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経験の中の芸術:実証的心理学は芸術的価値の評価に役立つか?(Reber, Leonardo, 2008)

f:id:jin428:20211002084300j:plainみなさんこんにちは!

じんぺーです今日も論文を読んでいきます。

 

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経験の中の芸術:実証的心理学は芸術的価値の評価に役立つか?(Reber, Leonardo, 2008)

ポイント

■芸術作品の評価における経験科学の役割については、2つの極端な見解

・一つは、芸術作品の芸術的価値を決めるためには、研究者は回答者(多くの場合、学部生)にその作品がどれだけ好きかを尋ねるだけでよいとする見解

・マーティンデールは、美術教育を受けていない実験参加者が、印象派や後期印象派の画家の絵画よりも、ブグロー(図1)やアルマ・タデマなどのアカデミックな画家の絵画を好むという結果を発表

・美術評論家の間でのアカデミック・アートの評判の悪さは,絵画自体の本質的な悪さではなく,名声の暗示に由来するものであると考えられると結論

・スティーブン・ピンカーは,現代美術の多くを,感覚に訴えかけるものではないという理由で,失格としている

・ジョージ・ディッキーに代表されるように,これまでの心理学研究では美学に関連する情報は得られていないと結論

・ダントーをはじめとする多くの芸術理論家によれば、これがすべてではなく、芸術的価値に関する現代の哲学的議論において、検証可能な美的嗜好はごくわずかな役割しか果たしていない

■期待される経験と実際の経験 

・合理的に広い定義は,知識のある観客が,認知,知覚,感情,想像のプロセスを含む経験の中で芸術作品を理解するというもの

・美的体験は、理性が介入しない即時的なものであるとされている

■経験を評価

・体験を報告する際の需要特性[14]や自己呈示[15]という方法論的な問題が生じる

・経験を報告する方法は3つに分けることができる

・第一に、美術理論から予測される体験を自発的に行い、美術や美術史に関する予備知識の影響を受けていることに気づかなかった

・第二に、受信者は予測された体験をすることができますが、それは、他の体験ではなく、この体験をすることになっていることを知っているからに他ならない

・第三に、自己呈示の懸念は、受け手が実際には経験していないのに、その経験を持っていると主張するため、現実的な問題

・受け手は芸術の権威が言うようなことを実際には感じていないが、下層階級の人々と区別するためにある種の経験を持っていると主張しているという考えに基づく

・その人の知識に対応した回答が得られても,実際の経験には対応していない可能性

■脳イメージング

・研究者は脳イメージング技術を用いて,音楽が感情的な絵に与える影響を評価した:写真と一緒に音楽を再生すると,音楽なしで写真を表示した場合に比べて,評価と感情処理を示す脳活動の両方が顕著に増加することが確認

・画像処理技術を用いて,被験者がパターンの美的判断と対称性判断を行ったときの脳活動を評価:美的判断をつかさどる脳領域は,人や行動に対する社会的・道徳的な評価判断をつかさどる脳領域と部分的に重なっていた

■アーティストの意図が間違っていた場合、つまり受け手の体験がその意図と一致しなかった場合

・バーゼリッツ「私は常に、自分の絵画は内容に関する意味から独立しており、そこから生じる連想からも独立していると考えている」

・いわゆるサッチャー錯視に見られるように、反転した顔には意味があるのである

▶心理学的な研究によると、バーゼリッツの絵からは、彼が伝えたいと思っているような体験は得られないということ

■心理学は基準が与えられれば芸術的価値を判断することができますが、その基準自体が良いものか悪いものかは判断できない

■芸術的価値と経験的心理学

・そのような研究で暗黙のうちに用いられていた基準は、ほとんどが「好き」や「美しい」だった

・美的処理に関連する脳領域の発見に関心があり、芸術的価値の評価との関連性は主張していなかった

・最近になってようやく,美しさや好み以外の次元,たとえば作品が引き起こす感情などを考慮に入れた,より包括的な芸術心理学の理論が発表

 

コメント

自己顕示のところおもしろかった。

 

論文

Rolf Reber; Art in Its Experience: Can Empirical Psychology Help Assess Artistic Value?. Leonardo 2008; 41 (4): 367–372. doi: https://doi.org/10.1162/leon.2008.41.4.367