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アート鑑賞はどのようにして創造性を高めるのか?(Ishiguro & Okada, Journal of Creative Behaviour, 2021)

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みなさんこんにちは!

じんぺーです、今日も論文を読んでいきます。

 

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アート鑑賞はどのようにして創造性を高めるのか?(Ishiguro & Okada, Journal of Creative Behaviour, 2021)

Review

■美学と創造性は,鑑賞や制作などの芸術活動のメカニズムを理解するために不可欠な概念

・これらの活動は、ときに結びつく

・2つの活動の関係を理解するために新たな研究を始める必要性を主張(Tinio, 2013)

・Broekkamp, Janssen, and Bergh (2009) は、文学作品を読むこととクリエイティブライティングの間に正の関係があることを示した

■アート鑑賞は創造性を刺激する

・優れたアーティストと同様に、アートライクな人々もそのような経験をしていることが明らかになってきた

・ソーシャルメディア上でのアートの鑑賞・発表は、大規模な共同制作を促すコミュニケーションのチャンネルを形成(Hamasaki, Takeda, & Nishimura, 2008)

・学習者は他人の作品を見ることで刺激を受け,写真やダンスなどのさまざまな領域で創造性を発揮(例えば,Ishiguro & Okada, 2018a; Nakano, Shimizu, & Okada, 2017; Parker, 2008; Pavlou, 2013; Wellman, 2012など)

・興味深いことに、結果として生じる創造性はドローイングやペインティングに限定されるものではなく、鑑賞者はそのインスピレーションを音楽、ライティング、ダンスなど他の芸術領域に応用することもある

■ひらめきと創造性に関する実証的研究

・ThrashとElliot(2003)は個人の特性的なひらめきの心理尺度を,ひらめき尺度(IS)と名付けて開発

・「ひらめきの頻度」と「ひらめきの強さ」の2つの下位尺度

・自己報告尺度が潜在的に主観的であるにもかかわらず、研究者はインスピレーションに関する実証研究を開始することができた

・ISを適用すると、ひらめき感を経験する傾向の個人差は、経験への開放性や内発的動機など、創造性に関連する人格特性と正の相関があることが明らかになった(An & Youn, 2018; Milyavskaya, Ianakieva, Foxen-Craft, Colantuni, & Koestner, 2012; Thrash & Elliot, 2003)

・石黒・岡田(2016)は、IS(Thrash & Elliot, 2003)の日本語版を作成し、美術を専攻に選んだ学部生とそうでない学部生を対象に調査を行った:美術を専攻している学生は、そうでない学生に比べて、より頻繁に、より集中的にインスピレーションを経験している

・Thrash, Maruskin, Cassidy, Fryer, and Ryan (2010)は、大学生を対象に、創作課題を含む実験を行った:ひらめきの感情が大きければ大きいほど、作成された文章の創造性が高い

・An and Youn(2018)が、アートワークからのインスピレーションが、他の創造領域における参加者の創造を促進することを示した

・参加者はアート作品(詩や絵画など)を鑑賞し、ISに反応し、ビジネスの文脈に関連した創造的なアイデア(コンピュータのキーボードをデザインする、パスタのブランドを命名する、リサイクルの方法を考えるなど)を生み出すことを求められた:アート鑑賞は、アイデアの発生頻度(流暢性)とアイデアの独創性を促進する

■インスピレーション

・社会的な事件や自然現象、さらには夢や記憶、懐かしさ、超自然的な影響などがインスピレーションのきっかけとなる(Stephan, Sedikides, Wildschut, Cheung, Routledge, & Arndt, 2015; Weisberg, 2006)

・芸術作品を鑑賞しているときに、何かに感動して、その感動体験を作品や自分の思考以外の超自然的な原因に帰する人がいる(Oleynick et al.2014; Thrash & Elliot, 2004のレビューを参照)

・プロダクトデザインや美術に関する心理学研究では、知覚的特徴や概念的特徴が個人の創造性に与える影響が検討されてきた

・創造性の研究者は,表面は異なるが構造的特徴が同じである例に基づく類推が,創造的領域におけるイノベーションを誘発するという概念的飛躍仮説を提唱

■「触発される」「触発する」プロセス

・事前知識から遠い抽象的な絵、または事前知識から近いリアルな絵を見るかコピーするという介入の前後で、独創的で創造的な絵を描かせた:抽象的な作品(遠い例)をコピーしたり見たりした参加者は,他の参加者よりも独創的で創造的な作品を作った

・深いインタラクションには、鑑賞者が作品の解釈と自分の知識や視点への反省を比較しようとするデュアルフォーカスが含まれる(二重焦点はもともと社会心理学の概念):インスピレーションのプロセスには、鑑賞者が自分と他人のアート制作の両方に注意を払うという二重の焦点

・4枚の絵画(古典的なもの2枚、抽象的なもの2枚)を鑑賞し、アート鑑賞中に、絵画を評価したかどうか、および/または、絵画と自分のアートメイキングを比較したかどうかを測定するために、質問票に回答:鑑賞中に他者の作品を自分の作品と比較した参加者は、より強い創作意欲を持つ

・アート鑑賞の前後に何かを作る機会が与えられると、鑑賞者は二重焦点を経験しやすい(Chan et al., 2011; Fu et al., 2013; Okada & Ishibashi, 2017の実験など)

・鑑賞者がアート鑑賞後に自分の創造的なタスクを実行しなければならない場合(An & Youn, 2018の実験のように)、鑑賞者はアート作品の解釈も思い出して二重の焦点を体験

・Ishiguro and Okada(2018a,b)は、二重焦点の文脈で自分のアートメイキングを評価する際に、高い自己効力感が重要であることを強調:人は創造性への期待や目標を持ち、その創造性への自己効力感が高い場合に、優れた芸術作品を鑑賞することでインスピレーションを得ることができると考えられる

・自己効力感が高いと、「自分は他人の作品の価値に気づくことができる」という信念を持つことができ、自分の創造的な作業に対するモチベーションを高める

 

コメント

デュアルフォーカスおもしろいし、シンプルで分かりやすい。自分の研究でインスピレーションって言葉使ったことないけど、謎にAI翻訳だと「感動」って訳されるから少し勉強してみてもいいかもしれない。

 

論文

Ishiguro, C. and Okada, T. (2021), How Does Art Viewing Inspires Creativity?. J Creat Behav, 55: 489-500. https://doi.org/10.1002/jocb.469