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努力のヒューリスティック(Kruger et al., Journal of Experimental Social Psychology, 2004)

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みなさんこんにちは!

じんぺーです、今日も論文を読んでいきます。

 

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努力のヒューリスティック(Kruger et al., Journal of Experimental Social Psychology, 2004)

結論から言うと、詩(実験1)、絵画(実験2)、鎧兜(実験3)を評価した被験者は、制作に時間と労力がかかったと思うほど、その作品の品質、価値、好感度を高く評価

 

背景

■努力が判断に影響を与えるという考え方は、社会心理学において古くからある重要なもの

・時間、肉体的労作、痛み、お金などの形で努力をすればするほど、その努力の成果を肯定的に評価することが実証

■努力が判断に影響を与える別のルートがあると考えている

・不協和理論や自己認識理論とは説明も応用も異なるもの

・人は努力を品質のヒューリスティックな判断材料として用いることを提案

・頻度と同様に、品質を判断することは難しい

・他の条件が同じであれば、アーティストが最大限の注意を払って描いた絵画は、あまり注意を払わずに描いた絵画よりも優れている傾向がある

・努力ヒューリスティックは、他のヒューリスティックと同様に、時としてエラーを引き起こす可能性がある

▶「人は努力を品質の手掛かりにしており、これが誤りにつながる」という仮説を検証することを目的

 

実験1

■参加者:学生144名

■現代詩人マイケル・ヴァン・ワレヘンの詩「オーダー」を読み、評価:参加者の半数には、Van Walleghenがこの詩を作曲するのに4時間かかったと伝え(低労力条件)、半数には18時間かかったと伝えた(高労力条件)

・その詩をどれだけ気に入ったかを、1(嫌い)、6(まあまあ)、11(大好き)の3段階で評価

・「全体的な質」を、1(ひどい)、6(まあまあ)、11(すばらしい)の3段階で評価

・参加者は、その詩が詩歌雑誌に売られた場合、いくらの値がつきそうか(米ドルで)を示した

■結果

・Walleghenが作曲に4時間かかったと考えた場合よりも,18時間かかったと考えた場合の方が,詩に対してより好意的な評価をしており,また,詩の価値がより高いと考えていた

 

実験2

■参加者:非専門家(女性21名、男性12名)、自称専門家(女性23名、男性10名)

■前の実験の結果を別の芸術分野(絵画)に拡張し、その分野の専門家を自称する人でも努力が品質のヒューリスティックとして使われるかどうかを調べる

・完全な参加者間デザインから混合モデルデザインに変更

・1枚の絵画ではなく2枚の絵画の質を評価し、アーティストが費やしたと思われる労力は、参加者間だけでなく、参加者内でも変化

・自分がどのくらい絵が好きか,絵の全体的な質をどのように評価するかを,それぞれ1〜11の尺度で示した

・その絵画がオークションに出品された場合、どのくらいの金額になるか(米ドル)を予想

・2つの絵を直接比較:参加者は,どちらの絵が好きか,どちらの絵が全体的に優れているか,仲間が見たらどちらの絵が全体的に優れていると思うか,どちらの絵がオークションでより高く売れるかを示した

■結果

・「好き」、「全体的な質」、「予想される仲間の評価」を平均して複合指標

・2(評価された絵画:「12の線」対「大きな抽象画」)×2(努力して描かれた絵画:「12の線」対「大きな抽象画」)×2(サンプル:自称専門家対初心者)の混合モデルANOVA

・予想された絵画と努力の間の二元的な相互作用

・12本の線を描くのに時間がかかると考えた場合には,「大きな抽象画」よりも12本の線を好んだが,「大きな抽象画」を描くのに時間がかかると考えた場合には,その逆の傾向が見られた

・知覚された努力が知覚された品質に及ぼす影響は、参加者がその分野の専門知識を自認しているかどうかとは無関係である

・平均して、参加者は「大きな抽象画」の方が「12本の線」よりも価値があると考えており、自称芸術の専門家は初心者よりも高い見積もりをする傾向

・労力の認識が参加者の好みに与える影響は、参加者が2つの絵画を直接比較したときにも明らかになった

 

実験3

■努力ヒューリスティックの使用における潜在的な調整要因である「曖昧さ」を検証する

・努力が品質のヒューリスティックであるならば、特に曖昧な刺激を判断する際に活用されるべき

・「鍛冶屋が110時間かけて完成させた」と伝え、半数の被験者には「15時間かけて完成させた」と伝えた

・画像の解像度を変えるだけで、鎧の曖昧さを操作

・16世紀のスペインのモリオンや、ブランズウィック公爵家の宮廷様式でエッチングされた甲冑など、解像度の異なる14枚の画像が順次表示

・9段階のセマンティック・ディファレンシャル・スケールが5つ用意されており、それぞれの終点には、「粗悪品/優良品」「安価/廉価品」「農奴向き/王様向き」「低品質/高品質」「無価値/無価値」

・研究の鍵となったのは、最後に提示された画像、ロンドン塔に保管されている16世紀後半の鉄製の胸当て

・無作為に低曖昧性条件に割り当てられた参加者は作品の鮮明な画像を見て、高曖昧性条件に割り当てられた参加者はよりぼやけた画像を見た

■参加者:大学生235名(女性133名、男性99名、身元不明3名)

■結果

・参加者の5つの評価を平均して複合指標とした(α=.96)

・2(対象物の曖昧さ:高/低)×2(努力:高/低)のANOVA

・2つの主効果が得られた:作品の鮮明な画像を見たときの方が,ぼやけた画像を見たときよりも高い評価、鍛冶屋が製作するのに110時間かかったと思ったときの方が,15時間かかったと思ったときよりも,作品に対する評価が高かった

・また、予測されていた相互作用が明らかになった:判断に対する努力の影響は、曖昧さが高い条件の方が低い条件よりも大きい

 

コメント

ところどころ興味深いエピソードを交えつつ、分かりやすくまとまっているPaperだと思った。努力は時間にだけ現れるものなのかな?とは思った。

 

論文

Kruger, J., Wirtz, D., Van Boven, L., & Altermatt, T. W. (2004). The effort heuristic. Journal of Experimental Social Psychology, 40(1), 91–98. https://doi.org/10.1016/S0022-1031(03)00065-9