14, SD = 1.87)、「幸福」(M = 2.26, SD = 1.78)条件の参加者に比べて、有意に高いMEスコア(M = 6.82, SD = 2.14)を獲得した(ps , .001)

・感情条件を独立変数,評価次元を従属変数とした計画的対比を行い,脅迫観念と他の各感情との間の評価の違いを調べた:

・「threat-awe」条件の参加者は、「awe」条件の参加者と比較して、「自分自身のコントロール」、「他者のコントロール」、「確実性」が低いと報告し、経験はより楽しいものではないと報告、

・一方、threat-aweは、aweよりも高い状況制御と関連

・注意の評価についてthreat-awe体験とawe体験の間に差がないことを見出した

・threat-aweは、aweだけでなく幸福よりも広大でないと感じられた(ps , 0.001)

・尺度の信頼性が低く、尺度の項目を組み合わせても尺度の信頼性が向上しなかったため、尺度の1項目(「自分よりも偉大なものの存在を感じた」;Piffら、2015)で広大さの知覚を再分析:threat-aweはawe(M = 5.93, SD = 1.58)よりも有意に広大でない(M = 4.98, SD = 2.32)と知覚され、t(112.88) = 2.79, p = 0.006, 95% CI [.27, 1.62]となった

・「threat-awe」の条件の参加者は、より多くの恐怖を感じていた(ps , 0.001)

 

研究2

■研究2では、4つの異なる情動価値測定法を用いて、我々の理論を直接検証

・異なる感情操作を用いて、threat-awe、awe、恐怖、中立の感情状態を誘発する画像を用いた

・「ESG尺度」「感情共起指数」「混合感情尺度」「快感評価」

■参加者:284名の参加者(女性123名、Mage=40.90歳)

■デザイン:1因子4レベル(感情:threat-awe vs. awe vs. 恐怖 vs. 中立)の被験者間デザイン

・感情に関連する3つの画像を10秒間ずつ被験者に見せることで,割り当てられた感情を誘発

・感情誘導の効果を高めるために(Lerner et al.2004),参加者には,画像を見た後にその画像について考え,簡単に感想を書いてもらった

・ESG尺度

・画像を見ているときの感情体験の意識を評価する4つの項目:「対照的な感情/感情の混合/同時に異なる感情/同時に異なる感情の組み合わせを感じている」

・threat-aweと恐怖を区別する3つの重要な評価、「状況制御」「快感」「広大さ」を測定

■結果

・awe指数のスコアは、awe条件の参加者の方が、threat-awe条件の参加者よりも高い t(137) = 2.56, p = 0.012, d = 0.43

・threat-aweの価値観を検証するために、従属変数としての肯定性(x座標)と否定性(y座標)の値の平均値(コードは0=全くない、4=非常にある)について、感情条件の一変量ANOVA分析を2回行った

・肯定性軸では、F(3, 280) = 32.38, p , 0.001, hp 2 = 0.26で、awe条件の参加者(M = 3.23, SD = 0.92)は、threat-awe条件の参加者(M = 1. 99, SD = 1.32), t(121.13) = 6.42, p , 0.001, d = 1.09; 恐怖 (M = 1.21, SD = 1.35), t(127.23) = 10.49, p , 0.001, d = 1.75; 中立 (M = 2.18, SD = 1.29), t(128.36) = 5.58, p , 0.001, d = 0.94の各条件の参加者に比べて、有意にポジティブな気分を示した

threat-aweを感じる条件の参加者は、aweを感じる条件の参加者よりも有意にポジティブではないが、恐怖を条件の参加者よりも有意にポジティブであると報告(t(140)=3.47, p = 0.001, d = 0.58)

・否定性:threat-awe条件の参加者は,恐怖条件の参加者よりも有意にネガティブな感情を感じなかったと報告したものの,awe条件の参加者よりも有意にネガティブな感情を感じていた(t(137) = 5.32, p , 0.001, d = 0.91)

・Mixed Emotions Scale:threat-aweの条件の参加者(M = 4.41, SD = 1.53)は、aweの条件の参加者(M = 2.89, SD = 1.69)に比べて、有意に多くの両価性を感じると報告

・恐怖(M = 3.49, SD = 1.68), t(140) = 3.38, p = 0.001, d = 0.57; 中立(M = 2.98, SD = 1.69), t(139) = 5.24, p , 0.001, d = 0.89の条件に比べて、両価性を感じる

・threat-awe条件の参加者は、awe条件の参加者(M = 1.89, SD = 1.51)に比べて、aweと恐怖の両方を経験したと報告した(M = 4.20, SD = 2.18)

・予測通り、threat-aweを誘発する画像は、恐怖を誘発する画像よりも快感が高く、aweを誘発する画像よりも快感が低いと認識

・threat-aweは、状況制御において、aweよりも有意に高い(M = 7.59, SD = 1.71)と評価され、F(3, 280) = 21.79, p , 0.001, hp 2 = 0.19

・threat-aweはawe(M = 5.79, SD = 1.29)よりも広大でない(M = 5.07, SD = 1.47)と認識され、t(137) = 3. 05,p=0.003,d=0.52であったが,恐怖(M=4.11,SD=1.88)よりも広大

・自己矮小化尺度に関するANOVA、F(3, 280) = 18.19, p , 0.001, hp 2 = 0.16:中立条件の参加者は、awe条件の参加者よりも有意に小さいと感じていた

 

研究3

■参加者:196件の回答が得られた(女性83名、Mage=36.68歳)

■デザイン

・4つの条件(threat-awe・恐怖・中立)のいずれかに無作為に割り当てられ、エッセイ作成の課題を与えられた

・次に,個人的コントロール(a=0.81),他者コントロール(a=0.57),状況的コントロール,確実性(a=0.72),快感(a=0.97)の主要評価項目を9段階で評価

・「広大さ」「自己縮小」「適応の必要性」

■結果

・恐怖指数:F(3, 192) = 80.63, p , 0.001, hp 2 = 0.56で,threat-awe条件の参加者は,awe条件の参加者t(94) = 10.41, p , 0.001, d = 2.12,中立条件の参加者t(90.96) = 9.75, p , 0.001, d = 1.98よりも有意に高かったが,恐怖条件の参加者と同程度のスコアt(97) = 1.41, p = 0.162であった

・awe:F(3, 192) = 59.90, p , 0.001, hp 2 = 0.48となり、threat-awe条件の参加者は、恐怖条件の参加者よりも有意にaweを感じていた(t(83.20) = 7.54, p , 0.001, d = 1.50)

・threat-awe条件の参加者が感じたaweの平均強度は、awe条件の参加者のそれよりも低く、t(94) = 6.78, p , 0.001, d = 1.38

・aweとthreat-aweの比較では、個人的なコントロール感が低下し、確実性が低く、広大さの認識が低下し、快適さが低下し、状況的なコントロールが大きくなる

 

研究4

■研究3でthreat-aweがパーソナルコントロールの認知を恐怖と同等にしていた

▶パーソナルコントロールがリスク認知に影響を与えるという研究結果(Lerner & Keltner, 2001)

▶threat-aweはaweよりもリスクを取らない(恐怖に近い)と予測

■参加者:199名の参加者(女性116名、平均年齢38.08歳)

■デザイン:1因子4水準(感情:threat-awe・恐怖・中立)の被験者間デザイン

・いずれかの状態の想起記述課題に無作為に割り当てられた

・関連性がないと思われる「態度と認識」の研究では、一般的なリスク傾向の1項目の測定法を導入:、リスクを取ることへの全般的な意欲を11点満点で評価

・個人的コントロール(a = 0.83)、他者コントロール(a = 0.60)、状況的コントロール、確実性(a = 0.82)、広大さ(自己に対するもの;a = 0.95)、自己否定(a = 0.85)、収容の必要性(a = 0.86)を評価

■結果

・awe指数:threat-awe条件の参加者はawe条件の参加者よりもスコアが低かった、t(70.38) = 5. 36, p , .001, d = 1.08

・恐怖の条件の参加者、t(101) = 8.53, p , .001, d = 1.68, および中立の条件の参加者、t(95) = 7.68, p , .001, d = 1.56, 条件の参加者よりもスコアが高かった

・MEスコア:感情の主効果が有意:threat-awe条件の参加者は、aweおよび恐怖の知覚(M = 6.16, SD = 2.40)を、awe条件(M = 2.92, SD = 2.18)、恐怖条件(M = 2.44, SD = 2.13)および中立条件(M = 1.29, SD = 0.68)の参加者よりも有意に多く経験

・awe条件の参加者は、threat-awe条件の参加者よりもパーソナルコントロールが高いt(95) = 2.79, p = 0.006, d = 0.57

・恐怖条件の参加者よりもパーソナルコントロールが高いt(86.21) = 1.87, p = 0.064, d = 0.38

・リスクテイキング傾向:感情の主効果は、F(3, 195) = 3.38, p = 0.019, hp 2 = 0.05となり、有意な結果

・aweの条件の参加者(M = 7.33, SD = 2.29)は、threat-aweの条件の参加者(M = 5.69, SD = 3.02)よりもリスクを取る傾向が強かった

・恐怖(M = 5.76, SD = 3.28), t(94.91) = 2.83, p = 0.006, d = 0.56; 中立(M = 5.98, SD = 2.98), t(88.19) = 2.50, p = 0.014, d = 0.51の条件に比べて、リスクをとる傾向が強かった

・threat-awe、恐怖、中立の各条件の参加者の間では、リスク傾向に差はなかった

・個人的コントロールを介したawe(対threat-awe)のリスク摂取への媒介経路は正で有意

・感情とパーソナルコントロールを予測因子として加えた場合、awe(対threat-awe)リスク摂取の有意な直接経路は、有意ではなくなった

・個人的コントロールを介した有意な媒介は、threat-aweと中立状態を比較した場合に現れたが、threat-aweと恐怖を比較した場合には現れなかった

 

研究5

■リスクを取ることを目的としたインセンティブ付きの行動課題で評価

■参加者:172名の参加者(女性76名、平均年齢35.27歳)

■デザイン:1因子3水準(感情:threat-awe・恐怖)の被験者間デザイン

・関連する情動を喚起する作文課題を与えられた

・リスクテイクの行動指標としてBARTを提示しました(Lejuez et al.2002)

・参加者は,風船が破裂するか,あるいは,風船を膨らませるのをやめるかのどちらかになるまで,風船を膨らませる

・試行回数は10回で、1回のポンプで参加者は0.01ドルを得ることができた

・風船が破裂する確率はアルゴリズムによって1~64の間でランダムに設定

■結果

・恐怖指数:threat-awe条件の参加者は、awe条件の参加者よりもスコアが高く、t(100.59) = 2.96, p = 0.004, d = 0.55であったが、恐怖条件の参加者と同程度のスコアであった、t(112) = 0.46, p = 0.646, d = 0.08

・awe指数:threat-awe条件の参加者は,awe条件の参加者よりも低いスコアを示したが,恐怖条件の参加者よりも有意に高いスコア

・MEスコア:threat-awe条件の参加者は、aweと恐怖の混合した知覚(M = 5.78, SD = 1.71)を、awe条件(M = 4.79, SD = 2.61)、t(97.69) = 2.43, p = 0.017, d = 0.45、および恐怖条件(M = 4.19, SD = 2.42)、t(94.21) = 4.03, p , 0.001, d = 0.76の条件の参加者よりも有意に多く経験

・単一のリスクテイキング測定値を得た

・形質的リスク回避をコントロールし、感情条件を予測因子、リスクテイキング測定値を結果とする共分散分析:

・感情の有意な主効果が現れ、F(2, 168) = 3.18, p = 0.044, hp 2 = 0.04:awe条件(M = 0.26, SD = 0.95)の参加者は、恐怖条件(M = 0.14, SD = 1.00)の参加者よりも有意にリスクを取っていた。さらに、threat-aweの条件と恐怖の条件の間では、リスクを取ることに差はなかったt(112) = 0.13, p = 0.899

 

コメント

先輩に紹介されて読んだ論文。今まで、この感情はこういう区分けをします、と言われていたものを疑って実証しちゃうのすごい(もちろん、批判もたくさんあると思われる)。自分がこれまで言ってきた「aweはポジティブもネガティブも混ざっている感情です」っていうの言いにくくなってきちゃったな。

 

論文

Chaudhury, S. H., Garg, N., & Jiang, Z. (2021). The curious case of threat-awe: A theoretical and empirical reconceptualization. Emotion. Advance online publication. https://doi.org/10.1037/emo0000984